社会学用語集パート6 は行

<バイアス>
ある特定の人種や集団に対して、特定の行為や敵意を示す心理的傾向・見解。ある結論を導き出すための材料が適切ではなく偏っていること。

<恥の文化>ベネディクト『菊と刀』
日本的な文化の型。外面的な制裁に頼って善行がなされる。

<パーソナリティ市場>ミルズ『ホワイト・カラー』
現代社会では人も商品となり、商品の交換価値のように、人の価値が他人の評価と判断で決定される仕組み。

<パーソナル・インフルエンス>ラザーズフェルド
選挙の投票行動において、マス・メディアによるキャンペーンよりも、家族・友人・仕事仲間による説得のほうが強い影響をもつ。パーソナルな影響は、日常の何気ない接触により、個別的具体性をもって結果を直接確認しながら行使される点に強さがある。

<ハビトゥス>ブルデュー
社会的過程のなかで習得され、身に着いた一定のものの見方・感じ方・振舞い方などを接続的に生み出していく性向。学習行動、言語行動、芸術の享受、社会的交換など多くの行動において、ハビトゥスが大きな役割を演じているとし、文化再生産のメカニズムを説明した。

<パラダイム>クーン
科学者集団が共通に活用する概念図式・モデル・理論・用具・応用の全体。科学研究の伝統をつくる。

<パレート最適>
財の配分がなされる時、何人にも不利益ではなく、ある特定の個人の利益を高めるような財の再配分が不可能な状態。

<バンドワゴン効果>ボウランド
ある意見が大多数の人に支持されているということだけで、その意見を受け入れる傾向があること。

<ピア・グループ>

<皮下注射モデル>
マスコミの効果が、即効的に現れること。効果研究では、起こりにくいことだとされ、クラッパーは現象的なアプローチを提唱している。

<批判理論>アドルノ、ホルクハイマー
<伝統的理論>=現存社会秩序の再生産につながるかたちで諸経験を組織づける専門諸科学に対し、所与の経験的事実や特殊的理論の絶対化を拒否するとともに、現実から切り離されたユートピア的思考をも排除する弁証法的・批判的な社会認識の立場。

<非物質文化>
人の行動様式や観念など、人為的ではあっても、物的実体性をもたないため触知することのできない文化の要素。

<フェミニズム>
女性の権利の確立を志向する思想または男女同権主義。男女間の諸権利や地位の不平等が、女性の男性への隷属をもたらしているという認識に立ち、女性解放のために既成の社会構造を変革していこうとする運動論。

<フォークウェイズ>
ひとつの社会の成員が生存競争のために諸欲求を充足させる過程で、彼らのあいだに無意識的・自然発生的に現れる共通の固定的な行動様式をさす。伝統・慣習を通じて世代から世代に継承される間に、その順守が集団の秩序を守るとみなされて社会規範の力をもつ。

<フォーマル組織>
成員個人の主観的な感情や態度からは独立して、組織図や成文規則によって決められ、それにもとづいて組織目標を目的合理的に達成しようとする組織。

<複製文化>
オリジナル文化の「いま・ここに」しかない一回性・非代替性に対して、コピー文化は反復性・大量性=大衆性を特徴とする。しかし、オリジナルが存在しなかったり、存在していてもコピーの原型にすぎない場合、単純なオリジナル=コピー論は通用しなくなる。複製技術の開発と普及は、オリジナルとコピーの境界を不分明にし、コピーの自立性をかえって保障し、確立させる。

<物質文化>
道具、機械、交通・通信手段、建造物など人間の自然環境に対する適応の成果もしくは所産としての物質的事物、発見や発明、伝播によって蓄積され発達したもの。

<物象化>マルクス『資本論』、ルカーチ、広松渉
人の社会的関係が歪曲され隠蔽されて、モノとモノとの関係やモノにそなわる性質としてあらわれる事態。ルカーチはプロレタリアートの意識が疎外され客体化される事態と解した。広松渉は、後期マルクスは人間の本質を社会関係の総体と捉えなおし、本質主義の立場を脱却し、物象論へ移行したとした。

