社会学用語集パート7 ま行

<マーケット・セグメンテーション>
企業の意図を市場ニーズと的確に一致させるため、市場を細分化し絞り込むこと。

<マーケティング>
大量生産と大量消費のメカニズムを円滑に回転させるために、財とサーヴィスの全流通過程を生産者あるいは流通機構の手中に管理する、企業経営の組織的活動。その基本は、消費者に対して財とサーヴィスを購入したいという欲望を起こさせることである。現代の消費者は、購買に際してかなりの選択の自由をもっているが、しかしマーケティングは、あらゆる手段を用いて、知らず知らずのうちに消費者の欲求を操作し、生産者ないしは流通機構の設定する経営的な目標に向かっその欲求を喚起し活動するという、消費者の欲求管理を行おうとする。

<麻酔的逆作用>ラザーズフェルド、マートン
マス・メディアからの大量情報に接触する人々が、受動的に情報を吸収するだけで満足し、社会的行動への能動的参加のエネルギーを喪失してしまう状態。

<マルチカルチュラリズム>
一社会の統合を一元的な立場から追求するのではなく、文化・宗教・生産様式の多様性があっても可能とする立場。カナダ、オーストラリアでは国家政策となる。その一方で人種・エスニック集団の自立化と社会の分裂を危惧して、市民文化や普遍的権利を強調する意見も少なくない。

<マン=マシーン・インターフェイス>
人と機械の情報交換の「仲介」装置。自動車・航空機のハンドル、計器、投票制度、市場制度など。

<民主的パーソナリティ>アドルノ
民主主義的イデオロギーをもつパーソナリティ型。自発的で、新しい事態にすぐ対応でき、責任感が強く、自己の使命をよく見定めることができる。

<無規制的分業>デュルケーム『社会分業論』
有機的・調和的関係の失われた近代産業社会の病理形態。

<無駄の制度化>
厖大な国防支出、設備陳腐化のスピードアップ、宣伝・広告費など、再生産過程には直接役立たないが、商品やサーヴィスの吸収を促進するという意味で、私的資本の論理のなかで一種の合理性をもって成立している無駄。現代資本主義の安定と繁栄は、無駄の制度化によって維持される。
疎外された消費行動が生み出す大衆社会状況の一側面。大量生産・消費のメカニズムのもとでは、消費行動は、商品の迅速なモデル・チェンジ戦術や、広告の欲望合成作成に規定され、消費者自身も他人志向型の性格や地位象徴を求める願望を強め、無駄の制度化ともいうべき使い捨て文化をつくる。

<メセナ>
芸術・文化の振興を支援する活動。

<メタ言語>
メッセージの解釈を一義的に指定しなければならない場合や、解釈が不安定になることが予測される場合、メッセージの含意を説明するために付与されることば=記号。

<目的合理性>ヴェーバー
一定の目的設定が行われた場合、その達成のための手段選択、操作可能でない事物や他者がつくり出す「条件」への配慮、行為の付随的結果の予測と統制が合目的に行われること。

<目的動機>シュッツ『社会的世界の意味構成』
前もって考えられた企図にもとづいていま進行している行為を未来から規定している、その行為によってもたらされるべき事態。

<目的論的説明>
社会的行為や現象を分析・説明・理解する場合に、因果論的にではなく、何らかの目的のためになされ、ないしは生じたものとして説明する方法や態度。

<目標指向>
未来の望ましい状態を目標として設定し、現在の状態とその目標状態との間のズレを縮小していく働き。

<物の体系>ボードリヤール
現代の消費社会では、モノは欲求対象としての物財的な生産物ではなく、消費という体系的な記号操作活動のなかに組み入れられる<記号>となっている。記号としてのモノは相互に、非本質的で周辺的な差異のシステムを構成し、消費者の社会的地位をコード化し、彼に「個性」を賦課する。モノの記号性はモノについてのコノテーション的な言説としての広告や、生産よりも消費を先行させるクレジットによって促進させられる。

<模倣>タルド
他の個体の行動を見て、他律的にか自発的に類似の行動を取ること。社会関係を成り立たせる結合性ないし同調性を可能にする機能を営む。社会を発明の模倣によって拡充する現象と捉え、社会現象を発明と模倣の心理的事実で説明した。

<モラル・パニック>コーエン
青少年の些細な問題行動に対して、マスコミ、地域社会、警察等が過剰に反応すること。イメージとしての問題が増長され、それが社会的脅威と認識され、社会はパニック状態に陥る。

