社会学用語集パート9 ら行〜わ行

<ライフコース>
個人が成熟し、生活を変えていくにつれてたどると期待される社会的役割の束、役割移行の文化的に定義されたパターン。

<ラジオ研究>ラザーズフェルド
大衆のラジオ聴取行動は娯楽番組に偏っているが、そこから日常生活上の効用を得て、娯楽番組には教育機能が潜在している。

<ラベリング理論>レマート、ベッカー
逸脱行動の存立を、逸脱者とかかわる人々による、逸脱のカテゴリー付与や社会的反作用といった認知や評価によって説明しようとする。

<ラングとパロール>ソシュール
言語活動の社会的側面がラング、個人的側面がパロール。ラングは、個人に言語能力の行使を許すために社会が採用した規約・約定。パロールは、話し手の意志にもとづきラングの規制のもとで実行される結合・発生の個人的行為。ラングが潜在的で集合的な記号システムで、パロールはその個人的な実現である。

<リインフォースメント>ラザーズフェルド『ピープルズ・チョイス』
マスコミの社会的効果のひとつで、受け手の意見や態度の妥当性・正当性がマスコミとの接触過程で再確認され、いっそう強化されること。人々は、自分の意見や態度と一致や近似した内容と接したがり、そうしたものだけを受容する傾向がある。マスコミのキャンペーンや報道内容が直接、態度変容を引き起こすことは少ない。

<利他主義>コント
他者の幸福と利益のための行為。

<理想的発話状況>ハーバーマス
問題化した行為規範の妥当性を根拠づけるための純粋な<ディスクールス>において、それらを可能にする不可欠の構成条件としていつもすでに想定されている仮象。

<リゾーム>ドゥルーズ、ガタリ『ミル・プラトー』
秩序的・上下関係的な旧来の制度や構造、ヒエラルキー的・伝統的な思考法を示すツリーに対し、相互に異質なものが横に結びつく、新しい関係や思考法しめす概念。

<リードとラック>
社会的・文化的な変動は絶えざる調整と再調整によるが、構成諸要素は、それぞれ適応力や変動率においても、取捨選択の難易においても差異があるので、ある要素の変動が先行、または遅滞する

<理念型>ヴェーバー

<リビドー>フロイト
人の成長・発展を可能にする心的エネルギー源。<エロス>と<タナトス>がともに含まれ、厳密には前者をリビドー、後者をモルティド−という。精神分析では、人の行動はすべてエロスとタナトスの相互対立的・結合的作用である。

<流動化社会>ベニス、スレーター
現代社会は一時性を特質とするが、それに対応する有機的な一時的システムの形成が人の自己変革を可能にする。

<理由動機>シュッツ『社会的世界の意味構成』
前もって考えられた企図にもとづいていま進行している行為を、その企図の構成それ自体を規定することによって過去から規定している、行為者の過去の総体。

<領有>マルクス
諸個人が自己にとって外的な対象として存在するものを「わがもの」として獲得すること。これを可能にしている社会関係や社会過程を包括した概念。

<理論社会学>

<類からの疎外>ヘーゲル、フォイエルバッハ、マルクス
人の本質たる類的存在、共同体的存在から人が疎外されること。マルクスは共同存在のシステム自体が疎外態であることから人が疎外されるとしている。

<レッセフェール>スミス『諸国民の富』
自由競争こそ国富を増大させるとし、経済活動に対する国家の干渉を否定する要求・政策。

<レリヴァンス>シュッツ
有意性。個人や集団が自分達にとって有意味な生活領域を特徴づけるときの評価や判断の基準となるもの。

<労働価値説>マルクス『資本論』
人の労働が価値を生み、それが商品の価値の大きさを決定する、という経済思想。商品の価値はその凄惨に必要な社会的労働時間によって決まる。し善意働きかける主体的な営みとしての労働を軸にしているという点で、近代思想の枠にとどまっているという批判がある。

<労働過程>
人が労働手段を用いて自然に働きかけ、自然を加工し、成果を生産物として手にする過程。それは有用労働と労働手段を基本的要素とし、技術的労働過程と組織的労働過程との結合として展開される。人が人として存在する限り労働過程の展開は不可欠である。資本主義的な生産形態のもとでは、それは資本の価値増強の過程としてのみあらわれる。

