ジャズ 私の推薦する究極の名演名盤ベスト

「V.S.O.P. ニューポートの追憶」ハービー・ハンコック(コロンビア、1976)

Disc 1の二曲目の「処女航海」は、オリジナル版を超えて、5人の名プレイヤー(ハンコック、ウェイン・ショーター、フレディ・ハバード、ロン・カーター、トニー・ウィリアムス)の演奏がかみ合った奇跡のパフォーマンスであり、ショーターとハバードの驚異的なソロとそれに呼応するトニーの爆発的なドラミングと変幻自在にリズムを刻むハンコックのバッキングに圧倒されます。四曲目の「アイ・オブ・ザ・ハリケーン」もオリジナルより優れた演奏です。Disc 2、四曲目の「ハング・ユア・ハング・アップス」は「ファンク・ギター(あるいはカッティング・ギター)の聖典」と呼ばれている名演であり、レイ・パーカーJr.とワー・ワー・ワトソンの二人のカッティング・ギターにポール・ジャクソンのベースが絡んだグルーヴが最高にクールです。

「エンピリアン・アイルズ」ハービー・ハンコック(ブルーノート 、1964)

US3にサンプリングされたファンキー・ジャズの名曲「カンタロープ・アイランド」と新主流派の先駆けとなったアルバムとして有名ですが、それ以外の3曲がハービーの作曲の叙情性と幻想性を感じて私はとても好きです。特に一曲目の「ワン・フィンガー・スナップ」のフレディ・ハバードのソロはフレディの生涯最高のソロであり、ジャズの中で最も創造的かつ正統であり、勇しく力強くて、しかも美しいソロだと思います。

“Coltrane’s A Love Supreme Live in Amsterdam” ブランフォード・マルサリス(マスターワークス、2015)

コルトレーンのスタイルを継承する現代最高のサックスプレイヤーであるブランフォード・マルサリスによるオリジナルを超えた、この世のものとは思えぬ、神が降りてきたような驚異的で神秘的で情熱あふれる演奏の「至上の愛」のライブ盤です。

「ブライト・サイズ・ライフ」パット・メセニー(ECM、1976)

パット・メセニーがジャコ・パストリアスと共演したメジャーでのデビュー盤です。メセニーとギターのジャコのベースの音色と、メセニーの作曲が作り出す「森の音楽」と呼ばれている幻想的でありながらリアルなアメリカ南部・中部の風景を思い起こさせるジャズの響きがしないがジャズであるオリジナルなジャズがここにはあります。

「カインド・オブ・ブルー」マイルス・デイヴィス(コロンビア、1959)

世界で最も売れたジャズのレコード・CDであり、マイルスがモード・ジャズを完成させた独特で実験的でありながらもクールでシンプルなジャズの歴史の中の究極の名レコーディング、名盤の一つです。このレコーディングと同じもの、並ぶものはありません。リラックスしつつも緊張感と深い理解のあるアンサンブル、全曲のマイルスとキャノンボール・アダレイ、コルトレーン、エヴァンスの一つ一つのアドリブ・フレーズが美しく尊い最高の音楽です。

「Go」デクスター・ゴードン(ブルーノート、1962)

一曲目に収録されている「チーズ・ケーキ」は、デクスターの太いテナーのソロが最もジャズらしくダンディーでムーディーかつクールな最高の名演です。ジャズの歴史の中で究極のソロの一つだと思います。

「ポートレイト・イン・ジャズ」ビル・エヴァンス・トリオ(リバーサイド・レコード、1959)

ビル・エヴァンスの代表作の一つであり、ベースのスコット・ラファロ、ドラムのポール・ポチアンと結成したトリオの類いまれなる演奏を捉えたジャズ・ピアノとモード・ジャズの最高の一枚。「枯葉」や「ウィッチクラフト」「恋とは何でしょう」「いつか王子様が」など親しみやすいスタンダード・ソングを中心に、エヴァンスとラファロの高度なインタープレイやモード奏法など原曲を超越した高度な解釈とアレンジ、テクニック、インプロヴィゼーション、アンサンブルで演奏されています。

「バグス・グルーヴ」マイルス・デイヴィス(プレステージ、1954)