社会学用語集パート6 は行

<バイアス>
ある特定の人種や集団に対して、特定の行為や敵意を示す心理的傾向・見解。ある結論を導き出すための材料が適切ではなく偏っていること。

<恥の文化>ベネディクト『菊と刀』
日本的な文化の型。外面的な制裁に頼って善行がなされる。

<パーソナリティ市場>ミルズ『ホワイト・カラー』
現代社会では人も商品となり、商品の交換価値のように、人の価値が他人の評価と判断で決定される仕組み。

<パーソナル・インフルエンス>ラザーズフェルド
選挙の投票行動において、マス・メディアによるキャンペーンよりも、家族・友人・仕事仲間による説得のほうが強い影響をもつ。パーソナルな影響は、日常の何気ない接触により、個別的具体性をもって結果を直接確認しながら行使される点に強さがある。

<ハビトゥス>ブルデュー
社会的過程のなかで習得され、身に着いた一定のものの見方・感じ方・振舞い方などを接続的に生み出していく性向。学習行動、言語行動、芸術の享受、社会的交換など多くの行動において、ハビトゥスが大きな役割を演じているとし、文化再生産のメカニズムを説明した。

<パラダイム>クーン
科学者集団が共通に活用する概念図式・モデル・理論・用具・応用の全体。科学研究の伝統をつくる。

<パレート最適>
財の配分がなされる時、何人にも不利益ではなく、ある特定の個人の利益を高めるような財の再配分が不可能な状態。

<バンドワゴン効果>ボウランド
ある意見が大多数の人に支持されているということだけで、その意見を受け入れる傾向があること。

<ピア・グループ>

<皮下注射モデル>
マスコミの効果が、即効的に現れること。効果研究では、起こりにくいことだとされ、クラッパーは現象的なアプローチを提唱している。

<批判理論>アドルノ、ホルクハイマー
<伝統的理論>=現存社会秩序の再生産につながるかたちで諸経験を組織づける専門諸科学に対し、所与の経験的事実や特殊的理論の絶対化を拒否するとともに、現実から切り離されたユートピア的思考をも排除する弁証法的・批判的な社会認識の立場。

<非物質文化>
人の行動様式や観念など、人為的ではあっても、物的実体性をもたないため触知することのできない文化の要素。

<フェミニズム>
女性の権利の確立を志向する思想または男女同権主義。男女間の諸権利や地位の不平等が、女性の男性への隷属をもたらしているという認識に立ち、女性解放のために既成の社会構造を変革していこうとする運動論。

<フォークウェイズ>
ひとつの社会の成員が生存競争のために諸欲求を充足させる過程で、彼らのあいだに無意識的・自然発生的に現れる共通の固定的な行動様式をさす。伝統・慣習を通じて世代から世代に継承される間に、その順守が集団の秩序を守るとみなされて社会規範の力をもつ。

<フォーマル組織>
成員個人の主観的な感情や態度からは独立して、組織図や成文規則によって決められ、それにもとづいて組織目標を目的合理的に達成しようとする組織。

<複製文化>
オリジナル文化の「いま・ここに」しかない一回性・非代替性に対して、コピー文化は反復性・大量性=大衆性を特徴とする。しかし、オリジナルが存在しなかったり、存在していてもコピーの原型にすぎない場合、単純なオリジナル=コピー論は通用しなくなる。複製技術の開発と普及は、オリジナルとコピーの境界を不分明にし、コピーの自立性をかえって保障し、確立させる。

<物質文化>
道具、機械、交通・通信手段、建造物など人間の自然環境に対する適応の成果もしくは所産としての物質的事物、発見や発明、伝播によって蓄積され発達したもの。

<物象化>マルクス『資本論』、ルカーチ、広松渉
人の社会的関係が歪曲され隠蔽されて、モノとモノとの関係やモノにそなわる性質としてあらわれる事態。ルカーチはプロレタリアートの意識が疎外され客体化される事態と解した。広松渉は、後期マルクスは人間の本質を社会関係の総体と捉えなおし、本質主義の立場を脱却し、物象論へ移行したとした。

<物神崇拝>マルクス『資本論』
資本主義的生産のもとでは人と人との関係がモノとモノとの関係としてあらわれ、社会関係が物象化され物象的依存関係に変質しているいて、人の労働の生産物にすぎない商品・貨幣・資本などの物質があたかも固有の力をもつ。人は商品・貨幣・資本などを信仰・崇拝の対象とし、これにひざまずくことになる。この事態は、資本主義社会の日常的宗教となっている。

<不等価交換>エマニュエル、アミン
途上国の一次産品と先進国の工業製品とが、同じ労働時間で生産されながら異なる価値を付与されることにより、商品交換を通じて一次産品から工業製品へ価値移転が生じ、低開発をもたらす。

<フリー・ライダー>オルソン
コストを負担せず恩恵のみを教授する人々。共通利益が存在しても、利己的な個人は、強制や貢献に応じた特別な報酬がない限り、負担をさけようとする。

