『イギリス英語Total Book』カール・R・トゥーヒグ(ベレ出版、2001年6月)
発音と文法、イギリス文化が丁寧に解説された本格的”ブリティッシュ・イングリッシュ入門”書!!
イギリス人の著者が書いたブリティッシュ・イングリッシュとイギリス文化を幅広く基礎から徹底的に知るための一冊です。
全体の構成は「アメリカ英語VSイギリス英語」「イングランドの言語と文化」「Bits and Bobs半端物」の3つのパートに分かれます。
Part 1「アメリカ英語VSイギリス英語」では、ブリティッシュ・イングリッシュとアメリカン・イングリッシュを比較しながら、ブリティッシュ・イングリッシュの特徴を紹介します。文法の違い、スペリングの違い、発音の違い、ヴォキャブラリーの違い、異義語、イディオムの表現違いがそれぞれのチャプターで紹介されます。すべて英/米両方のの例文や英/米での意味の違いが掲載されています。
Part 2「イングランドの言語と文化」では、まずイングランドの歴史や起源を紹介します。次に「食べ物」「飲み物」「天気」「お金」「スポーツ」「宗教」「政治」「教育」「階級制度」「ギャンブル」「テレビ」「社交」「体」「セックス」の各チャプターで、そのテーマに関する文化的な解説や話題、それに関連するイディオムとスラングが入った多くの例文を紹介します。
Part 3「Bits and Bobs半端物」では、シェイクスピアの英語、コックニー、ヨークシャーの北部方言の紹介と最後にイギリスでよく使われる単語や短いフレーズ、スラングの一覧があります。
CD1枚付きです。Part 1では、ブリティッシュ・イングリシュとアメリカン・イングリッシュのネイティヴ・スピーカーによって、それぞれ英/米のフレーズや単語が読まれていきます。英/米での発音やイントネーションの違いが直接比較できるところが優れています。Part 2と3では、ブリティッシュ・イングリシュのネイティヴ・スピーカーによって、例文が読まれます。Part 3のコックニーの例文のヴォリュームが沢山あり、たくさんのコックニーのナレーションを聞くことができます。
他のブリティッシュ・イングリッシュの解説本とは違い、フレーズや会話をいきなり示すのではなく、発音とイントネーションやアクセントの違いが十分に丁寧に解説されている点が特色です。また、コラムが沢山あり、イギリス文化の紹介本としてもおもしろい本です。
本書は、イギリス英語の発音や文法の解説が丁寧にされた「ブリティッシュ・イングリッシュ入門書」ですが、「英語入門書」ではありません。ある程度英語力がないと特に後半の内容には付いていけないと思います。ですが、英語の内容に付いていけなくてもイギリス文化の読み物として十分おもしろい本です。
BBCなどを聞くために”ブリティッシュ・イングリッシュに入門”したい方、イギリス文化に興味がある方に推薦します。
Goodbye!! See you again!!
『イギリス英語会話 クイックレファレンス』早坂信、木村慧子、アレック・マッコーレー(第三書房)
『イギリス英語会話 クイックレファレンス』早坂信、木村慧子、アレック・マッコーレー(第三書房、2002年9月)
フランスで発売された英会話ガイドを日本人向けに作り直したものです。場面に応じて沢山の例文が取り上げられます。レファレンスの名前の通り、解説本ではなく、会話の”フレーズ集”の性格が強い本です。
全体的な構成は、基本フレーズ集である第1部「コミュニケーション行為」と、ダイアローグ集である第2部「会話」に分かれます。
第1部では、「交際」「情報を求める/情報を与える」「行為について」「態度を明らかにする/感情を表現する」「より高度なコミュニケーションのために」「ビジネスで」のチャプターに分けられ、そのチャプターの中に沢山の具体的な112のセクションがあって、そのセクションの中でいくつかのシチュエーションや表現する対象に分かれて、そこでいくつかのフレーズが紹介されます。フレーズは交換可能なものが縦線で区切られていて並列でいくつも書かれていて、多くの表現を覚えることができるのが本書の特徴です。
第2部は、「出会い」「住まい」「買い物」「サービス業」「お金」「食事」「交通手段」「余暇」「旅行」「郵便と電話」「健康」「仕事と職業」「警察」のチャプターで構成されていて、その中に3~6の具体的なシチュエーションを取り上げた50のダイアローグが収録されています。ダイアローグは、左ページに英語、右ページに日本語訳が対称に掲載されています。ひとつのダイアローグは短いもので半ページ、長いもので1.5ページほどあります。ダイアローグには「ていねいな話し方」「ふつうの話し方」「くだけた話し方」の別があって、セクションのタイトルの横に表記されています。ダイアローグに解説はありませんが、第一部のフレーズのナンバーがふられていて、解説を参照することができます。
CD一枚付属で、第2部のダイアローグのナレーションが収録されています。ブリティッシュ・イングリッシュのネイティヴ・スピーカーたちによってナレーションがされます。ナレーションはナチュラル・スピードで、tや母音の発音がキツいことろをはじめとしてブリティッシュ・イングリッシュらしいメリハリのある発音が聴けます。
もとはフランスで出版された本なので、ブリティッシュ・イングリッシュでフレーズが掲載されています。(ヨーロッパでは、ブリティッシュ・イングリッシュが教育されますし、ヨーロッパ人の話す英語はブリティッシュです。)元々、ブリティッシュ/アメリカンの差異を解説するために作られた本ではありません。ブリティッシュ/アメリカンの表現や発音の違いやイギリスの文化的な特徴は文中で注としてその都度指摘されます。どれがブリティッシュなのか明示されてないのものもあります。
「イギリスの文化の解説」のための本ではないので、ダイアローグは、フランス人のイギリス旅行やイギリスへの留学を描いた一部のもの以外は、特にイギリス文化を踏まえたものではありません。そういう意味では多く方に対応できる本です。
”ブリティッシュ・イングリッシュの解説書”ではなく、会話表現のリファレンスとして優れた本がヨーロッパで出版されたものなのでブリティッシュ・イングリッシュ対応になっている、といった感じの本です。
会話表現を沢山集めたリファレンスなので初心者向けの本ではなく、中級者以上に向けて作られた本です。”ブリティッシュ・イングリッシュの基礎”についても書かれていはいません。
ブリティッシュ・イングリッシュの基礎を理解している英語力のある方で、イギリス旅行や仕事での滞在の予定があるような方にオススメです。
大量のフレーズが収録されているのでコストパフォーマンスは高いです。
Goodbye!! Cheers!!
