社会学用語集パート3 さ行

<再生産>ブルデュー行為、社会関係、地位、階級・階層関係などが先行条件に規定されつつ同型的に形成される過程。類似の社会的地位が親から子へと伝達される世代的再生産、社会構造の全体的趨勢がある時間の経過を通して近似性を示す構造的再生産を区別できる。
<最適社会>個人的エゴの存在を認めたうえで、これを最も合理的な方法で調整するシステムをもつ、理念的に構想されたユートピア社会。
<サイバネティック・ハイアラーキー>パーソンズ多くの情報と少ないエネルギーをもつシステムは、エネルギーは多いが情報の少ないシステムのなかで起こるものを制御できるという考え。L→I→G→A
<サブカルチャー>ある文化の内部に形成された文化。上位の文化を共有し、同時に独自性をもつ。サブカルチャーは上位文化の部分文化であるが、その関係は協調的な場合もあれば対抗的である場合もあり、後者の場合を<カウンター・カルチャー>という。
<サクセッション>遷移、継承、代置と訳される侵入の過程が完全に終了した段階。居住者や施設が完全に入れ替わった場合など。
<サバービア>大都市周辺の郊外型コミュニティーの総称。サバーバニズムを表徴する。
<サピア=ウォーフ仮説>言語相対主義の仮説。個人の世界認識や思想様式は、属している共同体のもつ言語によって大きく影響されることが主張される。様々な言語によって把握される「現実」は必ずしも同一ではないことが主張され、現実の相対性が説かれる。
<残基>パレート人は言語・論理能力をもつため、行為を合理化する言説・主張(派生体)と、行為の底に半恒久的な動因(残基)を区別すべきだとする。社会的均衡系の考察に当たって残基がより強い力とされ、ほぼ感情や本能に近いものと考えられる。
<産業革命>マニュファクチャー時代から機械制工業の時代へと機構を完成させ、資本主義的生産をその技術的基盤においてまで完成させた、経済上の生産上の変革。1770年代から1830年代のイギリスにおいて典型的に見られた。オートメーションによる技術革命を第二次産業革命、コンピュータによる情報革命を第三次産業革命と規定する場合もある。
<産業社会>社会構造が総体的に機械技術システムによって編成され、規定されている社会。大量生産、大量消費、マスコミ、発達した交通・通信・情報システムを特徴とする。ホワイトカラー労働者増加し、管理化・情報化の傾向が強まり、階級構成も多様化と同時に平準化する傾向が見られる。
<産業社会論>工業化の進展とそれに伴う経済成長による、社会構造の変化や生活や意識の変化を論じる。現代社会を批判的に捉えるのではなく、工業化の進展が階級構造や社会構造をどのように変化するかを問題にし、現代社会を肯定的に評価する。ダニエル・ベル『脱工業化社会の到来』は、社会が脱イデオロギー化した社会構造へと収斂する方向にあるとする。
<シヴィリアン・コントロール>軍事に関する最高決定権が文民の政治的統制のもとにあること。
<ジェンダー>社会的・文化的に形成される男らしさ、女らしさジェンダー概念を重視することにより、政治・経済・教育・文化・家族など、社会生活のあらゆる面で女性が男性とは異なる位置を占め、異なる役割を与えられていることの意味が問われることになった。ジェンダー概念は、歴史的に主に女性に割り当てられ、社会的には低い地位しか与えられてこなかった。
<ジェンダー・アイデンティティー>自分が男であるか女であるか、男らしいか女らしいかについての自己規定。社会化の過程を通じて形成される自己認識であり、社会的に規定されるジェンダー役割と関連した意識であることが重視される。
<自我>フロイト、ミードフロイトは、自我はパーソナリティを構成する3つの心的機能(エス・自我・超自我)のうちの一つで、本能や衝動を表すイドから発して外界の影響によって分化し、理性や分別の役割を演ずるものとした。ミードは、社会的相互作用のなかに自我を位置づけ、自我は他者の態度や期待を取得することで社会的に形成され、Iとmeの二面をもつとした。
<視覚的人間>バラージュ映画の発明と発達は、人の体験様式を変え、映画の基本原理を理解しカメラの眼で見ることのできる能力をもつ視覚的人間の誕生を促し、印刷以前の時代の視覚的人間の時代を生み出した。
<自己言及性>ルーマン文が自分自身を言及対象とすること。自己言及的な言明はパラドックスを含み、真と偽の反転の果てしない循環に巻き込まれるが、70年代半ば頃から創造的なものとして見直される。ルーマンのシステム論へのオートポイエーシス・モデルの導入や、自己組織化論、「社会学の社会学」に見られる。
<自己実現>ロジャース、マズロー自己の能力や可能性を十分に生かし実現化していくこと。
<自己成就的予言>マートン社会的行為の状況に対する虚像の規定あるいは信念、思い込み、決めつけが、それにもとづいて行われた行為を通じて現実のものと化してしまう。その場合の初期の信念、思い込み、決めつけ。
<自己本位的自殺>デュルケーム社会の統合が弱まって過度に個人化が進み、個人が孤立化するときに生じやすい自殺の類型。
<自然的態度>シェッツ『社会的世界の意味構成』時間・空間的現実が眼前に与えられているとおりに存在していると素朴に確信し、世界が存在していると暗黙のうちに確信している非反省的態度。
<持続可能な開発>開発行為と環境保全の両立可能性を追求する政策概念。再生可能な資源の消費はその資源が再生される範囲で行う。再生不可能な資源(化石燃料)の消費は更新可能な資源(太陽熱)への代替ができる範囲内で行う。廃熱・廃物の放出は水サイクルと再生利用が可能な範囲で行う。
<時代診断学>マンハイム社会学は現代社会の構造の全面的な総合分析を行い、一般法則と個別的事態とを結ぶ媒介の原理を探索し、そこから具体的な処方箋を提出すべきだとする。
<実質合理性>ヴェーバー形式合理性の対概念。貨幣などによって計算可能な行為は形式合理性をもつが、行為の成果が、ある価値尺度(倫理性・功利性・社会主義的・平等主義的要請など)に照らして、「価値がある」「目的にかなう」と判断される場合。
<私的領域と公的領域>正負や地方自治体が公権力にもとづいて行う活動が公共領域、私人として個人や民間企業が行う活動が私的領域。近代社会が誕生し、個人の尊厳が重視されルとともに、社会のなかの私的領域と公的領域の関係が社会科学の課題となった。フェミニズムは、家事労働が私的領域に閉じ込められたことを告発。
<シニシズム>既存の価値や規範の体系に懐疑的・嘲笑的な態度をとり、私的世界に閉じこもる傾向。
<支配的イデオロギー>ブルデュー正当性の表象を通して、ある意味体系を多数の社会成員に受け入れさせることを可能にするイデオロギー。ブルデューは、教育におけて、ある意味体系を「真理性」「普遍妥当性」の表象とともに正統として課する作用にその機能のあり方を見ている。