<ロゴス中心主義>デリダ
<シーニュ>に先行する、自己・ロゴス・神の「現前」を認め、それが意味の究極的根拠をなすとする考え。<パロール>のなかにこそ、その意味が直接的に現前するという西洋伝統の思考であり、<ディコンストラクション>の対象となる。

<ワンウェイ・コミュニケーション>
送り手と受け手の役割が固定され、情報が一方向にしか流れないコミュニケーション。講演やマス・コミュニケーションなど。

社会学用語集パート8 や行

<役割期待>
集団や社会は、その対内的・対外的な相互行為場面において一定の地位の占有者の果たすべき典型的な行動を様式化して、順守するように期待する。

<役割取得>
特定の相互行為場面に適応していくために、自分の地位にふさわしい行動様式を的確に学びとり、自分の諸属性に合わせ実行に移すこと。

<夜警国家>ラッサール、ロック、スミス
政府の任務を犯罪の取締と外敵からの防御に限定し、私生活や経済活動に立ち入ることを禁じる考え方。

<野生の思考>
野生の思考は科学的思考と共存し現代文明の基層をなす。手元にある雑多で意味に満ちた記号やイメージのストックからの選択・結合を行うという点で知的な<プリコラージュ>といえ、綿密な観察にもとづき可感的なタームにより感覚世界の可知的な組織化をめざすという点で<具体の科学>ともいえる。

<友愛家族>バージェズ、ロック『制度から友愛へ』
成員は愛情によって結合し、平等な関係に立ってお互いに幸福の追求を第一義とする。

<有機的連帯>デュルケーム
独立した人格をもった異質の成員が、自らの個性を能動的に生かしながら、分業にもとづいて相互に結びついて形成する社会の結合形態。

<豊かな社会>カルブレイス
欠乏と闘ってきたかつての社会対して、生産力が向上し、民間部門の豊かさと公共部門の貧しさのアンバランスという問題性をもつようになった社会。豊かな社会の基本問題はモノよりも人に移り、「人間の投資」としての教育が重視されなければならない。

<陽気なロボット>ミルズ
人間関係管理を通して職場生活のなかで幸福感と満足感を与えられ、高い企業帰属意識をもって嬉々として作業能率の向上に励んで働くホワイトカラーの現代像。

<余暇社会>
余暇の享受が中心的価値をなっているような現代社会のあり方。レジャーの大衆化により、現下の労働では達成できない自己実現の積極的な意味が見い出されるようになった。

<抑圧的寛容>マルクーゼ
寛容はかつて政治的自由主義の基本的な徳であり、「解放的」な意味があった。現在の管理社会では、寛容は真の対立をぼかし、反体制運動などを骨抜きにし体制内に編入する、体制的な差別と支配の構造を許容し維持する「抑圧的」な力となっている。

<抑圧的脱昇華>マルクーゼ
先進的な産業社会では、昇華によらないリビドーの直接的満足が許容される。しかし、それはリビドーの局所化と引換えに秩序維持の立場から望まれた「制度化された脱昇華」であり、自由を拡大しながら支配を強化する現代の社会統制の副産物である。

<欲望の体系>ヘーゲル『法哲学』
市民社会の基本的契機として原子論的諸個人の相互的依存関係をしるしづけたことば。市民社会では利己的諸個人が各自の欲求充足を図るために分業・交換・交通の依存関係に入り、この関係を通じて全体の福祉が媒介される。

<四つの願望説>トマス
人の普遍的で基本的な欲求。1.新しい経験ないしは刺激を求める願望。2.安全を求める願望3.感情的反応を求める願望4.社会的認知を求める願望