マイルスとミルト・ジャクソン、セロニアス・モンクの音の少ない最高にクールなソロが魅力的なハード・バップ完成期の名盤です。

「ヘッド・ハンターズ」ハービー・ハンコック(コロンビア、1973)

ハービー・ハンコックが初めて本格的にエレクトリック・ピアノとシンセサイザーを導入し、ジャズ・ファンクのスタイルを確立した作品。ハービーのシンセサイザーとエレピのアイデアとボール・ジャクソンのベースのグルーヴを中心に他のメンバーの演奏を含めたアレンジやミキシングが現在聴いても驚異的です。

「ハーフ・ノートのウエス・モンゴメリーとウイントン・ケリー」ウェス・モンゴメリー (ヴァーヴ、1965)

マイルスの「マイルストーンズ」「カインド・オブ・ブルー」のリズムセクションをバックにジャズ・ギターのパイオニア、ウェス・モンゴメリーがオクターブ奏法も用いた縦横無尽のソロを展開します。

「インターステラー・スペース」ジョン・コルトレーン(インパルス!、1974)

ドラムとコルトレーンのテナーのソロのみのフリージャズ作品です。シンプルであるため却ってコルトレーンの演奏と音色を堪能でき、その情熱と狂気を感じることができます。

「ザ・シーン・チェンジズ」バド・パウエル(ブルーノート、1958)

バド・パウエルがブルーノートに残した、右手はメロディ、左手はバッキングに専念するというバード・バップのピアノ・トリオの演奏法を確立したジャズ・ピアノ最大の名盤です。ドラッグによる不調から復帰したパウエルの鬼気迫るハードで爽快でシンプルな演奏が聴けます。

「サムシン・エルス」キャノンボール・アダレイ(ブルーノート、1958)

キャノンボールのリーダー名義のアルバムですが、マイルスがアート・ブレイキーと共演したいためにブルーノートで吹き込んだ実質マイルスがリーダーの名盤です。「枯葉」のカヴァーが非常に有名ですが、私はタイトル曲「サムシン・エルス」の曲とキャンボールのソフトで高いトーンで細かいフレージングの見事なソロが好きです。

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ジャズ入門 初心者にオススメの名盤トップ10

1.「クッキン」マイルス・デイヴィス・クインテット(プレステージ、1957)

マイルス・デイヴィスがプレステージ・レコードとの契約を満了させ、コロンビア・レコードに移籍するために突如、数日で大量のレコードディングを行なったことで有名な「マラソン・セッション」のうちの一枚です。マイルスの第一期黄金クインテット(ジョン・コルトレーン(ts), レッド・ガーランド(p), ポール・チェンバース(b), フィリー・ジョー・ジョーンズ(dr))の高度にシンクロしつつもライヴ感のあるプレイ、マイルスのハードバップ時代の頂点にある成熟した演奏を聴くことができます。面白いことにこのレコードに収録されているのは、セッションの最後の方の録音ですが、最初にレコードとしてリリースされています。マイルスのハーマン・ミュートの音色が甘い、極上のバラードの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」の名演とハードで早いテンポでドライブしながらも完成されたプレイのソニー・ロリンズの曲「エアジン」の対比が印象的な名盤です。

2.「ポートレイト・イン・ジャズ」ビル・エヴァンス・トリオ(リバーサイド・レコード、1959)

ビル・エヴァンスの代表作の一つであり、ベースのスコット・ラファロ、ドラムのポール・ポチアンと結成したトリオの類いまれなる演奏を捉えたジャズ・ピアノとモード・ジャズの最高の一枚。「枯葉」や「ウィッチクラフト」「恋とは何でしょう」「いつか王子様が」など親しみやすいスタンダード・ソングを中心に、エヴァンスとラファロの高度なインタープレイやモード奏法など原曲を超越した高度な解釈とアレンジ、テクニック、インプロヴィゼーション、アンサンブルで演奏されています。

3.「タイム・アウト」デイヴ・ブルーベック(コロンビア、1959)

全ての曲が変拍子の曲で構成され、「テイク・ファイブ」で有名な名盤ですが、クラシックの影響を受けアレンジが施されたウェスト・コースト・ジャズという側面もあります。「トルコ風ブルーロンド」「ストレンジ・メイドウ・ラーク」など他の収録曲でクラシック的な優しい曲調の佳作が揃っていて私は好きです。ソフトで親しみやすく美しいポール・デズモンドのアルトサックスとブルーベックのエレガントなピアノはジャズ史の中の最高のコンビネーションの一つです。