<資本主義>生産手段を所有する資本家は、自由な市場メカニズムのもとで商品としての労働力を購入し、これを生産手段と結合することによって、機械制大工業の形態をとった商品生産を行い、もっぱら余剰価値の創出をめざす社会的生産の仕組みまたは経済体制をいう。余剰価値の創出による資本の自己増殖過程は、生産の社会的性格と所有の私的性格、市場における無政府的競争と私的資本の専制下にある経営内分業の計画的編成などの矛盾を内包している。
<資本主義の精神>ヴェーバー近代的・合理的資本主義の経済倫理は、禁欲的にひたすら利潤を追求する行為が人の義務、倫理的な善であるとみなし、営利のための生活の合理化を人々に要請する。これは、欲求充足のためではなく、価値実現のために働く。
<シミュラークル>ボードリヤール本物−偽者、オリジナル−コピー、実在−表象、指示対象−記号の区別が消え、コピーやイメージや記号はオリジナルや実在から解放され、前者の項の交換・組み合わせのシミュレーションが展開した現代の記号世界。
<市民>中世の西欧における都市共同体の、これに自律的・自主的に参与できる身分特権をもった人々。ヴェーバーによれば、都市共同体は自身の法や裁判所、一定の自治的政府をもっていた。
<市民的公共性>ハーバマス市民社会の生成とともに台頭し、「公衆」として成立した市民がつくり出す理想的な社会関係。近代初期の都市のサロンやクラブで生み出された公共性が、資本主義の発展により変質したことを批判し、生活世界と融合した市民的公共性の復権をめざしている。
<社会学的想像力>ミルズ私的な問題と公的な問題、個人的な生活と社会的・歴史的構造的とを関連づける能力。誇大理論と経験主義を批判的に乗り越えていくため、古典的社会学からこの能力を受け継ぐことを主張。
<社会化の形式>ジンメル社会を成り立たせる<心的相互作用>は、宗教的関心や経済的目的といった動機づけと、これを現実化する相互作用の様式<社会化の形式>から成る。この形式と内容を区別し、これが社会学の研究対象だとした。
<社会技術>マンハイム『変革期における人間と社会』社会関係の形成を目標とする社会学的実践。社会技術による計画化社会は自由を擁護するとした。組織・宣伝・社会統制の技術を指していたが、今日では組織化の技術、広く社会設計の技術をいう。
<社会計画>広義には、経済・社会・文化の諸政策を統合し、各政策の志向すべき将来社会の全体像を示す包括的計画。狭義には、計画経済と並列する、生活の福祉向上にそった社会側面の計画。マンハイムが、ナチスでも共産主義でもない<第三の道>としての「自由のための計画」というかたちで問題にした。
<社会資本>ハーシュマン、宮本憲一
<社会診断>マンハイム『現代の診断』医学の診断の概念を社会問題・社会病理現象の分析のために借用。(時代診断学)
<社会的学習>人の学習が、一定の社会状況のなかで、他者との社会関係を通して生起することを強調する概念。他者の行動の模倣、パーソナリティ発達、社会化と密接な関連をもつ。
<社会的自我>欲求の主体としての自我は、社会化されることによって、社会規範を良心あるいは理想として内面化し、その監視のもとに個人的自我を社会的に方向づけて行動する。
<社会的促進>オールポート他人と一緒に仕事をしたり、他人の目の前で作業をしたりすることで、一人の場合よりも作業量が増加すること。外面的な反応(書いたり作ったりすること)では社会的促進が見られるが、内面的な反応(考えたり感じたりすること)では、社会的抑圧が見られ、能率が低下する。
<社会的知覚>知覚対象の物理的性格だけでなく、知覚する側の人の社会的特性や、その場の社会的・集団的条件などの影響を受けて成立する知覚。同じものを見ても、見る人の社会的地位、経済的状態、対象に対する既存の態度、一緒にいる人の特性によって知覚は異なる。
<社会的ディレンマ>複数の行為主体が自己の利益を求めて行動すると、各行為主体に望ましくない集積結果が生じるメカニズム。環境問題をはじめ現代社会における重要な諸問題に底在していて、社会問題の解決のキー概念であるとともに、秩序問題をはじめとするミクロ=マクロ問題を考察する手段として注目されている。
<社会的動物>アリストテレス『政治学』社会的=ポリス的存在として人を規定。
<社会的費用>私的企業の経済活動の結果、水や大気の汚染など第三者あるいは一般大衆が受ける直接・間接の損失。外部不経済として、従来それは社会に転化されたが、PPP(汚染原因者負担の原則)により、私的生産者が責任をもつようになってきている。
<社会的分業>デュルケームは分業が能率や経済効率を増進させるという側面よりも、道徳的連帯を生み出す事実に注目し、体系的に明らかにした。この発達が社会に機械的連帯から有機的連帯への変化を伴わせるとした。マルクスやレーニンは、労働の社会的分業、社会的総労働の分配として社会的分業を論じる。
<社会発展段階説>原子共同体-奴隷制-封建制-資本主義-社会主義(マルクス)神学(軍事)-形而上学(法律)-実証主義(産業)(コント)軍事型-産業型(スペンサー)機械的連帯-有機的連帯(デュルケーム)ゲマンシャフト-ゲゼルシャフト(テンニース)伝統主義-合理主義(ヴェーバー)プレモダン-モダン-ポストモダン(ポストモダン論)
<シャドウ・ワーク>イリイチ市場経済が機能するために必要とされるが、その背後や外部にあって、フォーマルな経済市場に登場しない労働。対価を支払われず、市場経済を下支えする。家事、通勤、試験勉強など。
<習慣の束>デューイ、ジェームス人の行動は習慣によるものであって、本能や理性によるものでないとして、人格を統一体として把握。パーソナリティの文化的条件づけを強調。
<従業員社会>ドラッカー社会成員が、雇用従業者として、それぞれの属する企業組織における地位にもとづいて成立させている社会。
<集合意識>デュルケーム個人意識に対して外在的でかつ個人意識を拘束するところの、成員に共通な信念と感情の総体。
<自由主義>個人の自由を要求、またはそれを前提とする思想。近代社会の形成過程で信仰の自由、経済的自由、政治的自由が要求され、自由自明性の諸主張がそれに加わる。
<修正拡大家族>リトウォクひとつながりの核家族が対等に結びついて、互いに重要な継続的援助を行う。職業的・地位的移動が一般的な近代産業社会においては孤立的核家族が機能的だとするパーソンズへの批判として提起。
<修正資本主義>資本主義の体制的矛盾を部分的修正によって克服し、体制の存続を図ろうとする思想・理論あるいは制度。政治の経済への大幅な関与と、経済と社会の計画化が中心。具体的には、ピグーやケインズの経済学、バーナムの経営者革命、人民資本主義、混合経済論など。
