『3ヶ月トピック英会話 ハートで感じる英文法』大西泰斗、ポール・マクベイ(NHK出版)

『3ヶ月トピック英会話 ハートで感じる英文法』大西泰斗、ポール・マクベイ(NHK出版、2006年1月)
文法のイメージをつかんでネイティヴ感覚でのフィーリングの理解を!!
タイトルの「ハートで感じる」の”ハート”とは文法事項の基本イメージ(核)、そして、文法事項の持つ感覚(キモチ、フィーリング)のことです。本書では、ネイティブが潜在的に持っている文法のイメージやフィーリングを解説します。
全体の構成は様々な文法事項を取り上げた12のLessonに分かれます。
各Lessonのトピックは以下のとおりです。「前置詞」「定冠詞」「thatの関係代名詞」「現在完了」「進行形」「未来系」「助動詞」「過去形」「仮定法」「英単語のイメージ」「構文、語法、文型とイメージ」
各Lessonは、以下のような公正になっています。「感じているかい?」では、例題を出して文法が持っているニュアンスの理解を確認します。「従来の学習法」では、学校英語・受験英語での構造や規則の解説による文法の理解、イメージではなく暗記による文法の内容の網羅的な理解の問題点を指摘します。「基本イメージをつかめ」その文法事項の基本的なイメージを例文とイラストで紹介します。「基本イメージを使いこなせ」では、基本イメージを発展されて、その文法事項の応用的なイメージや使い方を例文やイラストを挙げて解説します。「もっとネイティヴに近づく!」では、さらに高度な表現の方法を解説します。「最終確認テスト」では、Lessonの内容を確認する英文和訳の問題が3問出されます。「クイズ☆前置詞と遊ぼう」では、前置詞の意味を比較するクイズと、そのイメージの解説があります。
この本では従来の文法構造の理解や逐語訳での英語理解から脱却して英語の豊かで繊細な感覚を感じとることを目的としています。「thatの基本イメージは”指し示す”」などのように、基本イメージによる整理され発展性があり統一性のある実践的な文法の理解を紹介しています。従来の文法書と違い、文法のフィーリングが解説されているので、表現の場面で具体的にどういうふうに使えばいいかということがわかります。
すべての文法事項を網羅しているわけではありませんが、重要で日本人が誤解しやすい文法事項の本来の意味を詳細にわかりやすく解説してあるのが特徴です。
レヴェルは英語の基礎が一通りできている中級者向けです。
英語の世界をより深く理解したい人、よりネイティヴ感覚で”正しく”英語の表現がしたい人にオススメです。
Goodbye!! Cheers!!

『英文法のトリセツ じっくり基礎編 英語負け組を救う丁寧な取扱説明書』阿川イチロヲ(アルク)

『英文法のトリセツ じっくり基礎編 英語負け組を救う丁寧な取扱説明書』阿川イチロヲ(アルク、2005年2月)
各章(STEP)の構成と内容は以下のようになっています。
「英語のカタチ」…品詞の種類と区別、be動詞・一般動詞の性質、代名詞
「否定文・疑問文のカタチ」…否定形、疑問形のつくり方
「動詞が英文のカタチを決める!(一般動詞編)」…英語の語順、前置詞、自動詞と他動詞の見分け方
「動詞が英文のカタチを決める!(be動詞編)」…be動詞と文のつくり方
「動詞のカタチ(時制)と副詞」…過去形と過去形の否定文・疑問文、英語の時制の感覚
「アレも副詞、コレも副詞?」…様々な副詞とその使い方
「前置詞が英語を見えにくくする!」…前置詞を使った表現と語順
「掟破りのカタチ」…等位接続詞や命令形、勧誘の表現など英語の基本ルールを破る表現のカタチと意味
「助っ人動詞?」…助動詞の使い方と意味、助動詞を使った否定文・疑問文
「「疑問詞」ってなーに?」…疑問視の使い方と様々な表現
「動詞に-ingがくっついた!」…進行形のつくり方とその時間の感覚
「難度Sの文のカタチ(前編)」…五文型、SVOOのカタチと注意
「難度Sの文のカタチ(後編)」…SVOCのカタチ、英語の文の基本構造
本文では、まず問題を提示して講義形式で解説をしていきます。重傷事項はattentionとしてまとめられています。
各章の終わりには、「「ふくしゅう」宿屋」として、3問の問題が二つと復習の解説があります。
「日本語と英語では、文をつくるルールが違う」ということを見直して、「品詞とは何か?」「品詞の区別の仕方」から始めて5文型と「英語の文の構造のあり方」まで説明します。品詞やbe動詞といった本当の基礎からくどくどと英文法の原理を説明します。図などを使って簡潔に説明するのではなく、講義形式で重要な部分を繰り返しながら言葉でじっくり説明していきます。日本語の文と比較しながら、「主語の名詞の後には動詞が来る」「日本語には前置詞が無い」「形容詞がbe動詞の結論になることがある」といったように英文の構造を執拗に解体して説明しているのが本書の解説の特徴です。
英語が大の苦手で高校中退で特に英語の専門家ではなかった筆者の立場からこの本は書かれています。「中学英語がよくわからなかった」「今でもよくわからない」という人が読んだとして英文法が理解できるように工夫されています。
しかし、be動詞を「一般動詞が入らないときに使う代用品動詞」とする、「主格は『…は、が』という意味、所有格は『…の』という……」「進行形は動詞の性質を持った特別な形容詞」と説明する、など、表面的な理解や一応の理解としては間違ってはいないが、正確で本質的・専門的な英語の理解としてはどうなのか?というような記述が結構あります。
英文法をある程度理解している方には、文法用語をあまり使わないのでかえって理解しにくかったり、説明がくどかったり、「トリセツ」と表記している割には構成も記述も整理されていない感じがあったりするかもしれません。
英語ができるけど英文法の知識を再確認したり整理したい、という方には向いていない本です。本書は、本当に英語の基礎の基礎の原理の理解を必要としている方のための本です。
Goodbye!! See you again!!

