『仏検3・4級必須単語集』 久松健一 (白水社、2001年12月)
センテンスでフランス語の単語を効率的に覚えられるCD付き単語集!!
この本について一言で説明するなら「フランス語版の『DUO』」です。
短い文でコンテクストや使用に関連づけて、ナレーションを聞きながら、効率的に複数の単語を覚えていくことができます。
CDのナレーションは「センテンスをナチュラルスピードで」→「日本語訳」→「センテンスをゆっくり」という構成で収録されています。『DUO 基礎編』のCDのような単語ひとつひとつのナレーションが収録されていません。
「センテンスをナチュラルスピードで」のところでは、一緒に文を音読するか文とその訳を読むようにして、「日本語訳」のところでは下に載ってある単語の意味を速読して、「センテンスをゆっくり」の部分で一緒に文を発音する、というのが僕の勉強法です。
これを毎日20分やりましょう。文の発音やリーディングの練習にもなります。
仏検3~4級対応なので全くの初学者には少し難しい内容です。他の単語集を勉強してからこの本を使いましょう。過去形や単純未来、受動態、比較級・最上級、関係代名詞などもでてくるので、ある程度の文法の知識は必要です。仏検3~4級の合格を目指している方、基本的な単語400語ほどを習得して文法の基礎知識があってボキャブラリーを増やしたい方には必須の単語集です。
それでは。
Au plaisir de vous revoir.
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『イギリス英語リスニングCD』大杉正明 アルク
イギリス英語リスニングCD 大杉正明 (アルク、2006)
イギリス英語の最初の一枚、一冊に!!
発音やアクセントから丁寧に解説したブリティッシュ・イングリッシュ入門CD。
ブリティッシュ・イングリッシュの解説書・参考書は、ブリティッシュ・イングリッシュの解説というよりは、実質イギリスの文化の解説だったり、発音についての解説はわずかでボキャブラリーや文法的特徴の解説が中心だったりするものが多いのですが、その本とCDのセットでは、丁寧にブリッティッシュ・イングリッシュの発音を単語単位でイントネーションをセンテンス単位で解説してくれます。
この解説書は本(というよりは冊子)ではなくCDが中心の解説書です。NHKのラジオやテレビの講座を担当されたことがあり、イギリス滞在経験のある著者が、ラジオ番組風にラフな語り口で解説を入れていきます。
すべての編で、アメリカン・イングリッシュ→ブリティッシュ・イングリッシュの順でナレーションが流れるので、比較して聞くことができます。ただ、そのためにブリティッシュ・イングリッシュの量が少ないのが残念ではあります。
「ツボ編」は、単語単位でブリティッシュ・イングリッシュの発音を解説していきます。Rの発音がこもらない点や破裂音になるtの発音がアメリカン・イングリッシュの発音と比較しながら明確に理解することができます。
「実践編Part 1」では、センテンスを取り上げて、発音の特徴をさらに詳細に、ブリティッシュ・イングリッシュの全体的な歯切れの良さやWould you~などの勧誘・依頼の表現では文末が上がるアクセントにならない、といったセンテンス単位でのイントネーションの特徴を解説します。
「実践編Part 2」では、ダイアログや天気予報を取り上げて、文章単位で、発音やアクセント、イントネーションの解説を行います。
巻末には、アメリカン・イングリッシュとブリティッシュ・イングリッシュのボキャブラリーの違いを取り上げます。アメリカン・イングリッシュのボキャブラリーの音声も流れます。
編の合間には、ブリティッシュ・イングリッシュについてのコラムや童謡の朗読も収録されています。CDで音声も流れます。
CDの音声中心でつくられている教材だからだと思うのですが、冊子は65ページしかなく全体の情報量は少ないです。しかし、CDを聞くだけで勉強ができるというメリットがあります。
日本で出版されているブリティッシュ・イングリッシュの教材で、ここまで丁寧に発音やイントネーションに解説しているものはないと思います。ブリティッシュ・イングリッシュのはじめの一歩としてベストな解説書だと思います。
イギリス英語リスニングCD[CD]―CDだけで学習できる!