<集団本位的自殺>デュルケーム集団規範への服従または集合的価値への強い一体感の結果として生じる自殺の型。
<自由のための計画>マンハイム自由放任から計画化の社会への移行のなかで、独裁性と画一化を避け、民主的に統制された政府によって進められる計画として提起。個人の選択と自由の余地をもちながら、同時に大衆社会のもつ危険を防止するために社会統制の整合化と民主化を図り、社会の漸進的な変革をめざす計画をいう。
<重要な他者>社会化の過程で、大きな影響をもつ人物。諸個人は重要な他者の体現する役割・態度と同一化するなかで制度的規範を学習する。具体的・特殊化された文脈のもとで個人と文化を媒介する。
<宿命的自殺>デュルケーム欲求に過度の抑圧が加えられ、充足が厳しく阻まれる結果、強い閉塞感から人々の図る自殺。アノミー的自殺の亜種。
<準拠集団>マートン、ターナー、シプタニ人が自分自身を関連づけることによって、自己の態度や判断の形成と変容に影響を受ける集団。過去に所属した集団、将来所属したい集団、非所属集団も準拠集団になることがある。マートンによって体系的に理論化。シプタニ、ターナーは、非所属集団の準拠集団化という事実にもとづいて、人々の主体的準拠集団選択、集団規範の主体的内面化のメカニズムを明らかにした。
<昇華>フロイト性的欲求や攻撃欲求などの充足が阻止された時、芸術・宗教など社会的・適応的な活動によって欲求を充たす健康的な防御機制。
<使用価値>商品は使用価値と交換価値の統一されたものであり、使用価値そのものとは、人の欲望を充足させる、モノのもっている属性・有用性。人の作り出す労働生産物は、まず使用価値からなる対照的活動の生産力表現である。資本主義下にあっては、労働生産物の歴史貫通的な性格としての使用価値は、特殊な歴史的・社会的な性格をもつ交換価値ともなっている。
<象徴交換>ボードリヤール両義的で不等価的な象徴による交換。モースの贈与論やバタイユの供犠論に示唆され、無目的的で集団的な消尽・犠牲・破壊を含む交換、とくに生と死の象徴交換を提示。
<象徴体系>あいさつ・しきたりから聖像・国歌・国旗まで、これらはすべて象徴としての個別的な意味作用をするが、それらの意味の連関が体系化されたもの。
<象徴的資本>ブルデュー文化資本と同義だが、物的資本と区別するために使われる。態度・物腰、話し方、ものの見方などのハビトゥスに関連して使われる。
<象徴的暴力>ブルデュー、パスロン教育の関係は教師=生徒、親=子などの上下関係に支えられながら、「真理」を教授するといった象徴的に正統化されたかたちをとり、この力関係を覆い隠すことで成り立っている。
<消費社会>ボードリヤール現代高度産業社会は、生産よりも消費、モノの機能性よりもコード化された差異が優位となっている。消費は、消費者個人の自律的で自発的な享受というモノの「効用」のレヴェルから、差異化されたモノ=記号のシステムへの個々の消費行動の強制的な組込みという「意味作用」のレヴェルへ転位している。
<消費者行動>財とサーヴィスを購入し、それを消費ないしは使用することに関連した人の行動。人はそれによって独自の生活を設計し、実行する。消費者の購買力が増大し、基礎的欲求充足を超えた個人的好みや創造性を反映できるようになると、個人的選好による消費行動=ライフスタイルが広がる。
<消費文化>消費を通じて顕在化するライフスタイルが人々の社会的な違いを識別する主要な基準となる社会的生活様式。マス・メディアの提供する情報が、たえず新しい生活イメージを形成し、人々がそれを適応すべき環境だと捉え続けることによって、消費文化は変化し続ける。
<商品の物神性>マルクス宗教世界において神が人を支配するように、商品は一度作り出されると、独立した存在のように見えてくる。商品という形態は、人の労働がもつ社会的性格、生産者たちの社会的関係をモノ・対象として人々の目に映し出す。人の生産関係に他ならない商品と商品の価値関係が、単なるモノ同士の関係という幻視的な姿で現れてくる。
<情報>事柄の可能性に関して選択的指定をもたらす「知らせ」のこと。この「知らせ」が情報になりうるかは、その「事柄」から決められる。そして、「記号=意味」化された情報、記号や意味として捉えられなければいけないが、情報科学では情報をもっと広く、自然界に遍在する「物質・エネルギーの時間的・空間的パターン」としている。
<職業的社会化>職業についての志向・行動様式・価値・規範を内面化する学習過程。社会にとっては職業の機能維持の面から、個人にとっては自己実現の面からそれぞれ重要である。
<心的相互作用>ジンメル社会は相互作用によって成立し、その相互作用の示す様式を<社会化の形式>とした。これを経済・宗教・文化などの<社会化の内容>と区別し研究することによって、特殊専門科学としての社会学が樹立される。
<信念倫理>ヴェーバー価値合理的行為の基底にある倫理。結果の成否よりも倫理的行為そのものに価値をおく、行為者の信念の純粋さを重んじる信念本位の倫理。
<シンボル行動>人は世界に直接に働きかけているのではなく、言語や記号などのシンボルを通して把握された世界の像に対して働きかけている。
<シンボル操作>シンボルを特定の意味文脈に位置づける営み。その営みによって人々の意見・態度・行動をコントロールしようとする意図的行為であり、情報の操作・コミュニケーションの操作と同義。旗、ユニフォームなどの物的象徴、行進・デモなどの動的象徴がある。
<神話思考>レヴィ=ストロース矛盾を解決するための論理的モデルの提供という本質的に認知的な機能を果たす。その論理は科学的思考と同じく厳密であり、ただそれが働きかける対象や素材において科学と異なる。
<ステレオタイプ>リップマン特定の社会集団や社会の構成員のあいだで広範に受容される固定的・画一的な観念やイメージ。一般に、観念内容が極度に単純化されている反面、強力な情緒的感情が充填されているため、その概念内容と対立する事実的根拠を冷静に受け入れることに抵抗を示しがちである。
<生活世界>フッサール、シェッツ人間生活の事実的・可能的経験世界。現象学的社会学では個人が日常において出会う人・モノ・出来事の意味のつながりの経験世界の総体。自我を座標軸・準拠点として多方向に広がる遠近さまざまの多元的な相互主義的世界(意味領域)をさす。
<生活世界の植民地化>ハーバマス私的領域におけるインフォーマルなコミュニケーションを通しての了解や合意に方向づけられていたコンフリクト調整の手続が、法や貨幣を介して調整を図る成果志向的な官僚制や裁判所のコントロールに委ねられる傾向が強まり、共同生活のコミュニティブな構造が危機にさらされている状況。