<文化決定論>
個人の人格・行動様式が、属する文化により規定されるという考え方。デュルケームは文化の外在性・拘束性を重視する。

<文化資本>ブルデュー、パスロン
個人や集団の社会的活動の場において有する文化的有利さの可能性の大小。家族その他の社会的環境のもとで伝達される文化的財・知識・言語能力、その他種々のハビトゥスによって構成。

<文化相対主義>
文化的現象を認識したり記述したりする際、対象への価値関与を避け、当の現象の意味を所与の社会的・文化的意味のなかで評価する態度・立場。

<文化遅滞>オグバーン
文化の変化・発展に際して、その要素もしくは内部領域の間で変化の速度に相違がある現象。物質文化と非物質文化ないしは制度的文化の間には文化遅滞があり、社会生活に不適応・混乱・不安をもたらす。技術的文化、社会的文化、イデオロギー的文化に区分すると、技術的文化が最も早く新しいものに移行し、イデオロギー的文化は古いものをより強く残す。

<文化的再生産論>
再生産の過程を、学歴取得など文化的要件の面から明らかにしようとする。

<分衆>
他人と同じ生活に不満をいだき、自分なりの価値観や生活意識を探す人々の群れ。

<ヘゲモニー>グラムシ
一つの階級が他の階級に対して行使する「イデオロギー的・文化的支配力」。支配階級のそれが他の階級にも合意され共有されていることが、社会=経済システムを安定させる要因である。

<弁証法的唯物論>マルクス
客観的事物の発展法則として、対立物の統一と闘争、量的変化から質的変化への移行、否定の否定、が三原則となる。また、本質と現象、必然性と偶然性、現実性と可能性、普遍と特殊などの関連を明らかにした。

<法文化>
社会の法制度・法過程の特徴のうちで、固有の文化価値の伝統によって規定されると考えられるもの。日本のほうの利用・運用の融通性の重視は、文化的伝統によって説明されてきた。

<ポストフォーディズム>
消費需要の多様化・細分化、労働の単調化による意欲低下に対応するため、ME機器など電子技術を装備した生産設備により工場全体を自動制御化し、人の労働を節約し、フレキシブルな生産工程において需要の多様化に応じた多品種少量生産を効率的に行い、企業業績の向上を図ること。

<没意味化>ヴェーバー
人の行為に付与された当初の意味が次第に埋没し、その意味や理念が抜け落ちていくこと。

<ホット・メディアとクール・メディア>マクルーハン
情報の密度が高いメディア=ホット・メディア(ラジオ、映画、写真)は、多くが与えられているため、受け手が関与できる部分が少ない。情報の密度が低いメディア=クール・メディア(電話、テレビ、コミック)は、受け手の参加の度合いが少ない。

<ホッブス問題>パーソンズ『社会的行為の構造』
社会が「万人に対する万人の戦争」なら、どのようにしたら個人間の闘争をやめさせ、社会システムの安定的な秩序をつくりだせるか。その解決法は、共通の価値体系をパーソナリティに内面化させ、その価値体系を社会システムに制度化させることである。

<ポトラッチ>
膨大な量の食物の消費、貴重な財の贈与、それらの破壊によって、気前のよさを示す。社会的地位を示すため、競争的に行われる。

<ホワイト・カラー>
専門的職業、技術的職業、管理的職業、事務的職業、販売的職業などに属する非現業部門の雇用従業者。

社会学用語集パート5 な行

<内集団と外集団>
社会的関係には親族・隣人・取引などの関係を契機として献身や愛情の対象となり、「われわれ」として捉えられる強い結びつきをもつ人々と、結びつきの弱い、あるいは競争・闘争のなどの対立関係にあり「彼ら」「よそもの」として捉えられる人々に分化する。

<内部志向型>リースマン
共同体的社会関係を基盤とする伝統的社会の停滞性をその内側から打破し、近代的な社会諸関係を主体的に形成してきた諸個人の社会的性格。フロムの<貯蔵的性格>に類似しており、所有と獲得に快楽を感じ、絶えず超自我と自我とエスとの内面的緊張に生きている。

<内面化>
外的客体のもっている意味が、個人のなかに取り入れられ、パーソナリティの構成要素として確立されること。

<日本的経営>
労使関係における年功序列賃金と終身制雇用と企業別組合、充実した企業内福利厚生、経営意志決定における稟議制度、政府と企業との密接な関係、そしてその集団的思考・行動様式など。経済の急成長と高い生産性を、経営行動様式の独自性から探ろうとしてこの概念が浮上した。

<認識論的切断>アルチュセール
あるパラダイムが他のものに取って代わられること。クーンの<パラダイム革新>と同様。

<ノマドロジー>ドゥルーズ、ガタリ
ヒエラルキー的国家の内部性に対して移動的部族の外部性を、定着・安定的な「定理的モデル」に対して生成・力動的な「問題的モデル」を強調する遊牧論。