無理せずお金が貯まる合理的な節約・倹約のためのブックリスト

■『節約する人に貧しい人はいない。』中川淳一郎(幻冬社)

多くの日本人は「みんな持ってるから・買ってるから・使ってるから」「自分はこのくらいの収入と年齢だからこれを買ってもいい・持たないといけない」という「常識」的感覚や「他の人より(少しは)いいモノを持ちたい」「いい生活を送っているように見られたい」という他者への見栄で物やサーヴィスを買ってお金を無駄に使っていると著者は云う。この本では、著者は幼少時の川崎での原体験から広告代理店でのサラリーマン時代〜フリーライターや経営者として経験したことまでを踏まえて、それらから学んで考えたお金や消費、仕事に対する「超個人的な金銭感覚」を持つことがラクに快適に幸福に生きていくのに大切だとしている。

著者の言っている「節約」と「金銭感覚」とは確固としたポリシーを持って徹底して無駄なものを買わない・無駄に高い料金を払わないことであり、比較で安いものを買ったり細かなランニングコストを抑えるということでもなく、他者と同じモノや他者より少しいいモノを買うということでもない。また、「一点豪華主義」や世間で一般にいわれている「コスパ」は間違っていて、無理して一点だけ贅沢品を買って他人に見栄を張ったりイイ気分にならなくていいし、コース料理などを単に量に対する価格で評価することは間違っている。本当に自分に必要で、その商品やサーヴィスを買うことで総合的な満足感や価値を得られるか根本的に自分でよく考えて吟味することが節約や貯蓄、そして豊かで余裕のある生活につながる。

著者は自分は「自分にしか関係のないこと」(家具、自動車、家、アクセサリーなど自己満足にしか繋がらないもの)には相当にケチだが、「他人様がかかわること」(カネをあまり持たない人との宴会、仕事仲間やクライアントとの飲み会、外注先に支払うべき経費、自分の仕事上の立場として払うべきカネ)にはケチではないとしている。そのことが新しい仕事やコミュニケーション、コネクションに繋がる。また、一方で、著者とは違う金銭に余裕がない「カネにうるさいヤツ」(ギャラの支払いがわずかに遅れただけでクレームをよこす、余分な経費を払わせようとする)とは関係が切れてしまい仕事が続かないと述べている。

「年収に応じた家に住む」「毎シーズン新しい服を買う」「ポイントカードのポイントを有効に貯めて使う」「大人だったら(好きでもないのに)ゴルフを趣味にする」「家具にこだわって豊かな生活を送る」といった「当たり前」を排する一方で、著者は「発泡酒は満足感が飲まないのでビールしか飲まない」という「正しい判断」による消費や「年下や女性など奢るべき相手には奢る」といった「社会通念上」必要な出費や消費は必要であり有効だとしている。著者が実践しているのは、「コスパ」ではなくて自分本位の本当の総合的な「コストパフォーマンス」を重視して一般的な意味での「節約」をしないこと、普通の「金銭感覚」を持たないことであると私は考える。根本的原理的にお金やモノとサーヴィスの消費に対する意識を変えてタダのケチではなく合理的に(リーズナブルに)徹底的に無駄をなくして節約をしてお金を持って気楽に快適に生きるための方法を示した良書。

本来、誰かと競争なぞせず、超個人的(ないしは家族の間のみ)に尺度を持っておけばよいものが「金銭感覚」であり、「経済状態」なのだ。(p.7)

本書で伝えたいのは「金銭感覚は一定にしておけ。その方が何事もラクちんですよ」ということ。(p.10)

収入が上がっても貯金が増えない理由は、ただ一つ。「見栄張り消費」をしたせいで、明らかに無駄遣いをしているためである。商品・サービス自体に対しては満足していないにもかかわらず、自分の「箔」のために代金を払っていることが多い。具体的には後に示していく。(p.19)

大事なのは大事なのは「他人からどう見られるか?」と気にしないこと、他人と張り合わないことだ。それだけで収入が少なくても無駄な劣等感はなくて良くなるし、金持ちであったとしても嫌われない存在にあることができる。(同)