4.「ザ・シーン・チェンジズ」バド・パウエル(ブルーノート、1958)

バド・パウエルがブルーノートに残した、右手はメロディ、左手はバッキングに専念するというバード・バップのピアノ・トリオの演奏法を確立したジャズ・ピアノ最大の名盤です。ドラッグによる不調から復帰したパウエルの鬼気迫るハードで爽快でシンプルな演奏が聴けます。

5.「ジャイアント・ステップス」ジョン・コルトレーン(アトランティック・レコード、1960)

下記のマイルスの「カインド・オブ・ブルー」を経たコルトレーンが複雑なコード進行と転調による独自のモードジャズを確立した名作。超絶技巧、超絶的なコード理論の演奏がされているが、音楽自体はアルバム・タイトルの通り痛快でかっこいい。束縛から解き放たれ、自己のスタイルを確立し、才能を開花させたコルトレーンの姿を捉えている。

6.「カインド・オブ・ブルー」マイルス・デイヴィス(コロンビア、1959)

世界で最も売れたジャズのレコード・CDであり、マイルスがモード・ジャズを完成させた独特で実験的でありながらもクールでシンプルなジャズの歴史の中の究極の名レコーディング、名盤の一つです。このレコーディングと同じもの、並ぶものはありません。リラックスしつつも緊張感と深い理解のあるアンサンブル、全曲のマイルスとキャノンボール・アダレイ、コルトレーン、エヴァンスの一つ一つのアドリブ・フレーズが美しく尊い最高の音楽です。

7.「リラキシン」マイルス・デイヴィス・クインテット(プレステージ、1958)

上記の「マラソン・セッション」の二作目にリリースされたレコードです。「クッキン」と前後したレコーディングのアルバムです。ミドル・テンポの曲が中心で、マイルスの特徴的なハーマン・ミュートの味わい深い音色が堪能できる名盤です。

8.「アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション」アート・ペッパー(コンテンポラリー、1957)

ウェスト・コースト・ジャズを代表するアルト・サックス奏者、アート・ペッパーがマイルス・クインテットのリズムセクションと共演したリラックス感がありつつもダイナミックな演奏の「普通」で良いジャズの名盤です。

9.「レディ・フォー・フレディー」フレディ・ハバード(ブルーノート、1961)

ジャズ史上最高のテクニックと音色を持つトランペッターの一人であるフレディ・ハバードの初期の佳作あるいは名作で、「普通の」優れて完成されたハードバップが聴けます。

10.「ヴィレッジ・ヴァンガードの夜」ソニー・ロリンズ(ブルーノート、1957)

ハード・バップを代表するテナー・サクソフォニスト、ソニー・ロリンズのライヴ盤です。ジャズとジャズ・サックスの代表的な名盤だとされる「サキソフォン・コロッサス」よりもライブ感のあるこのアルバムの方が私は好きです。

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マイルス・デイヴィス年表

1926 – 5月26日、マイルス・デューイ・デイヴィス三世、イリノイ州アルトンの黒人としては裕福な家庭に生まれる。父は歯科医で、母は音楽愛好家だった。

1935 – 父の友人から初めてのトランペットを譲り受ける。

1939 – 父親が新品のトランペットをプレゼントする。

1943 – エルクス・クラブでプロとして演奏するようになる。

1944 – ビリー・エクスタイン楽団がマイルスのホームタウン、セントルイスを訪れる。そのメンバーにはチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーが含まれていた。

 ジュリアード音楽院で学ぶという名目でニューヨークに移住する。チャーリー・パーカーの面識を得る。

1945 – チャーリー・パーカー・クインテットにディジー・ガレスピーの代理として加入する。

 ハービー・フィールズ・セクステットのメンバーとして初レコーディング。『ファースト・マイルス』

1947 – 初のリーダー・レコーディング

1948 – J. J. ジョンソン、リー・コニッツ、ジェリー・マリガン、ギル・エヴァンスを含むマイルス・デイヴィス九重奏団、ロイヤル・ルーストに出演。クール・ジャズを創り出す。