<物神崇拝>マルクス『資本論』
資本主義的生産のもとでは人と人との関係がモノとモノとの関係としてあらわれ、社会関係が物象化され物象的依存関係に変質しているいて、人の労働の生産物にすぎない商品・貨幣・資本などの物質があたかも固有の力をもつ。人は商品・貨幣・資本などを信仰・崇拝の対象とし、これにひざまずくことになる。この事態は、資本主義社会の日常的宗教となっている。

<不等価交換>エマニュエル、アミン
途上国の一次産品と先進国の工業製品とが、同じ労働時間で生産されながら異なる価値を付与されることにより、商品交換を通じて一次産品から工業製品へ価値移転が生じ、低開発をもたらす。

<フリー・ライダー>オルソン
コストを負担せず恩恵のみを教授する人々。共通利益が存在しても、利己的な個人は、強制や貢献に応じた特別な報酬がない限り、負担をさけようとする。

<文化決定論>
個人の人格・行動様式が、属する文化により規定されるという考え方。デュルケームは文化の外在性・拘束性を重視する。

<文化資本>ブルデュー、パスロン
個人や集団の社会的活動の場において有する文化的有利さの可能性の大小。家族その他の社会的環境のもとで伝達される文化的財・知識・言語能力、その他種々のハビトゥスによって構成。

<文化相対主義>
文化的現象を認識したり記述したりする際、対象への価値関与を避け、当の現象の意味を所与の社会的・文化的意味のなかで評価する態度・立場。

<文化遅滞>オグバーン
文化の変化・発展に際して、その要素もしくは内部領域の間で変化の速度に相違がある現象。物質文化と非物質文化ないしは制度的文化の間には文化遅滞があり、社会生活に不適応・混乱・不安をもたらす。技術的文化、社会的文化、イデオロギー的文化に区分すると、技術的文化が最も早く新しいものに移行し、イデオロギー的文化は古いものをより強く残す。

<文化的再生産論>
再生産の過程を、学歴取得など文化的要件の面から明らかにしようとする。

<分衆>
他人と同じ生活に不満をいだき、自分なりの価値観や生活意識を探す人々の群れ。

<ヘゲモニー>グラムシ
一つの階級が他の階級に対して行使する「イデオロギー的・文化的支配力」。支配階級のそれが他の階級にも合意され共有されていることが、社会=経済システムを安定させる要因である。

<弁証法的唯物論>マルクス
客観的事物の発展法則として、対立物の統一と闘争、量的変化から質的変化への移行、否定の否定、が三原則となる。また、本質と現象、必然性と偶然性、現実性と可能性、普遍と特殊などの関連を明らかにした。

<法文化>
社会の法制度・法過程の特徴のうちで、固有の文化価値の伝統によって規定されると考えられるもの。日本のほうの利用・運用の融通性の重視は、文化的伝統によって説明されてきた。

<ポストフォーディズム>
消費需要の多様化・細分化、労働の単調化による意欲低下に対応するため、ME機器など電子技術を装備した生産設備により工場全体を自動制御化し、人の労働を節約し、フレキシブルな生産工程において需要の多様化に応じた多品種少量生産を効率的に行い、企業業績の向上を図ること。

<没意味化>ヴェーバー
人の行為に付与された当初の意味が次第に埋没し、その意味や理念が抜け落ちていくこと。

<ホット・メディアとクール・メディア>マクルーハン
情報の密度が高いメディア=ホット・メディア(ラジオ、映画、写真)は、多くが与えられているため、受け手が関与できる部分が少ない。情報の密度が低いメディア=クール・メディア(電話、テレビ、コミック)は、受け手の参加の度合いが少ない。

<ホッブス問題>パーソンズ『社会的行為の構造』
社会が「万人に対する万人の戦争」なら、どのようにしたら個人間の闘争をやめさせ、社会システムの安定的な秩序をつくりだせるか。その解決法は、共通の価値体系をパーソナリティに内面化させ、その価値体系を社会システムに制度化させることである。

<ポトラッチ>
膨大な量の食物の消費、貴重な財の贈与、それらの破壊によって、気前のよさを示す。社会的地位を示すため、競争的に行われる。

<ホワイト・カラー>
専門的職業、技術的職業、管理的職業、事務的職業、販売的職業などに属する非現業部門の雇用従業者。

社会学用語集パート5 な行

<内集団と外集団>
社会的関係には親族・隣人・取引などの関係を契機として献身や愛情の対象となり、「われわれ」として捉えられる強い結びつきをもつ人々と、結びつきの弱い、あるいは競争・闘争のなどの対立関係にあり「彼ら」「よそもの」として捉えられる人々に分化する。