目次

はじめに 節約で手に入れる「他人と比べない人生」/1 節約と衣・食・住〜見栄を張るから貧しくなる〜/2 節約と人間関係〜飲み会は断るな!〜/3 節約とお金の管理〜損得の基準を持て!〜/4 節約と稼ぎ方〜〜何を求められているか徹底して考えよ!〜/5 節約と恋愛・結婚〜パートナーは金銭感覚の合う人がいちばん!〜/終章 虚栄心を飼いならす/原体験 私の節約センスはどこで築かれたか

■『好きなように生きる下準備』中川淳一郎(ベスト新書)

「第二章 お金編 お金で行動が左右されていませんか?」で著者の節約法のエッセンスが述べられている。

一方、節約する人といのは、金銭感覚が一定で、臨時収入があろうが、一切消費行動が変わらない。(p.121)

あなたのように散財する人というのは、「収入に見合った消費をするべきだ」と考えるもっともお金が貯まらないタイプの方です。(p.122)

■『生の短さについて 他二篇』セネカ(岩波文庫)

「生の短さについて」は、仕事や享楽に忙殺されず、哲学と徳を大切にし、欲望を制御し生命ををよく活用するなら人生は長いとする。「心の平静について」は、欲望、猜疑心、未練や嫉妬に悩まされず心を平静に保つには、どんなことにも執着せず、必要以上の多くの財産や金銭を持たず、無理な栄誉や達成を求めず、程よい中庸な生活を送り自分を信頼することが大切だとする。「幸福な生について」は、幸福な生とは、自らの自然の本性に合致した生であり、どこまでも快楽を求めるのではなく、理性と徳によって自分のもっているものを受け入れ満ち足りた喜びを感じる生であるとする。最高善とは精神の調和である。

ストア哲学では理性によって欲望と感情から解放されることで心の平静を得ること、快楽ではなく徳こそが善であり幸福の条件だとした。(快楽には悪徳であるものもあり、快楽によって不幸な人もいる。)倹約によって財の使用や所有を適度な範囲にとどめ、「みずからの自然に合致した生」が幸福な生だとした。しかし、「ストイック」という単語のイメージと違って過激な禁欲は求めていない。過度な禁欲や貧困の状態では、善き理性や精神を養うことができないからである。

金銭の最高の善は、貧に落ちもせず、さりとて貧からさほど遠く離れていない額なのである。(p.99)

これ見よがしの見栄を排除し、装飾性ではなく実用性をもって物の価値を測ることに慣れよう。食べ物は飢えを、飲み物は渇きを抑えるものとし、肉欲は必然性のあるところへ向かわせることにしよう。自分の手足に頼り、服装や食物は最新の流行に合わせるのはなく、われわれの先人の風習が勧めるものに合わせることを学ぼう。自制心を鍛え、贅沢を控え、虚栄心を抑え、怒りを鎮め、貧しさを偏見のない目で眺め、質素を大切にし、たとえ多くの人がそれを恥じようとも、自然の欲求を満たすには安価で賄えるものを当て、(中略)富を運命に求めるのではなく、われわれ自身に求めるようにする術を、われわれは学ぼうではないか。(p.99 – 100)

■『エピクロス 教説と手紙』エピクロス(岩波文庫)

3つの手紙と主要教説、2つの断片集、エピクロスの生涯と哲学の解説が収められている。「ヘロドトス宛の手紙」は、自身の倫理学のベースとなるヘロドトスに強い影響を受けた原子論の自然哲学の体系が簡潔に述べられている。「ピュトクレス宛の手紙」は、自然哲学のうち特に気象学と天体と天界についての理論が述べられている。「メノイケウス宛の手紙」では、自身の倫理学のエッセンスと思慮によって善く生きることのすすめが述べられる。主要教説と断片は、文章量としては短いが、エピクロスの特に快楽主義の倫理学の考えが十分に理解できるものになっている。