『NHK新感覚☆わかる使える英文法 文法がわかれば英語はわかる!』田中茂範(NHK出版)

『NHK新感覚☆わかる使える英文法 文法がわかれば英語はわかる!』田中茂範(日本放送出版協会、2008年2月)
主体がどう世界を表現するかという観点から英文法の時間・空間の感覚や意味の力学を解体して解説!!
直接的な「表現のためにすぐ使える解説」というよりも、文法事項が持っている時間と空間の感覚、言葉の意味の力関係を徹底的に解説します。
全体の構成は「コトの世界を語る:動詞の文法」「モノの世界を語る:名詞の文法」「状況を語る:副詞の文法」それらの組み合わせと総合について解説する「チャンキング:構文と配列」に分かれます。全体の半分が動詞で残りの3つのパートが1/3づつといったページ配分になっています。
それぞれのパートには複数のチャプターがあり、3つのセクションで構成されます。各パートの始めにはパートの内容を概観するOverviewと終わりにSumming-upとして各パートで学習した内容をまとめてあります。
「表現主体が世界を以下に表現するか」という視点から英文法を視る筆者が「表現英文法」と呼ぶ英文法で書かれた文法解説書です。文法には意味的な動機づけがあると考え文法を説明していきます。それによって、文法を意識的に「使い分ける」ことと「使いこなす」ことを目指します。
英文法の持つ感覚を主体の側から解きほぐして、ニュアンスやシチュエーションの違いによる意味の違いを理解することで、「be going toがなぜ未来をあらわすのか?」「他動詞とそれに続く前置詞の有無/自動詞」「to do不定師と動名詞のニュアンスの違い」といった構造の解説だけでは意味がよくわからない文法事項がなぜそういった形になるのか、意味になるのか、理解できます。「can/be able to」「be going to/will」「would/used to」の意味の違いを使用者の立場から解説して、学校英語では単純に交換可能だとされるそれらの使い分けを明晰に説明します。
「対称の捉え方の5つの名詞の型の違い」「形容詞の並べ方(冠詞の有無や単数形・複数形)」の説明は見事です。
最終チャプターの「語句の配列とチャンキング」では、英語のサブジェクティブな性質と強い線状性の構造といった英語の本ついて解説されていて興味深いです。
1100円という値段やソフトカバーの装丁のイメージとは違ってかなり高度な内容の本です。筆者の専門である認知言語学の知見に基づいて書かれた本で、少し哲学や記号論の本を読んでるような気分になります。この本を読んでると抽象的な思考力や哲学的な感覚が高まる気がします。
半年の語学番組のために筆者が作成したテキストを凝縮して再構成したのが本書です。値段の割に情報量が多く、コストパフォーマンスは非常に高いです。一気に読むのでは、毎日、1チャプターづつ深くしながら読むこととオススメします。
筆者も書いていることですが、この本の知識を本当に身につけるにはただこの本の内容を覚えるだけではだめで、この本に書いてある内容を実際の表現の中で実践する必要があります。しかし、この本がないとノンネイティヴが不定師と動名詞、can/be able toの使い分けや形容詞の並べ方傾向を理科して意識して使用できないと思います。
学校英語ではないコミュニケーションや表現のための英語を目指している方には必読の一冊です。すごくいい本です。