「クラブ・カルチャーにおけるメディアのあり方」
クラブ・ミュージックとクラブで行われるパーティーの情報は、テレビでは全く入手できないし、現在ではFMラジオでも情報が流れることはない。クラブ・シーンにおいてパーティーの主な情報源となっているメディアは、フライヤー、クラブ・ミュージック専門の雑誌、インターネットである。そういったメディアを用いた情報発信の方法と戦略が、クラブ・カルチャーの特徴を規定している。
クラブ・カルチャーの独特の情報発信のメディアであり、それがひとつの文化ともなっているのがフライヤーである。フライヤーというのは、パーティーの情報を伝えるための小さなチラシのことである。(図1)フライヤーは、クラブやその周辺のクラブ・ミュージック専門のレコード店、洋服のショップ、カフェ等に置かれている。(図2・3)ほとんどのパーティーでは、当該のパーティーのフライヤーの提示によって500円ほどのディスカウントを受けることができる。
フライヤーはパーティーの情報を伝えるための最も重要な広告の方法であるため、厚手の上質の紙を用い、グラフィック・デザインや形状に趣向を凝らした物も多い。その一方で、フライヤーに掲載される情報は、開催されるクラブと、パーティーの日時、エントランス・フィー、出演するDJのラインナップやメインのゲストDJの簡単なプロフィール、パーティーのコンセプトだけである。音楽ジャンルが明確に記載されていないことが多く、パーティーでのマナーや注意事項は全く記載されていない。フライヤーの情報を読みとるにはある程度の予備知識や慣れが必要であり、フライヤーには初心者に対しての詳細で親切な情報が記述されているわけではない。フライヤーは主にパーティーやクラブへのリピーターの獲得を目的に配られていると考えられる。
そのフライヤーが最もクラバーたちの手に渡るのは、パーティーの帰りにフライヤーを入手する時だろう。クラブには、その時から1ヶ月から2ヶ月先に開催が予定されているパーティーのフライヤーがエントランス付近やバーの周辺の専用のコーナーに置かれている。あるクラブのパーティーのフライヤーが他のクラブに置かれる場合は周辺の同じ地区のクラブには置かれずに、競合しない他の地区のクラブ関係者やオーガナイザー(パーティーの主催者)がコネクションのあるクラブに置かれる。パーティーの帰りには、出口でクラブのスタッフが2ヶ月先ほどの開催が予定されているパーティーのフライヤー10枚から20枚ほどとマンスリー・スケジュールをビニール袋に入れたものを配っている。また、パーティーから帰るクラバーに情報を告知することを目当てにその日のパーティーとはコネクションの無い別の同一ジャンルのパーティーの関係者が路上でフライヤーを配っているということもある。
フライヤーに準ずる物に、そのクラブのパーティーの月刊の情報を記述したクラブが発行するマンスリー・スケジュールというものがある。マンスリー・スケジュールには、その月に開催されるパーティーの情報がジャンルを問わずに日付順で掲載されている。マンスリー・スケジュールと同等のものとして大きなクラブでは、ミニコミ紙のような小さな情報誌を発行している。
また、規模の大きなパーティーでは、フライヤーと同一デザインのポスターが制作され、クラブやレコード店に掲示されている。
フライヤーとは別にパーティーの情報を知ることができるメディアが『remix』や『GROOVE』などのクラブ・ミュージック専門の雑誌である。それは、インターネットが普及する以前では、クラブやレコード店に直接、赴かずにパーティー情報を入手する唯一の手段だった。クラブ雑誌の「パーティー・インフォメーション」のコーナーには東京や大阪といった地域ごとに、日付順に、パーティーの名称と開催されるクラブ、出演するDJという最低限のパーティー情報のみがジャンル分けされず一覧となって掲載されている。以前は、3ページにびっしりと情報が掲載されていたが、現在は実質1ページほどのスペースに、東京の規模の大きなパーティーの情報が掲載されているだけである。(図4)インターネットの普及により現在では雑誌のパーティー情報はあまり活用されていないというのが実情である。
現在、パーティーの情報の発信源として最も重要になっているのがインターネットである。現在、都内の主要なクラブはホームページを必ず制作している。ホームページはフライヤーと同等かそれ以上に重要な情報源であるので、かなりの制作費をかけてフラッシュなどのテクノロジーを用いたウェブデザインにこだわったものが制作されている。(図5)ホームページには、一ヶ月から二ヶ月先までのパーティーのスケジュール、そのクラブのマップやコンセプト、ヒストリー、これまで出演したDJやアーティストのデータベース、DJやアーティストのインタヴュー等の情報が掲載されている。スケジュールには、個々のパーティーのフライヤーと同等の情報やフライヤーのグラフィックス、DJやアーティストの写真が掲載されていて、そのページのプリントアウトにより、フライヤーと同等の割引が受けられることがある。