『LIVE from LONDON』岡田久恵、ジャパンタイムズ(ジャパンタイムズ)
『LIVE from LONDON』岡田久恵、ジャパンタイムズ(ジャパンタイムズ、2003年5月)
すべてロンドン周辺で収録された現地録音の生きたブリティッシュ・イングリッシュが聴けるリズニング教材です。
全体の構成は「5泊7日のイギリス旅行」をイメージしてDay1~5という5つのパートに分かれています。それぞれのパートは2~3の「Action」(行動)に分けられます。
各Actionの構成は以下のようになります。「Key Words」は本文スクリプトに登場する特徴的なヴォキャブラリーとその意味や背景知識を紹介します。単なる”語の意味”だけでなく文化的な内容が紹介されているところが優れています。「Do you follow?」では、5個の質問でスクリプトに対する理解を問います。「イギリスらしさを感じてみよう」では、本文に登場したブリティッシュ・イングリッシュの表現がイギリス英語とアメリカ英語の違いに基づいて解説されます。「これであなたもイギリス通!」では、基本的なブリティッシュ・イングリッシュの特徴的な表現やイギリスの文化に基づいた表現の解説、基礎的なイギリス文化の解説をします。たまに、「Location Report」として英国政府観光庁、ホテル、ショップなどのガイドや「Did you know?」としてパブやアフタヌーンティーなどの英語での歴史や基礎知識の紹介、各Dayにひとつ「Tube Quiz」としてロンドンの地下鉄のナレーションを用いたクイズが収録されています。
本文スクリプトの内容は、以下のようになります。
Day 1「Take off to London!」飛行機の機内アナウンス、ホテルのチェックイン手続き、パブでの料理についてのインタヴュー
Day 2「Explore the city!」観光案内所BTAでの会話、ワイナリーでワインを購入する際の会話、観光名所のウォーキング・ツアーのガイドのアナウンス
Day 3「Feel It!」BTAで演劇やフットボールのチケットを買い求めたりドレスコードや交通機関について聴く会話、スタジアムでチェルシーのゲームのチケットを買う時の会話とスタジアムのガイドのアネウンス、マーケットでヴィンテージのスエードのジャケットを買う時の会話
Day 5「Never-ending jorney」BTAで小旅行のための鉄道のチケットを予約する時の会話、電車の中でのナレーション、湖水地方のホテルのシェフへのインタヴュー
Day 5「Better yourself!」モンブランでボールペンとポーチを買う時の店員とのやりとり、フェントン・ハウスについての観光局の職員との会話、語学学校での会話
CD一枚付きです。CDは各トラックの間隔に合図としてチャイムが入っている以外は、余計な英語・日本語のナレーションは入っていません。ナレーションはすべてロンドン周辺で収録されたもので、言い淀みや繰り返しがあるリアルでブロークンな部分もあるブリティッシュ・イングリッシュが聴けます。会話はナチュラルスピードで、ニュース英語などとは違い”聴きやすい”ように配慮されているわけではない、プロの話し手ではない現地の人々の日常の言葉が聞けます。また、生活音のノイズもそのまま収録されていてリアル感を高めています。
内容はすべてイギリスの文化に関連するもので、内容的にも飽きずに読んだり聴いたりすることができます。「イギリス文化」についての本としてもオススメです。スクリプトは本の後半にまとめて収録さてていて、CDのナレーションとリスニングを目的にした本ですが、読み物としても面白いです。
この本は、初心者向けの本ではありません。ブリティッシュ・イングリッシュの発音や文法の”基礎”については書かれていませんし、CDの音声のスピードも早く、発音も初心者向けの聴きやすく配慮されたものではありません。基礎的なリスニングの能力が完成している方ではないと教材のレヴェルについていけません。でも、個人的にはアメリカン・イングリッシュより大分聞き取りやすいです。
イギリスとブリティッシュ・イングリッシュの理解を深めたい、ブリティッシュ・イングリッシュのリスニングの仕上げをしたい、BBCをリアルタイムで聴きとれるようになりたい、イギリス旅行のための準備がしたいといった方にオススメです。
Goodbye!! Cheers!!