<内部志向型>リースマン
共同体的社会関係を基盤とする伝統的社会の停滞性をその内側から打破し、近代的な社会諸関係を主体的に形成してきた諸個人の社会的性格。フロムの<貯蔵的性格>に類似しており、所有と獲得に快楽を感じ、絶えず超自我と自我とエスとの内面的緊張に生きている。

<内面化>
外的客体のもっている意味が、個人のなかに取り入れられ、パーソナリティの構成要素として確立されること。

<日本的経営>
労使関係における年功序列賃金と終身制雇用と企業別組合、充実した企業内福利厚生、経営意志決定における稟議制度、政府と企業との密接な関係、そしてその集団的思考・行動様式など。経済の急成長と高い生産性を、経営行動様式の独自性から探ろうとしてこの概念が浮上した。

<認識論的切断>アルチュセール
あるパラダイムが他のものに取って代わられること。クーンの<パラダイム革新>と同様。

<ノマドロジー>ドゥルーズ、ガタリ
ヒエラルキー的国家の内部性に対して移動的部族の外部性を、定着・安定的な「定理的モデル」に対して生成・力動的な「問題的モデル」を強調する遊牧論。

社会学用語集パート4 た行

<ダイアッド>シアーズ
二者関係。自我と他者という二人からなる関係。

<第一次集団>クーリー『社会組織論』
家族・近隣集団・遊戯集団など、直接的接触による親密な結合、メンバーのあいだに存在する連帯感と一体感のもつ集団。成長後も持続される、幼年期の道徳意識を形成する社会的原型としての機能、集団外の社会関係を強化し、安定化させる機能がある。

<対抗文化>
支配的文化に対し異議申し立てをしたり、対抗・反逆・破壊をしたり、異質な文化創造を行おうとする主体がもつ文化のこと。サブカルチュアの一部である。あらゆる文化は対抗文化を内に含み、両者の相互作用・相互浸透がくり返される。

<第五次産業>ベル
第三次産業をなす経済的諸活動を細分化し再分類した概念。保健・教育・研究・統治など。福祉や保健医療関連の活動をさす場合もある。ポスト工業化社会社会への移行過程で主要な経済活動は三次から四次へ、四次から五次へ移行する。

<第三史観>高田保馬
観念論でも唯物論でもない社会中心の史観。観念も経済も結局は、社会関係によって決定されるとし、その根底にあるものは社会の異質的組立て、つまり人口密度と成員の異質性による社会構成である。

<第三次産業>
産業分野において商業、運輸・通信業、金融・保険業、公務、有給の家事労働、各種サーヴィス業など、財の流通およびサーヴィスの提供にあたる産業の総称。

<大衆>
互いに見知らぬ個人から構成される匿名的集団であり、非人格的関係が支配する。身分かでルーズに組織された集合体であり、明確なリーダーシップをもたずない巨大な非組織集団である。大衆は空間的に散財しており、メディア市場において相互作用しあい、経験の交換を行う。イメージ環境が現実環境を圧倒する現代においては、大衆は社会に流通しているイメージを媒介に相互作用を行い、様々な大衆現象を生み出す。

<大衆化>
近代から現代への展開において生じた社会の構造的変化。大衆の登場、政治の民主化、大衆を操作する心理的装置としてのマス・メディアの発達などによって示される社会の形態的変化。社会の分化と拡大、大衆組織化が進行するなかで、人は社会的絆を喪失しアイデンティティの共有源を失う。しかし大衆化は大衆としての人が、社会のあらゆる局面でその帰趨を決定する存在となったことでもある。ある事物が一部のエリートのものから大衆のものになること。

<大衆社会>
大衆化の進展の結果、移動性の増大、社会分化の進行、伝統的基盤や価値体系の崩壊、感情的紐帯の喪失などによって特徴付けられる社会。大衆社会は、大衆の決定が社会の動向を左右する社会であるが、産業化の進行、権力の集中化、都市化の発展、大量生産手段、交通・通信手段、大衆操作の手段などの発達によって第二次集団の優位、地位と役割の分化、移動性・匿名性・非人間的接触などの傾向が強まる。

