『英語のしくみが見える英文法 ネイティブのセンスに迫る!』酒井典久(文芸社、2005年3月)
英語の原義や歴史的成り立ちを捉えながら英文法を解体して解説!!
基本的な文法事項を、受験英語的にただ暗記のために文法の機能や意味を解説するのではなく、「歴史的な形成過程とその結果」と「新しい発想での体系的な説明」で英語のしくみを元の形や意味に解体して解説します。
18章構成で、各章のテーマは「it構文」「~を除いてのbut」「useの表現」「簡略表現」「意味・ニュアンス」「意味の変遷」「不定冠詞のa」「ユニークな表現」「主格補語」「目的格補語」「現在完了」「分離動詞」「疑問文・倒置」「ドイツ語方言」「三単現と複数形」「フランス語の影響」「ing」「分詞構文」となっています。77のトピック(疑問)が収録されています。
「新しい発想での体系的な説明」とは、例えば、「「If it were no for」の構文は「It~that」の強調構文の前半部分を仮定法過去で強調したものである」のように、構文や品詞の元のかたちに解体して解説します。
「歴史的な形成過程とその結果」の解説とは、「「しかし」のbutは「~を除いて」のbutから意味が派生したもの。」「「be used to~」は、「慣らす」の意味で使われていたuseが受動態だけ残ったものである。」「fastの「しっかり」と「速く」、evenの「~でさえ」と「平らな、均一の」の関係の歴史的な変遷」など、英語の語源や表現のルーツを紹介。
後半では、古英語(アングロサクソン語)へのドイツ語・フランス語の影響が解説されます。「ドイツ語が英語にもたらした「三単現のs」と所有格の’sへの影響」「フランス語のdeの表現法の英語ofへの影響」「英語の動名詞形の誕生とフランス語のen+~ antの影響」のように、「三単現のsが複数形と同じかたちなのか?」「動名詞になぜ進行形の意味がないのか?」といった英語に対する素朴な疑問を解き明かしてくれます。
筆者は高校教師で「高校生にも読んでもらいたい。」としていますが、実際にこの本に書かれていることを覚えて実践で役立てるのは少し難しいと思います。もちろんに英語に対する理解を深めてはくれますが内容は少し高度です。「ネイティヴのセンスに迫る!」という副題ですが、実際のネイティヴが本書に書かれている知識がある謎です?でも、この本を読むことで「三単現のsは、韻を踏むためについている」などの知識を得ることで、ある程度「センスに迫る」ことは可能だと思います。
「文法の基礎」が書かれているわけではないので、文法をある程度マスターされている方が英語力や理解力を高めるために読む価値はおおいにあります。それなりにおもしろく読める本です。
Goodbye!! See you again!!
『高校英語を5日間でやり直す本』小池直己 佐藤誠司(PHP文庫)
『高校英語を5日間でやり直す本』小池直己 佐藤誠司(PHP文庫、2006年9月)
『中学英語をやり直す本』『中学英語をやり直す本<パワーアップ編>』の続編です。
2ページでひとつのTipsが100個収録されています。20項目を5日でマスターする想定になっています。
「高校英語を5日間で」といっても受験英語がマスターできるわけではなく、日常的なコミュニケーションを意識してそれに役立つ要素を習得することを目的にしています。
文法を基礎から説明するのではなく、構文や品詞の役割を取り上げて、意味の理解や実際での使用を重視して説明します。
例えば、「I prefer my coffee black.」と「I prefer black coffee.」といったように表現によるニュアンスの違いや完了進行形、過去完了形、未来完了形の意味や機能が詳しくわかりやすく解説されます。
基本的な文法事項は説明していないやや高度な内容の一冊です。英語の表現力・理解力を高めたい、TOEIC対策での文法の知識の補完など、英語の能力をアップグレードされたい方にオススメです。
Goodbye!!
Cheers!!
『中学で英語ぎらいになった人のための日本一やさしい英文法』長沢寿夫 明日香出版社
『中学で英語ぎらいになった人のための日本一やさしい英文法』長沢寿夫(明日香出版社、2000年4月)
英文法を基礎の基礎から簡単な作文まで手とり足とり解説!!
全体は文法のルールを学ぶ「基礎編」とその知識を文章を書くことで応用する「応用編」に分かれます。
基礎編は名詞、代名詞、be動詞、形容詞、副詞、前置詞、接続詞の18のLessonで構成され、応用編は日本語と英文の構文の変換、疑問文、否定文、時制、動名詞、疑問詞の13のLessonで構成されます。
ひとつのLessonは各6ページで、1ページ目で文法の語句や例文の提示、2~4ページ目が解説、5ページ目がドリル、6ページがその答えという構成になっています。
カタカナで読み方を表記していますが、独特の表記法で、lとr、aiなどを工夫して表現しています。
受験英語的なルールを覚えて機械的に問題に答えるための英文法ではなく、意味や英語の発想を重視した実践的な表現のための英文法です。英語の基礎だが初心者が覚えきることの難しい、aとtheの違いや単数形と複数形、可算名詞と非可算名詞などの発想の違い、副詞や形容詞とは何か、といったことから表現を想定して平易な言葉でかなり簡潔で必要最小限かつ丁寧に説明します。「日本一やさしい」というのは本当かもしれません。ただし、図を使った説明や例えば現在完了形の詳細な解説や多様な例文、英語の文化的な背景の説明などは一切ありません。だからこそ、本当にやさしいので、挫折せずに難度も読み通して内容を習得できます。
基礎編のドリルは日本語の例文があって穴埋めをするかたちで、全くひねりがなくかなり簡単ですが、基礎を徹底的に学ぶには有効だと思います。
「場所をあらわす前置詞at、in、on」の使い方の解説や「動詞や前置詞はグループにならないが、他の品詞はグループで考える」という記述が個人的には参考になりました。
応用編の日本語と英語の文法構造を解体したり、対等にある要素を比較しながらのかなり丁寧な英作文の解説は、英語での書く・話すと表現が苦手な方や英語から長く離れていた方にとって必読です。
基礎から手取り足取りといった感じで英文法が学べますが、「知識の連関はあいまいだが一応英文法の全体を学んだことがある」ということが前提にされている感じで英文法の復習を想定して記述された参考書です。ですが、中学で英語を全く学ばない方はいないので、すべての英語の基礎をしっかり確認・復習されたい方にオススメです。
Cheers!!