社会学用語集パート7 ま行

<マーケット・セグメンテーション>
企業の意図を市場ニーズと的確に一致させるため、市場を細分化し絞り込むこと。

<マーケティング>
大量生産と大量消費のメカニズムを円滑に回転させるために、財とサーヴィスの全流通過程を生産者あるいは流通機構の手中に管理する、企業経営の組織的活動。その基本は、消費者に対して財とサーヴィスを購入したいという欲望を起こさせることである。現代の消費者は、購買に際してかなりの選択の自由をもっているが、しかしマーケティングは、あらゆる手段を用いて、知らず知らずのうちに消費者の欲求を操作し、生産者ないしは流通機構の設定する経営的な目標に向かっその欲求を喚起し活動するという、消費者の欲求管理を行おうとする。

<麻酔的逆作用>ラザーズフェルド、マートン
マス・メディアからの大量情報に接触する人々が、受動的に情報を吸収するだけで満足し、社会的行動への能動的参加のエネルギーを喪失してしまう状態。

<マルチカルチュラリズム>
一社会の統合を一元的な立場から追求するのではなく、文化・宗教・生産様式の多様性があっても可能とする立場。カナダ、オーストラリアでは国家政策となる。その一方で人種・エスニック集団の自立化と社会の分裂を危惧して、市民文化や普遍的権利を強調する意見も少なくない。

<マン=マシーン・インターフェイス>
人と機械の情報交換の「仲介」装置。自動車・航空機のハンドル、計器、投票制度、市場制度など。

<民主的パーソナリティ>アドルノ
民主主義的イデオロギーをもつパーソナリティ型。自発的で、新しい事態にすぐ対応でき、責任感が強く、自己の使命をよく見定めることができる。

<無規制的分業>デュルケーム『社会分業論』
有機的・調和的関係の失われた近代産業社会の病理形態。

<無駄の制度化>
厖大な国防支出、設備陳腐化のスピードアップ、宣伝・広告費など、再生産過程には直接役立たないが、商品やサーヴィスの吸収を促進するという意味で、私的資本の論理のなかで一種の合理性をもって成立している無駄。現代資本主義の安定と繁栄は、無駄の制度化によって維持される。
疎外された消費行動が生み出す大衆社会状況の一側面。大量生産・消費のメカニズムのもとでは、消費行動は、商品の迅速なモデル・チェンジ戦術や、広告の欲望合成作成に規定され、消費者自身も他人志向型の性格や地位象徴を求める願望を強め、無駄の制度化ともいうべき使い捨て文化をつくる。

<メセナ>
芸術・文化の振興を支援する活動。

<メタ言語>
メッセージの解釈を一義的に指定しなければならない場合や、解釈が不安定になることが予測される場合、メッセージの含意を説明するために付与されることば=記号。

<目的合理性>ヴェーバー
一定の目的設定が行われた場合、その達成のための手段選択、操作可能でない事物や他者がつくり出す「条件」への配慮、行為の付随的結果の予測と統制が合目的に行われること。

<目的動機>シュッツ『社会的世界の意味構成』
前もって考えられた企図にもとづいていま進行している行為を未来から規定している、その行為によってもたらされるべき事態。

<目的論的説明>
社会的行為や現象を分析・説明・理解する場合に、因果論的にではなく、何らかの目的のためになされ、ないしは生じたものとして説明する方法や態度。

<目標指向>
未来の望ましい状態を目標として設定し、現在の状態とその目標状態との間のズレを縮小していく働き。

<物の体系>ボードリヤール
現代の消費社会では、モノは欲求対象としての物財的な生産物ではなく、消費という体系的な記号操作活動のなかに組み入れられる<記号>となっている。記号としてのモノは相互に、非本質的で周辺的な差異のシステムを構成し、消費者の社会的地位をコード化し、彼に「個性」を賦課する。モノの記号性はモノについてのコノテーション的な言説としての広告や、生産よりも消費を先行させるクレジットによって促進させられる。

<模倣>タルド
他の個体の行動を見て、他律的にか自発的に類似の行動を取ること。社会関係を成り立たせる結合性ないし同調性を可能にする機能を営む。社会を発明の模倣によって拡充する現象と捉え、社会現象を発明と模倣の心理的事実で説明した。

<モラル・パニック>コーエン
青少年の些細な問題行動に対して、マスコミ、地域社会、警察等が過剰に反応すること。イメージとしての問題が増長され、それが社会的脅威と認識され、社会はパニック状態に陥る。