また、DJやアーティストの運営する個人ホームページでも、そのDJのスケジュールを入手することができ、レコード・レーベルのホームページでも所属アーティストのDJのスケジュールやそのレーベルが開催するパーティーの情報を知ることができる。
大きなクラブやレーベルはメールマガジンを発行していて、それらによって受動的・自動的にパーティーの情報を知ることもできる。メールマガジンもHTMLメールで制作された凝ったデザインのものが多い。
クラブ・シーンはこういったメディアを使用し、パーティーの情報発信をすることでシーンが維持されている。フライヤーは広範囲での波及効果はないが、ローカルな範囲でクラブへのリピーター、それにレコード店に通うクラブ・ミュージックのリスナー、クラブの周辺のカフェや洋服のショップなどに集まるクラブへの来店の可能性のある若者に効果的に情報を伝える。インターネットは、郊外や遠隔地に住むクラバーが、クラブの周辺の街に来なくても雑誌を買わなくても、容易にパーティーの情報にアクセスできる、ということを可能にした。
そして、またインターネットによる情報発信は、「東京とその周辺地域」というローカルなシーンを形成させるだけではなく、国境を越えたグローバルなシーンの形成につながる。湯山玲子は、こうしたクラブ・シーンのグローバルなあり方について以下のように述べている。「八十年代後半以降、インターネットと格安航空券によって推進された、移動とネットワークの大変化、グローバリゼーションの欲求は、クラブカルチャーの推進力となった。DJバック一つを手に、世界中のクラブを行き来するDJたちのライフスタイルは、「世界を舞台に活動したい」という若者に偏在する夢の実現であり、クラブミュージックで踊ることは、そのまま世界のユースカルチャーとダイレクトに繋がっている証となる。」[湯山、2005:13]「たとえば私のパソコンのメールボックスには、ロンドン、シェフィールド、バーミンガム、ノッティンガム、香港、ニューヨーク、北京、韓国、シンガポール、ニューヨーク、アムステルダムまどから、クラブのインフォメーションやCDリリースの案内が定期的に届く。その中にお目当てのパーティが見つかり、インターネットで出物の航空券があって、なおかつ時間の都合がつけば、一週間後の週末に、私がニューヨークのクラブで踊っている可能性は充分にあるということである。」[同:13-14]ロックのコンサートでも、格安チケットが見つかれればそこに参加できるかもしれないが、コンサートの場合はチケットの事前予約とそれに伴う旅行の計画が必要である。一方で、クラブのパーティーはイベントの当日そこに赴いて、エントランス・フィーを払えば入場できる。クラブ・シーンでは、情報はホームページとメールによって、フレキシブルにグローバルに発信されている。湯山の言うように、東京に住んでいるなら、福岡や北海道のクラブ・シーンよりも香港やニューヨークのクラブ・シーンの方が情報の入手が容易で心理的な距離も近いということがクラブ・カルチャーではあり得る。
上野俊哉は、様々な表現文化のジャンルによって形成される若者の集団を「トライブ」として以下のように論じている。
「ある種の若者文化、サブカルチャー、都市の文化のなかに様々なかたちで存在する趣味やスタイル、身ぶりはそれぞれ小さな集団性、共同性を形成し、互いに影響しあったり、また文化的に、時には物理的に争ったりしている。このような感覚の共同性と、場合によってはある種の敵対関係によって成り立つ集団を、ちょうどアルカイックな社会において儀礼や信仰を共有する集団のカテゴリーになぞらえて、「部族」という言葉で呼ぼうということである。」[上野、2005:16]
「ファッション、音楽、スポーツなどによって形成されるこの新しいとライブははかなく、うつろいやすく、エピソード的かつ瞬間的で、一次的な意味の生成や重なりによってできた集団でしかない」[同:17]
クラバーは音楽ジャンルに対して強いこだわりを持つが、特にテクノやハウスといった「スタイル・カルチャー」ではないジャンルでは、トライブの形成はパーティーという空間だけでの一時的なものであり、瞬間的でうつろいやすい。フライヤーとインターネットこそが、クラブ・ミュージックのあるジャンルに嗜好を持つ能動的なクラバーに情報を発信し、トライブを効果的にパーティーに集合させ、シーンを維持するための最も有効なツールである。
フライヤーの情報掲載の内容やインターネットというメディアのオン・デマンド性の特徴に見られるように、クラブ・シーンの情報発信のあり方は、予備知識の無い者やシーンの外部の者に対して排他的だが、情報を能動的に求めるなら誰にでもアクセス可能だという特徴を持つ。そのアクセル可能性はグローバルな次元に開かれている。クラブという現実の空間に、グローバルな拡がリを見せるトライブが、集ってくる。ローカルな実際の活動とグローバルな情報発信がクラブという結節点で結びつく。クラブ・シーンは、その情報発信のあり方によって、「ナショナル」という単位で編成されるのではなく、グローバルなものとローカルなものが接続され形成されているという特徴を持っている。
□参考文献
『アーバン・トライバル・スタディーズ』上野俊哉(月曜社、2005)
『クラブカルチャー!』湯山玲子(毎日新聞社、2005)