エピクロスの快楽主義は「条件付きの快楽主義」であり、快楽とは身体に苦痛がなく、精神が穏やかであるといった消極的なものである。ストア哲学と違いエピクロスは快楽を「第一の善」として肯定しているが、その快楽は心身が苦痛や害悪に乱されない状態の継続的な獲得、つまり「アタラクシア=平静」であり、むしろストイック、禁欲主義的でさえある。

つぎに、自己充足を、われわれは大きな善と考える、とはいえ、それは、どんな場合にも、わずかなものだけで満足するためにではなく、むしろ、多くのものを所有していない場合に、わずかなものだけで満足するためにである。つまり、ぜいたくを最も必要としない人こそが最も快くぜいたくを楽しむということ、また、自然なものはどれも容易に獲得しうるが、無駄なものは獲得しにくいということを、ほんとうに確信して、わずかなもので満足するためになのである。(p.71)

(断片その一)二五 貧乏は、自然の目的(快)によって測れば、大きな富である。これに反し、限界のない富は、大きな貧乏である。(p.91)

三三 飢えないこと、渇かないこと、寒くないこと、これが肉体の要求である。これらを所有したいと望んで所有するに至れば、その人は、幸福にかけては、ゼウスとさえ競いうるであろう。(p.92)

六三 質素にも限度がある。その限度を無視する人は、過度のぜいたくのために誤つ人と同じような目にあう。(p.99)

■『哲学のすすめ』岩崎武雄(講談社現代新書)

現代の無反省な生活の中で忘れられたただの快楽ではない主体的な幸福の必要性、といった哲学の根本的だが実践的で高度な問題をやさしく解説する。すべての人に勧めることができる本物の良き啓蒙書・「啓発書」。

真の幸福のあり方とは何か?4章でエピクロス(快楽主義)とジョン・スチュワート・ミル(功利主義)、ソクラテス(幸福主義的道徳観)の幸福説が解説される。それらを総合して考えると節制や禁欲が快楽であり、哲学によって原理的に幸福について反省することが幸福を得る一つの方法だと理解できる。

永続的な快楽を得るために絶対に必要なことは、われわれがもはや積極的に快楽を追求しないということです。なぜなら、もしわれわれが積極的に快楽を求めていったとするならば、その快楽を得ることができない場合も出てくるはずであり、われわれはそのとき不快を感じなければならないからです。(p.74 – 75)

つまりミルは快楽のうちに高級なものと低級なものとを区別することによって、幸福と快楽とを区別しているといえると思います。高級な快楽こそ幸福なのです。(p.80)

■『豊かさとは何か』暉峻淑子(岩波新書)

■『豊かさの条件』暉峻淑子(岩波新書)

■『フランス人は10着しか服を持たない』ジェニファー・L・スコット(大和書房)

■『フランス人の部屋にはゴミ箱がない おしゃれで無駄のない暮らし』MIKA POSA(PHP文庫)

■『デンマーク・ヒュッゲ・ハンドブック 幸せになる52通りのヒント』マリー・トレル・スナベア(CCCメディアハウス)

■『金持ち父さん貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ(筑摩書房)

■『幸せとお金の経済学』ロバート・H・フランク(フォレスト出版)

■『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』マックス・ヴェーバー(岩波文庫)

■『修道院へようこそ 心の安らぎを手に入れるための11章(修道院ライブラリー)』ジモーネ・コーゾック、ペーター・ゼーヴァルト(創元社)

■『禁欲のヨーロッパ』佐藤彰一(中公新書)

■『財布のつぶやき』群ようこ(角川文庫)

■『もたない男』中崎タツヤ(新潮文庫)

■『ぼくたちに、もうモノは必要ない。 断捨離からミニマリストへ』佐々木典士(ワニブックス)

■『わたしのウチには、なんにもない。 「物を捨てたい病」を発症し、今現在に至ります』ゆるりまい(KADOKAWAエンターブレイン)

■『必要十分生活 少ないモノで気分爽快に生きるコツ』たっく(大和書房)

■『やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方』わたなべぽん(幻冬社)

■『毎日がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵(サンマーク出版)

■『新装・増補版 「捨てる!」技術』辰巳渚(宝島新書)

■『「快楽消費」する社会 消費者が求めているものはなにか』堀内圭子(中公新書)

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