<大衆社会論>
マンハイムの議論を契機にアメリカで発展。中間集団の解体によってアトム化された個人が一元的に操作される点に中間集団の特徴を見い出す中間集団無力説(ミルズ、コーンハウザー、フランクフルト学派)と、巨大集団への個人の過同調と強制的画一化のうちにその本質を認める過同調説(リースマン、ホワイト)がある。

<大衆消費社会>
大量生産と大量消費のメカニズムが大衆消費によって支えられる社会。大衆の大きな購買力が大量生産の方向を左右するに至っている。大衆は、価値の多元化が進行するもとでその欲求を多様化し、自由に商品を選択するようになっているため、生産者の視点から、大量生産と大量消費のメカニズムを一方的に動かすことを困難にしている。多品種少量生産を通して大衆消費を作り出す必要が生じている。商品を心理的に陳腐化させる情報操作も、ますます要求されるようになっている。

<第二次産業>
産業分野において鉱業・製造業・建設業など物的なものを作り出す産業をいう。

<第二次集団>
学校・政党・国家など、特殊な利害関係にもとづいて意識的に組織され、成員の間接的な接触を特色とする集団。近代ではその領域や機能が第一次集団に対して優位になる。

<第四次産業>ベル
第三次産業をなす経済的諸活動を細分化し再分類した概念。交易・金融・保険・不動産など。情報産業や教育産業などの知的産業をさす場合もある。ポスト工業化社会社会への移行過程で主要な経済活動は三次から四次へ、四次から五次へ移行する。

<第四の権力>バーク(18世紀イギリスの政治家)
マスコミが、立法・行政・司法と並ぶ強大な潜勢力をもったこと。マスコミに期待されることは、国家権力への「抑制と均衡」の働きだが、批判精神を喪失すると、国家権力に癒着しかねない。

<多元的インダストリアリズム>カー、ダンロップ
インダストリアリズムに収斂する過程は多様で、工業化はテクノロジーの論理を軸にしつつも、伝統的文化やエリートの戦略・選択にかなりの程度左右され、多様なコースをたどる。

<多国籍企業>
数カ国以上の外国に子会社を設立し、外国への投資額、海外子会社売上額がその企業全体のなかで一定比率以上を占める巨大企業。海外では販売よりも生産活動に重点を置く、製造業への直接投資が特徴である。

<脱学校社会>イリイチ
学校は、生徒を拘束して一方的な教育内容をおしつけていので、その<操作的>な制度を、自然発生的な学習が成立する<共生的>な制度に変える必要があるとした。

<脱工業化社会>ベル
先進諸国でサーヴィス業がGNPの半分に達し、経済の基調が財から知識・サーヴィスに移行している。自由市場から社会計画への移行。労働時間の短縮と生産性の向上。技術社会、知識社会、高学歴社会への移行などの社会のマクロモデル。政治におけるテクノクラシー、人々の脱イデオロギー化と価値多元化、労働に代わる代替価値の問題などが指摘されている。

<タテ社会>中根千枝
日本の社会は場の共有により構成され、個人の集団所属は単一化される。必然的に人間関係は序列化され、親分=子分関係、先輩=後輩関係などのタテ組織が発達する。

<タナトス>フロイト
生命体に内在する死への傾向。生きることの緊張と努力からの解放、生命以前の無機状態への回帰をめざす力。自己破壊衝動や反復強迫
などは、これの表れ。

<他人志向型>リースマン『孤独な群集』
20世紀の大衆社会に支配的な性格類型。自己の無力と茫漠たる不安から他人の移行に絶えず気を配って同調し、大量に消費し、神や良心という内面的権威の不在のもとでも社会関係を維持できる。

<ダブル・コンティンジェンシー>パーソンズ『社会システム論』
相互行為は、自我の条件と多我の条件という二重の条件に依存している。それでも、自他の相互行為が成り立つのは、その間に安定的なシンボル体系が分有され、共有されているから。

<ダブル・バインド>ベイトソン
そこから身を引くことのできない人間関係において一定のメッセージが与えられ、かつそのメッセージを否定するメタ・メッセージが同時に与えられる状況。これが反復されると精神分裂病を生む。