<生殖家族>夫婦家族が含む二つの世代のうち親世代から見た家族。子を生み、育てて社会化していく機能、生殖・教育機能を担っている。
<生成文法>チョムスキーある言語を適格な文(記号連鎖)の集合と考え、この集合を無限の生成元と有限な生成規則(文法)の集合から生成させようとするアイデア。
<生態系>一定の地域における動物が、気象・土壌・地形などの環境に相互に依存しながら適応している場合の、その相互依存の体系。
<成長の限界>ローマ・クラブ、メドウズ人口の爆発的増加と資源の大量消費による経済成長が続いた場合、地球の資源や環境の限界を超えて破壊的結果をもたらす。
<正当性信念>ヴェーバー政治権力の保持と支配を支え、服従の自発性を調整し、それを正当なものと認める信念。その理念型は、伝統的・カリスマ的・依法的正当性の3つがある。
<正当性の危機>オッフェ、ハーバマス後期資本主義の政治システムが直面させられている問題。国歌の介入政策の拡大はその正当性への欲求を高めるが、資本主義の発達は体制を維持していくのに不可欠な文化的要因(私生活志向、キャリア志向、業績志向など)を掘り崩し、意志決定への参加志向や市民運動大量消費社会の見直しなど、体制に即した報酬では充たすことのできない国民からの欲求に直面させられている。
<制度から友愛へ>バージェス、ロック家族結合の性格がモーレス・世論・法などによって決定される<制度家族>から、夫婦と親子間の相互の愛情と同意を基礎にして<友愛家族>へと歴史的に変化している。
<聖と俗>デュルケーム、パーソンズ聖なる事物は、畏敬の対象として、各種のタブーによって日常的な俗なる世界から注意深く隔離され保護されている。聖は、個人を超えた社会の象徴であり、社会的統合の原理である。パーソンズは、聖と俗の対比は<道徳的義務>と<功利性>の区別に帰着するとした。
<世界システム>ウォーラスティン、モデルスキウォーラスティンらのネオマルキシズムの潮流では、単一の分業で結ばれ、複数の国家を包含する世界帝国や世界経済。モデルスキらのネオリベラリズムの潮流では、国家間の関係からなる世界秩序。
<世界資本主義>ウォーラスティン地球上に広がりつくした資本主義の世界体制。第二次大戦後、従属理論が中心=周辺という世界資本主義の構造を問題にする。世界システム論は、19世紀末から20世紀はじめ以降に単一の資本主義世界経済が地球規模で成立したとしている。
<責任倫理>ヴェーバー特定の価値理念の規範性に自分の行為がかなっているという意識にのみ満足せず、つねに特定価値の実現のために、その現実的諸前提を冷徹に観察し、結果に対する責任をもって一種の倫理的命令とみなす。
<世間>身内、仲間、他人などの対人関係のカテゴリーのひとつだが、時間的にも空間的にも変動して、ウチとソトの境界に位置する。ベネディクトの<恥の文化>の基準の一つであり、行為の準拠枠である。
<世代状態>マンハイム世代として統一される可能性を含んだ人々が、ある社会に存在している状態。年代的同一性をこえた歴史的社会性をもつが、社会的統一性の点では潜在的なものである。
<説得コミュニケーション>送り手の意図する方向に受け手の意見・態度・行動を変容しようとする、言語的コミュニケーションなど。
<ゼロ=サムゲーム>n人の行為者のとる方略のすべての組み合わせにおいて、各人の利益の総和が0となるもの。
<潜在的機能>マートン特定の単位の参与者によって意図されず、認知されないが、その単位の調整ないし適応に寄与する客観的諸結果。
<先進資本主義>特徴は、組織化された官僚制度をもつ大企業複合体の発達、それに伴う管理的・専門的労働者の増大による新中間層の拡大、第三次産業の発達、国家の経済介入。
<選択的接触>受け手が既存の信念や態度に合致するコミュニケーションに接触し、合致ないしコミュニケーションを回避しようとする選択規制。
<宣伝>人々の態度や行動に影響を与え、一定の方向に操作しようとする意図的・組織的な企て。宣伝者はふつう真の宣伝意図を隠蔽し、自己に都合のよい情報や主張を一方的に提示することによって、または人々の情緒的共鳴を得やすい象徴やスローガンを巧みに操ることによって大衆を操作する。
<先有傾向>行動に先立っていだかれている人々の知識・関心・意見・態度などの総称。これに合ったコミュニケーション内容を選んで接触し、これに合わせて物事を理解するというかたちで、人々の情報処理のための準拠枠として働き、マスコミの効果に大きな影響を与える。文化、とくに身近な小集団の価値や規範に強く規定され、支持される。
<戦略的相互行為>ゴッフマンゲームのように自己と他者がそれぞれの意図とその相手の打つ「手」を予想しながら、何らかの「手」を打ちあう交換過程。
<相関主義>マンハイム知識社会学の主要概念の一つ。一定の立場からする、展望的なものとしての認識の部分性を、相互に関連づけ総合的に評価することにより、その時代に最も妥当な認識に到達可能だとする。
<相対的貧困>経済の繁栄にともない、表面的には生活水準が向上し平均化することから、貧困は消滅したように見える。しかし、インフレや増税により、実質賃金の伸びは抑えられ、社会保険料や公共料金などの負担が増し、消費意欲をかき立てられ共働きや副業を余儀なくされるなどの新しいかたちでの貧困。
<贈与>モース、レヴィ=ストロース、ポランニーモースは、贈与を贈る義務、受ける義務、返す義務をともなう交換関係のなかに位置づけ、全体的社会事実として行動の全体連関のなかで捉えた。レヴィ=ストロースは、女性の交換体系として親族構造を捉えた。ポランニーは交換関係を近代の市場的合理主義から解放し、社会の再生産という実体的で多義的な文脈において捉える経済人類学を展開。
<疎外>ヘーゲル、フォイエルバッハ、マルクス人の社会活動による産物、観念や生産物がそれ自身生命を与えられ、独自の力をもち、人を支配する疎遠な力となって現れることをいう。人の活動が、当の人には属さない、外的で強制的なものとして現れ、人間的本質は人の外に外在することになる。マルクスは、疎外を私的所有と結びつけ、疎外された労働を問題とした。労働力が商品になり、労働が主体的行為でなくなる。人の社会的・共同的能力が商品・貨幣に物象化され、人自身が貨幣や商品という経済的カテゴリーの人格化になる。
<組成社会>ギディングス生成社会の対概念。生成社会を基盤にし、類似の目的や活動のために人為的につくられる部分社会、社会集団。集団相互の差異とその成員の類似を特色とし、分化した社会的機能の一部を担当して、生成社会の内部の組成要素をなす。
<存在被拘束性>マンハイム人の意識や知識は、それ自体の内的諸法則のみでなく、外在的諸要因、人の置かれている社会的諸条件によって制約され拘束される。