1949 – 『クールの誕生』クール・ジャズをはじまりであり、ウェストコースト・ジャズに大きな影響を与えた。

 タッド・ダメロンと初のヨーロッパ・ツアー。

1950 – アート・ブレイキーと共演、これがハード・バップを生み出すことになる。

1951 – 『ディグ』アート・ブレイキー、ソニー・ロリンズ

1953 – ドラッグ依存症を克服するためセントルイスに戻る。

1954 – ニューヨークのジャズ・シーンにカムバック。

 『ウォーキン』ハード・バップの名盤・名演。

 『バグス・グルーヴ』セロニアス・モンク、ミルト・ジャクソンと共演したクールなソロな魅力の名盤。

1955 – ソニー・ロリンズ、レッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズと「幻のクインテット」を結成。

 ソニー・ロリンズに替わってジョン・コルトレーンを加えて「第一期黄金クインテット」を結成。

1956 – いわゆる「マラソン・セッション」において、ハード・バップの聖典とされる『クッキン』『リラキシン』『ワーキン』『スティーミン』をレコーディング。

 『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』によりコロンビア・レコードからメジャー・デビュー。

1957 – ジョン・コルトレーンとフィリー・ジョー・ジョーンズを彼らのドラッグ依存症に耐えられず解雇。また、クインテットによるジャズに限界を感じる。

 『マイルス・アヘッド』ギル・エヴァンスと共演。

1958 – ビル・エヴァンスがマイルスのセクステットに参加する。

 モード奏法を採り入れた『マイルストーンズ』をリリース。

 事実上のマイルスのリーダー作であるキャノンボール・アダレイ『サムシン・エルス』をブルーノート・レコードよりリリース。(「枯葉」の名演を収録。)

1959 – モードジャズの完成形でありジャズ史上の最高傑作である『カインド・オブ・ブルー』をリリース。

1959 – 『スケッチ・オブ・スペイン』ギル・エヴァンスと共演。ロドリゴ作曲のアランフェス協奏曲の名演を含む。

1964 – ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスと「第二期黄金クインテット」を結成。

1965 – 『E.S.P.』新主流派の先駆け。

1967 – 『マイルス・スマイルズ』この作品で提示したスタイルに対して評論家によって「新主流派」と流派の名前が付けられた。また第二期黄金クインテットのメンバーや関連するミュージシャンの作品が「新主流派」(ニュー・メインストリーム)と呼ばれるようになる。

1968 – ロックのリズムとサウンドを採り入れ、ハービー・ハンコックにエレクトリック・ピアノを弾かせ、ギターにジョージ・ベンソンを呼び『マイルス・イン・ザ・スカイ』をレコーディング。

1969 – 『イン・ア・サイレント・ウェイ』タイトル曲はジョー・ザヴィヌルによる作曲。

1970 – 『ビッチェズ・ブリュー』本格的に電子サウンドとロックの要素を採用。

1972 – 『オン・ザ・コーナー』ファンクのサウンドとリズム、民族楽器をフィーチャー。

1975 – 体調不良により活動停止。

1981 – ジャズ・シーンにカムバック。マーカス・ミラー、サックス奏者のビル・エヴァンス、マイク・スターンとコラボレーションしライヴ・アルバム『ウィー・ウォント・マイルス』をリリース。

1985 – 『ユア・アンダー・アレスト』ポップスのアレンジ技法を用いる。二曲のポップソング『タイム・アフター・タイム』シンディー・ローパー、『ヒューマン・ネイチャー』マイケル・ジャクソンを収録。

1986 – マーカス・ミラー、トニー・リピューマの全面プロデュースによる『TUTU』をリリース。マーカスはプロデューサー、マルチプレイヤーとして起用されマーカスとの「デュエット」のような作品となる。

1991 – 9月28日、逝去。

1992 – 『ドゥー・バップ』ヒップ・ホップ、ラップをフィーチャー。

◻︎参考文献

『名盤できくジャズの歴史 1910s〜1990s』スイング・ジャーナル(スイング・ジャーナル社、1993)
『マイルス・デイヴィス ジャズを超えて』中山康樹(講談社現代新書、2000)
『地球音楽ライブラリー マイルス・デイヴィス』中山康樹、後藤雅洋、斎藤実、佐藤良平、杉田宏樹(TOKYO FM出版、2003)
『新書で入門 ジャズの歴史』相倉久人(新潮新書、2007)

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