<地位付与の機能>ラザーズフェルド、マートン
マス・メディアが何らかの人や物事を取り上げること自体が、取り上げるに値するものであることを示すことになり、対象に正当性が付加され、威信や権威が高まる。

<知識産業>マハループ
教育、研究開発、マス・メディア、情報機器、情報サーヴィスなど。現代社会では、すべての産業は研究開発や教育に力を入れざるをえなくなっている。すべての産業が知識産業化してきているとも言える。多くの科学者が雇用され、専門的職業従事者が多くなり、労働者全般が知識労働者化している。

<知識の社会的配分>シェッツ
人々が、日常生活を通じて獲得し、蓄積してきている知識は、等しく共有されているわけではなく、その種類や熟知度において人によって異なり、職業上の役割などに応じても社会的に異なって分有されている。

<知識のストック>シェッツ
人が日常生活において自らの現在・過去・未来を解釈し、それらを有意味なものとして構成するときに自明視され、あらかじめ構成されている手持ちの知識在庫のこと。

<知的財産権>
発明・考案・著作など、知的活動の所産としての創造物や産業活動上の識別標識を独占的に支配し非有形的利益を受ける権利の総称。不動産、再建に次ぐ第三の財産とされる。特許権・実用新案権・意匠権・商標権という工業所有権と著作権がその中心とされるが、エレクトロニクス、バイオテクノロジーなどの技術革新と世界的な技術移転にともない、従来の保護システムの限界や各国の保護レヴェルの差異が問題になっている。

<中間集団>
個人や第一次集団と国家や全体社会とのあいだで、両者を媒介する自発的結社や職業集団。近代の多元的社会を支える構造的基盤を形成しエリートの一方的な権力の行使を防止し、デモクラシーを維持していく役割がある。

<中間文化>加藤秀俊
教育水準の向上とマスコミの発達により、エリート主義的高級文化と娯楽一辺倒の低俗主義が歩み寄り、中間的水準の文化が形成される。軽便な常識主義、適度な政治的好奇心、ゴシップ主義を特徴とする。1950年代半ばの文化状況。

<中心と周辺>
一社会や諸社会のシステムにおいて、発展を先導する支配的部分を中心、発展に従属する、あるいは取り残される部分を周辺という。

<中範囲の理論>マートン『社会理論と社会構造』
現実の観察に基づく経験仮説と、巨大な概念図式の双方の機能を活性化させていくような社会学の特殊理論。

<超自我>フロイト
個人が大人たちの禁止的態度、懲罰的態度、叱責的態度、叱正的態度などと同一化してこれらを内面化したもの。道徳的な良心ともいわれる、自我を監視し禁圧する心的メカニズムである。この機能が極度に低下したり、肥大化すると不適応行動を引き起こすことがある。

<沈黙の言語>ホール
人間関係のなかで時間・空間の扱い方や時空間を構成する諸要素がコミュニケーションに深くかかわり、文化によってもつ意味が異なる。

<沈黙の螺旋モデル>ノエル=ノイマン
ある争点に関する流動的な世論状況のもとで、優勢となった立場の意見が人々の同調行動を増大させ、同調者の意見表明が増大する結果、劣勢な立場の意見の可視性が低くなり、見かけの世論状況をさらに優勢立場に有利な方向に変える。結果、劣勢な立場は沈黙を強いられる。

<罪の文化>ベネディクト
絶対的な規範に従う道徳を説き、良心の啓発に依存する、西洋人に特徴的な文化のパターンをさしている。内面化された罪悪の確信にもとづいて善行がなされ、他者に知られてない非行でも自らは罪の意識にさいなまれる。

<ディコンストラクション>デリダ
問題となっている対象の構造を分析・解体する作業を通じて、その問題点を明るみにし、再び組み立て直すこと。

<ディスクルス>ハーバマス
了解志向的行為の反省形態。通常のコミュニケーションは、そこで話題にされることのない一定の規範や価値についての相互間での自明的了解のうえに成り立っている。この了解が崩れ、自明性に動揺が生じたとき、この相互了解を修復するために、問題化した規範や価値の妥当性の新たなる根拠づけという、それだけのために営まれる純粋コミュニケーション、メタ・レヴェルでのコミュニケーション。