社会学用語集パート2 か行

<快楽原則>フロイト 本能的欲求の充足を求めるイドの行動原理。これを抑圧しようとするエゴの行動原理と対置。

<下位集団> ある集団の内部に形成された集団。上位集団の文化を分有し、独自の<下位文化>をもつ。それは上位集団の文化の分化・統合や分裂・解体を促したり阻止したりする。

<階層> 財産・職業・所得・学歴などの点で、ほぼ同じか類似した社会的地位を占有する人々。非歴史的・機能主義的・操作的分類概念。

<会話分析>サックス、シェグロフ エスノメソドロジーの一分野。日常会話の「会話すること」自体の秩序形成を詳細に分析。あらゆる社会問題場面における人々の会話活動に焦点を当て、そこでの実践的推論、問題自体の構成を明らかにした分析を蓄積。

<科学的管理法>テーラー 20世紀ははじめ提唱された工業生産の能率向上とコスト削減のためのIE技法であり、これによる生産と経営の合理化運動。課業管理と差別的出来高賃金性の導入、職能別職長制と企画部の設置によるライン組織の変革など。

<鏡に映った自己>クーリー 自我の社会化された側面。他者が自分をどのように認知し評価しているかを表す。相互作用過程の中で他者の自分に対する反応を通じて察知される。

<核家族>マ−ドック 婚姻によって成立した一組の夫婦とそこから生まれた未婚の子からなる家族の集団的単位。核家族は時代と地域をこえて、それ自体として単独としても、大きな複合的家族の構成単位としても、人類社会に普遍的な存在である。

<獲得的地位> 個人の努力や競争によって獲得された地位。生得的地位と対比。近代社会における専門職・自由職の多くは、個人の意欲的な達成動機に基礎づけられたか獲得的地位であるといえる。

<家事・育児の社会化> 家庭内での家事・育児の負担から女性を解放し、精神的・経済的自立と社会参加を促すために、家事労働や育児を家庭外の公共的な施設や集団にゆだね、これを行わせること。社会主義的女性解放論が主張。技術革新やサーヴィスの経済化が進むにつれて、家事労働を軽減化する商品や代替サーヴィスが増加し、主婦の家事からの解放が進んでいる。

<過剰社会>マルクーゼ 欧米の現代資本主義社会は、かつてない物質的豊かさ・快適さをもたらしたが、疎外、自由の抑圧、新植民地主義などの抑圧性を秘めているとした。

<家事労働> 人の生命の維持・再生産(出産・育児・介護)とそれにまつわる雑事(料理・洗濯・掃除など)および家庭生活の管理・運営(家政)をふくむ雑多な労働。職住分離後の性別分業体制下では自然的分業として主に主婦によって担われることが期待された。市場外の私的領域のなかで日々営まれる無償の労働であって、市場という公的領域における有給の賃労働と対比される。

<家族機能> 家族集団がその成員や社会に対してなす持続的な作用あるいは作用関係。マ−ドックの性的・経済的・生殖的・教育的機能の四機能説や、パーソンズの子供の社会化と成人の安定化のニ機能説など。

<価値> 【value, Wert, valeur】 社会学的用語としては、行為主体によっていただかれた「のぞましさ」についての概念であり、個人行為者の行為の方向づけにかかわり、集団に構造的特徴を与えるもの。デュルケームは一度成立した価値の概念は、文化の要素として客体化されることによって、個人や集団に外在する客観的な存在となるとした。文化的価値は、個人に内面化されてパーソナリティの要素になり、集団に制度化されることにより集団内部の社会関係の類を規制する。 パーソンズの社会学理論においては、社会秩序は一般的な共通価値〜正統的で統合的とみなされ、行為の目標選択の基準として作用するような価値〜の存在に依存しているとされる。社会システムとパーソナリティ・システムの間の関連づけは、<社会化>の過程を通した価値の<内面化>によって達成される。価値は、利害や生物学的欲求や階級に還元されず、またそれらによって説明することができないものである。 (マルクス)経済学的には、価値は商品(財またはサーヴィス)に含まれる有用性、効用性または希少性にもとづいて生ずるものとされる。商品の価値は、商品自体の有用性(使用価値)とともに、他の商品との交換可能性(交換価値)によっても量られる。相互に異質な商品同士の交換は、それらを生み出すために投下された労働量(労働時間)を基準になされるが、このような他の商品との交換可能性を通して、その商品の交換価値が現れてくる。

<価値自由>ヴェーバー 社会科学が認識の客観性を保つためには価値判断から自由でなければならない。経験科学は人が何を欲し、何をしうるか教えることはできても、何をすべきかを教えることはできない。それは事実判断と価値判断との区別という実証主義的格率に尽きるものでなく、理論と実践的評価の区別による両者の尊厳を守ることにあった。

<下部構造と上部構造>マルクス 人は社会的生産において、意志とは独立した関係に入るが、この生産関係の総体からなる社会の経済構造下部構造と、それに対応する意識的・イデオロギー的社会関係、その総体である上部構造とは区別されるべきだとして、上部構造に対する下部構造の規定性を主張した。