<ディスタンクシォン>ブルデュー
文化的趣味、ものの見方、振舞い方によって自己を際立たせ、正統化するといった意識的・無意識的行動。これが集団間の差異化にも作用するとき、階層の分化やヒエラルヒー化の一原理となる。

<テクニックウェイズ>オーダム『社会学の原理』

<テクノクラシー>ヴェブレン
専門的知識、科学や技術によって、社会あるいは組織全体を管理・運営・操作することができ、それらを所有するものが、意志決定への大きな影響力をもつに至るシステム・考え方。

<テクノクラート>
科学的知識や技術を所有していることによって、社会や組織の意志決定に重要な影響力を行使しうる人。高級技術官僚。

<テクノストラクチュア>ガルブレイス『新しい産業国家』
現代の情報化社会における、技術者・経営者など専門家集団による意志決定機構。

<デノテーションとコノテーション>バルト
記号論はシニフィアン→シニフィエへの意味作用=デノテーションを分析するが、コノテーションとは、記号自身が再びシニフィアンとなって意味作用をもつ場合で、ある記号にまつわる雰囲気やイメージ。

<デマゴギー>
政治的目的のため、意図的に捏造され流布される虚偽の情報とその操作のこと。

<伝統的支配>リースマン
伝統的社会に支配的な性格類型で、社会諸関係の構成要素における主体的意識の欠如ならびに現世的権威への恭順、所与の現実の既定性への屈服などの特色をもつ。諸個人の内在化された権威としての良心ではなく、外面的権威への同調や恥の意識によって規定され、非合理的・情緒的特徴をもつ。

<伝統的行為>ヴェーバー
慣れてしまった刺激に対して、習慣的に反応する行為。没意味性と有意味性の限界線上にあり、習慣化した日常的行為の多くはこれに近い。

<伝統的支配>ヴェーバー
支配の正当性が、昔から存在している秩序と支配者の力との神聖性にもとづいており、またそれによって信仰されているとき。支配者は伝承された規則によって決定され、その服従も伝統による支配者への義務関係によって行われる。

<動機づけ>
個体をある活動または目的追求に向かわせる力=動因により、このような状態に差し向けること。個体に本来備わっている内的なものと、外から人為的に与えられる外的なものがある。

<道具主義>
ある事物を評価する際、目標に対して手段が有効であるかを第一義的に問う立場。理論や観念の意味を、道具としての観点から捉えるプラグマティズムの考え方で、それを人が環境への適応に当たっての有効性から評価する。

<道具的コミュニケーション>
送り手と受け手の意図する目的を達成するための手段として伝達・受容されるコミュニケーション。受け手の態度や行動に影響を与える送り手の操作的なコミュニケーションともされる。

<道具的理性>ホルクハイマー、ハーバマス
感性を基礎にしながら事物の本質を認識する能力であった理性が、事物の単なる数量的把握の手段と化し、現実肯定としての実証主義や操作主義に堕したこと。

<同調>
集団や他者が設定した標準や期待にそって、他の人々と同じ、または類似の意見・態度をとること。社会が円滑に動くうえで不可欠のメカニズムだが、主体的社会成員の形成、社会の真の発展を阻む。

<道徳>
社会またはその下位体系において一般に承認された行為準則の全体。習俗・慣習・法などの社会規範によって支持され、また個人のなかに内面化されて内的規範として善悪の判断の基準となる。

<逃避主義>マートン
アノミーへの適応様式の一つ。文化目標の追求を放棄し、制度的規範・手段にも背を向ける行動様式。

<匿名の権威>フロム
現代では、王や教師、道徳律など明白な権威に代わって、人々が考えたり感じたりしていることが権威として、同調を要求する。「匿名の、目に見えない、疎外された権威」

<トーテミズム>フレーザー、レヴィ=ストロース
個人・集団が特定の動植物を特別の関係にあるもの=トーテムとみなし、そのトーテムをめぐって打ち立てられる儀礼や神話の体系。レヴィ=ストロースは、人と自然にまつわる人類の根源的論理の表現だとした。

<ドラマトゥルギー>ゴッフマン
人の日々の生活と行為を演劇と同じものと考え、行為者を演技者もしくは観客とみなして記述し分析する方法。