<カリスマ的支配>ヴェーバー 支配の三類型のひとつ。支配者の非日常的資質あるいは能力に対する非支配者の情緒的帰依にもとづいた支配。預言者、軍事的英雄、デマゴーグによる支配など。情緒的・没経済的性格のため、永続性と組織性に乏しく、伝統的・依法的支配とは対立関係をもっている。

<環境アセスメント> 環境に著しい影響を及ぼす虞のある事業の実施に際し、それが環境に与える影響について事前に調査し、影響の度合いを予測・評価すること。結果を公表し、地域住民など利害関係者の意見を聞いたうえで、環境保全対策を講じ、環境悪化を未然に防ぐことを目的としている。

<環境権> 人類の生存にとって不可欠の資源である環境の破壊を防止するうえの基本的理念として主張されてきたもので、良好な環境を享受し、またこれを支配し、保全しうる権利をいう。自然的なもの社会文化的なものがふくまれ、生活権として、一般に主張されている。

<慣習法> 実定的な法定立権限にもとづいて形成されたのではなく、社会生活のなかから生成してきた社会規範。

<環節社会>デュルケーム 類似した同質の氏族の連合から成る社会。

<官僚制> 複雑で大規模な組織の目標を能率的に達成するための、合理的な管理・の体系。官僚制は、規則の支配、権限のヒエラルヒー、人間関係のインパーソナリティ、職務の専門化、の特徴を備え、能率の論理の貫徹した技術的卓越性をもつ。

<機械的連帯>デュルケーム『社会分業論』 相互に類似した同質的な成員が機械的に結合した社会の結合形。有機的連帯と対置。

<企業家精神>シュンペーター『経済発展の理論』 企業家が既存の経済システムを創造的に破壊し、新たな経済発展をもたらす革新的な企業活動を推進するうえで必要な精神力。継続的な経済発展のためには、たえず旺盛な企業家精神をもった企業家の誕生が不可欠である。

<記号> ある事象が現存していないのに、その事象が引き起こすのと同様な反応を有機体のうちに喚起する刺激。記号は、事象に代わるものとして、事象の性質を指示あるいは意味する。記号の指示作用は一般的には、記号と事象との関係についての複数の有機体の間に成立している共有の了解ないし約束にもとづいている。記号がコミュニケーションの有効な媒介物となるのは、この共通性によってである。

<疑似イヴェント>ブーアスティン 広く報道される事を前提に、実際の出来事以上に本物らしく、しかも劇的で理解されやすいように合成された新奇な出来事。複製技術の発達にともなって疑似イヴェントは急速に増大し、現代人のイメージを支配している。

<技術社会>(テクノロジー社会)フロム 社会システムとテクノロジー・システムが有機的に複合した状態。

<技術的合理性>マルクーゼ『一次元的人間』 いっさいの事象を操作可能な制御と支配の対象として処理するテクノロジーの合理性。技術は中立的なものではなく、自然と人を支配する人の目論みに由来するとし、現代の成熟した産業文明を技術の観念と技術の構築によってすべてが動員される社会、技術的合理性に一元化される社会であるとしている。

<技術的分業>マルクス『資本論』 機械が工場に持ち込まれることで生ずる分業。機械に従属する労働者群と、機械と労働者を監視する少数の技師・機械工を生み出す。

<帰属意識> 他の個人ないし集団の価値基準、役割期待、役割などを自己の意識や行動のなかに内在させ、同化させる心理過程。自己が一体感をもつ他の個人や集団を手本にして自我を形成を図る姿勢や、それらの立場に立って行動しようとする姿勢。

<基礎社会>高田保馬 派生社会に対して、地縁や血縁といった基礎的・自然的な直接的紐帯によって結合した社会。家族・部族などの血縁集団と、村落・都市・国家などの地縁集団に分けられる。

<基礎集団> 地縁や血縁、さらにはこの両者を基礎とする社会的・文化的条件によって形成された自然発生的な集団。家族・村落・民族などをさし、人々はそこに産み落とされ、パーソナリティが形成される。

<議題設定機能> 受け手は、マスコミが報道する話題や争点を重要なニュースと考え、マスコミは受け手の知覚と認識を焦点化する。

<機能分析> 文化・社会現象を構成する諸要素の相互依存的な共変関係を、機能概念を用いて全体的な脈絡のなかで目的論的に説明しようとする分析。デュルケーム、ラドクリフ=ブラウン、マリノフスキーによって始められ、現在では精密に定式化されている。だが、仮説されている機能を経験的に確証し量的に測定する方法は、必ずしも確立されていない。

<客観性>ヴェーバー 経験科学の認識は、価値判断・倫理的良心・世界観・信仰など意欲と実践にかかわる領域に対してどのような関係立つか、という課題に示されたガイドライン。認識と評価を区別する能力、現実が測られ価値判断が導かれる基準の明確な自覚、方法に正しい科学的な証明、など。

<旧中間層> 資本主義社会において資本家と賃金労働者のいずれかにも属さず、小所有=小経営者として存在する自営農民層や、都市商工自営業層などをさす。封建社会では基本的階級を形成していたが、資本主義の展開により、分化・分離している。

<教師=生徒関係> 生徒たちは必ずしも勉強を好まない。これに課業を与え内面に定着させる役割を負う教師には、生徒の自然を統制する権威が制度的に与えられている。しかし、この権威は、生徒が服従する限りのもので、隠然・公然の反抗にさらされている。そして、自分の権威に敏感な教師たちの体質や、権威保持の方略も生まれる。

<共生>イリイチ 人と環境の自律的・創造的な関係やその関係における個人の自由の実現すること。

<共生社会>イリイチ 産業社会では、道具や諸制度が発達するにつれ、人はそれらに隷属させられている。それに対して、人が想像力を働かせ、他者や環境といきいきとした関係を築くことができる社会。

<業績志向>(メリトクラシー) 業績に基づいて人々を評価したり、地位を割り当てたりすること。近代産業社会では、職業・教育など多くの分野で業績志向が優位になる。

<協同組合> 資本主義の矛盾回避のため、営利主義の排除と相互扶助の精神によって生まれた共同組織。勤労者の消費生協、小生産者の生産協同組合、住宅や医療の生協などがある。経済的向上と民主主義を基本原則とする。

<儀礼主義>マートン アノミーへの行為者の適応様式のひとつ。成功を強調する文化的目標を自ら積極的に追求することは諦めているが、競争から降りても制度的規範だけはきっちり守り、穏便に全ての事を運ぼうとする。

<儀礼的相互行為>ゴッフマン 人は、自他の面子を保つため、または壊れそうになった関係を修復するためにも、様々な相互行為をしている。

<グレーカラー> 現社会では、科学技術の高度化、生産工程のコンピュータ化が進み、生産労働の内容も科学的な要素を帯びるようになった。なので、労働者もホワイトカラー的作業に従事するようになった。

<グローバリゼーション> 生産・流通・消費までを含む経済活動が、国家の枠をこえて世界的規模で展開されること。原材料・労働力の価格、国によって異なる規制、市場の状況などにおける最適化を求めて多国籍企業が活動していたことによってひき起こさせれている。

<群集>

<群集心理>ル=ボン 群集は匿名性を獲得し、周囲の役割期待から解放された自分を感じる。非理性的、無思慮、残忍、下品、軽信、盲動、無責任などの群集心理は、古い行動規範の放棄の度合いに応じて強まる。

<訓練された無能力>ヴェブレン 社会的分業が進展し、役割の分化・専門化が進むと、局部的・断片的な領域に閉じこもって全体を見渡すことが少なくなり、専門外の領域に無関心・無能力になる。

<経済的従属> 第三世界に一般的な、国々の経済が他の国々の経済の発展と拡張に制約を受け、服従を強いられる状況。

<形式的自由> 近代国家が国民に基本的人権として保証する身体・思想・信仰・言論・結社などの市民的自由。資本主義の発展とともに、それは生存や労働の自由を保証せず、実質的には不自由を引き起こしたため、社会的ないし経済的な実質的自由が問題とされるようになった。

<劇場国家>ギアーツ 祭儀を支配の手段ではなく、国家の存在目的とするような国家モデル。

<ゲゼルシャフト関係>ヴェーバー 成員の合理的に動機づけられた利益勘定に基づく場合の、社会関係・過程。成員間の同意による合理的な協定を特色とする。

<ゲマンシャフト関係>ヴェーバー 成員の主観的な共属勘定に基づく場合の、社会関係・過程。目的合理性を超えた感情価値を中心とする。

<権威主義的パーソナリティ>フロム、アドルノ アドルノは、ファシズム、エスノセントリズム、反ユダヤ主義などの反民主主義的なイデオロギーを受容しやすいパーソナリティ構造として分析し、安定した自我の不在を見い出した。

<限界効用理論>ワルラス、メンガー 最終的に増減する財の一単位に起因する効用の増減分=限界効用によって商品の価値が定まるとする。

<原子化> 相互に積極的な連帯もコミットメントもなく、原子のようにバラバラに孤立して存在する、平準化され同質化された物理的単位のような人に転化すること。官僚制の進行と裏腹に生ずるマスコミの発達による個人の分散化・流動化。

<限定効果モデル>クラッパー『マス・コミュニケーションの効果』 マスコミの影響は、先有傾向や集団規範とともに働くひとつの要素にすぎず、あらかじめ存在していた傾向を補強するものでしかない。

<限定戦争と全体戦争> W.W.1までの戦争は、先制攻撃を受けても軍事的浸透に限界があり、反撃による回復も可能なので、限定的だった。W.W.1は、国家の生産力と国民を総動員して、敵を徹底的に破壊する全体化の様相を呈するようになった。核戦争の時代の到来により、それも過去のものとなった。

<行為>ヴェーバー、パレート シンボルによって媒介された有意味的な行動。

<行為の合理性>ハーバマス 合理性を人と人との間の間主観的な了解関係の拡張として、コミュニケーション行為の重要性を指摘。

<行為類型>ヴェーバー 普遍的方法を用いて構成される行為の理念型。目的合理的行為・価値合理的行為・感情的行為・伝統的行為に分類。

<郊外化> 大都市圏の舞台が、中心都市から大都市周辺部に移行するなかで、人口と諸機能の離心化過程に併せて、周辺部と結びついた特有の<郊外生活様式>の広範化をさす。

<交換価値>マルクス『資本論』 商品が人の欲望を充たすものである限りでは使用価値であり、これと引換えに他人の商品の一定量を獲得できる限りでは交換価値である。価値としての商品が交換可能なのは、価値が人の労働一般の大きさによって形成されるものだからである。

<交換理論> 人の行動を他者との報酬の交換過程とみる。人のなす行動にはつねに費用と報酬が伴い、行為者は費用・報酬・社会的資産にもとづいて行動するという関係に置かれる。3つの比例関係が他者と比べて有利であれば行動を維持し、不利であれば関係を改善または停止して新たな関係へと向かう。互酬性、公正的分配、競争を基礎概念とする。現実の社会関係は略奪・競争・協同・愛の4つに類型的に特徴づけられる。

<後期資本主義>ゾンバルト W.W.Ⅰ以降の、国家の経済的介入のもとでの、巨大な独占資本を中心とする、組織化され官僚制化が進行した資本主義の形態。ハーバマスは「正当性の危機」が生じていることを論じた。

<公共性>ハーバマス『公共性の構造転換』 私的な家族や市場経済と、議会・官僚制・軍隊などの公的な国家装置にとの間に位置する集団や圏域をさし、社会生活が日常的に営まれる領域をいう。市民の間で討論が行われる圏域であり、世論形成の母体となる。市民相互の非公式コミュニケーション合理性のなかに、現代社会のテクノクラート支配から人々を解放する契機がある。

<公衆>タルド 「拡散した公衆」。マスコミを媒体として関心を共有する日常的・合理的な未組織集団。世論の担い手になり、民主主義を可能にする。

<交通>マルクス 諸個人が特定の社会的形式において相互に物質的・精神的に交わり通ずること。交通は、市民社会においては商品とか資本とかがその姿態を変換し、それぞれの姿態の持ち手を変換する過程にすぎない。それは、モノが商品として、また資本のもとでモノが生産される場合の、生産の連続性の確保のために不可避に発生する。

<高度産業社会>ロストウ、カー、ベル、ガルブレイズ 工業は成熟期にあり、国家活動と計画化の経済的比重が高く、知識社会の様相を呈する。

<高度資本主義>ゾンバルト 産業革命からW.W.Ⅰまでの西欧資本主義の発展段階。営利主義と経済合理主義が経済活動の支配原理になり、機械的技術体系と信用経済が確立した段階。

<高度大衆消費時代>ロストウ『経済成長の諸段階』 工業化の最終段階。経済力を軍事・外交、福祉、消費水準の向上に配分する。軍事・外交と福祉の飽和とともに消費水準の比重が増すとする。資本主義も社会主義もここに収斂するとした。

<心の習慣>トクヴェル 民主的な共和国を支える道徳的・精神的な態度や習慣的実践としての「モーレス」。

<誇示的消費>ヴェブレン『有閑階級の理論』 自分が有閑階級に属していることを誇示するために、富や財あるいはサーヴィスを惜し気もなくかつ無駄に消費する行為。

<互酬性> 社会的交換における双務的で等価的な性質。

<誇大理論>ミルズ『社会学的想像力』 パーソンズの理論体系の現実的有効性を批判するために造語。

<孤独な群集>リースマン <他人志向型>の人々。高度に発達した資本主義社会の、大都市の中産階級の社会的性格を示す。

<コピーの世界> シンボルの言語機能を活用することによって、現実環境を間接的に表現したイメージ。現代では、シンボル・記号環境が増大していて、人はコピーの世界に適応することによって、現実世界に適応している。

<コマーシャズム> 資本主義社会では、物質的使用価値のみならず、教育・芸術・思想・イデオロギー・道徳そして人の存在そのものが利潤追求の手段となる。医療・福祉・宗教などの領域にまで資本の論理が浸透している。

<コミュニケーション行為>ハーバマス 目的合理的行為=道具的理性によって導かれた成果試行的な戦略的行為や合理的行為とは対照的に、対話的理性によって導かれた了解思考的な社会行為のこと。言語に媒介された相互了解関係の拡大をめざす。ここでの合理性は強制なき相互主観性、行為規範が相互に納得のいく妥当な合意に基礎づけられている状態をさす。

<コミュニケーション合理性>ハーバマス 自己中心的な成果の達成によって測られるのではなく、相手との対話を通して実現されていく支配や強制を伴わな了解や合意の確立によって測られる合理性

<コミュニケーション効果>クラッパー 創造、補強、小さな変化、改変、効果なしの5つに分類。

<コミュニケーションの二段の流れ> マスコミの実際の過程においては、送り手から発信されたメッセージはオピニオン・リーダーの解釈を経過して、個々人に伝達される。

<コンサマトリー> ある特定の欲求の充足をめざす反応ないし行動様式。行動の価値だけを重視し、その結果を全く考慮しない点に特徴があり、手段的・道具的合理性、目的合理性と対比。

社会学用語集パート1 あ行

<アイデンティティ>エリクソン
客観的には人格の統合性と一貫性を示す概念。主観的には自分が自分であるという確信・感覚であり、自分の不変性と連続性を他者が認めているという確信・感覚に裏づけられる。

<アウトサイダー>H・S・ベッカー
特定の集団・組織・社会・時代の規範秩序や価値体系に順応しない者。インサイダーのレイベリングにより、局外的立場に身を置く。

<アダルト・チルドレン>
ギャンブルやアルコール、薬物などの問題を抱えた家族のもとで育ったため、自尊心が低く、人と親密な関係を築きにくく、他人からの肯定や承認を常に求める子ども。

<アノミー>デュルケーム、マートン
社会的規範の動揺・弛緩・崩壊による欲求や行為の無規制状態。デュルケームは『社会分業論』で、分化し社会的機能が不統合な状態を「アノミー的」とし、『自殺論』では、社会変動によるアノミー状態が自殺の社会的条件の一つだとした。マートンは逸脱行動の分析において<文化的目標>と<制度的目標>の矛盾から生じる無規制状態をアノミーとした。

<一次元的人間>マルクーゼ
現代社会は基本的対立関係を抑圧してしまう一次元的社会であり、政治闘争の領域は局限され、理想を求め現実を変革する欲求が抑制されるから、人の精神自身が一次元化される。現実に抗議しようとする否定的精神は後退し、<技術的合理性>と<対象支配の論理>によって成る肯定的精神が支配している。

<一般化された他者>G・H・ミード
認知または内面化される社会的期待ないし規範の総称。人はさまざまな他者、そして社会一般の役割期待の内面化を通して、社会的自我を形成する。

<インフォーマル・グループ>
官庁・経営体などフォーマルな組織内に生ずる第一次集団。フォーマルな組織がこれを意図的に管理できるなら、目的達成のための有力手段になる。

<インフォームド・コンセント>
医療の提供者が、患者の自己決定権を尊重するために、医療の内容を十分に明らかに説明したうえで、患者側の理解と同意を踏まえて医療行為を行うこと。

<エクイティ>

<エクリチュール>ロラン・バルト、デリダ
ロラン・バルトが共有的なラングと私的な文体の間で機能するとした歴史的連帯の行為。

<SSM調査>
「社会成層と社会移動」調査。戦後、国際社会学会により社会構造の国際比較のために進められ、日本では日本社会学会が1955年に第一回の全国調査を行った。

<エスニシティ>
エスニック集団への帰属の状態、エスニックな自己意識。エスニック集団は客観的には言語、宗教、歴史的集合体験等の文化指標による集団的境界をもち。主観的にはメンバーの所属意識により定義される。主観的意識が重要な意味をもち、民族的内実も所与というより選択の結果であることが多い。

<エスノセントリズム>サムナー
自民族中心主義。自らの人種・民族を美化し至上のものとし、他人種・他民族を偏見・差別の対象とする思想や生活態度。

<エートス>ヴェーバー
人の社会行動のゆくえを内側から規範する観念の束。当為的な倫理規則ではなく、自覚しえない、することのない規範。個人の内面だけではなく、集団や社会階層のうちに共有される。

<エリートの周流>パレート
エリートと非エリートとの人的交替が起こる現象。<集合体の持続の残基>と<結合の残基>という権力獲得のために力に訴える傾向をもつエリートの間で交替がおこるとした。

<エロス>フロイト
タナトスと対をなすニ大本能の一つ。結合と創造の力、生命を維持し豊かにするエネルギー。

<オートポイエーシス>マトゥラーナ、ヴァレラ、ルーマン
元来は、生体システムがそのシステムの要素を継続的に自ら再生産している様子をさす。ルーマンは、これを社会システムの時間化された要素に適用。

<オピニオン・リーダー>ラザーズフェルド
一般的には、学者や評論家など社会や集団で、意見の形成や表明の際に主導的役割を果たす人。社会学的には、ラザーズフェルドの提唱した<コミュニケーションの二段階の流れ>のなかにいて、マスコミからの影響を、集団内にパーソナル・コミュニケーションで伝達していく、中継機能を果たす人をいう。

<オルタネーティヴ・メディア>
社会運動との関連の中で、現代の支配的なメディアに対抗する機能と役割を果たすメディア。