社会学用語集パート3 さ行

<再生産>ブルデュー行為、社会関係、地位、階級・階層関係などが先行条件に規定されつつ同型的に形成される過程。類似の社会的地位が親から子へと伝達される世代的再生産、社会構造の全体的趨勢がある時間の経過を通して近似性を示す構造的再生産を区別できる。
<最適社会>個人的エゴの存在を認めたうえで、これを最も合理的な方法で調整するシステムをもつ、理念的に構想されたユートピア社会。
<サイバネティック・ハイアラーキー>パーソンズ多くの情報と少ないエネルギーをもつシステムは、エネルギーは多いが情報の少ないシステムのなかで起こるものを制御できるという考え。L→I→G→A
<サブカルチャー>ある文化の内部に形成された文化。上位の文化を共有し、同時に独自性をもつ。サブカルチャーは上位文化の部分文化であるが、その関係は協調的な場合もあれば対抗的である場合もあり、後者の場合を<カウンター・カルチャー>という。
<サクセッション>遷移、継承、代置と訳される侵入の過程が完全に終了した段階。居住者や施設が完全に入れ替わった場合など。
<サバービア>大都市周辺の郊外型コミュニティーの総称。サバーバニズムを表徴する。
<サピア=ウォーフ仮説>言語相対主義の仮説。個人の世界認識や思想様式は、属している共同体のもつ言語によって大きく影響されることが主張される。様々な言語によって把握される「現実」は必ずしも同一ではないことが主張され、現実の相対性が説かれる。
<残基>パレート人は言語・論理能力をもつため、行為を合理化する言説・主張(派生体)と、行為の底に半恒久的な動因(残基)を区別すべきだとする。社会的均衡系の考察に当たって残基がより強い力とされ、ほぼ感情や本能に近いものと考えられる。
<産業革命>マニュファクチャー時代から機械制工業の時代へと機構を完成させ、資本主義的生産をその技術的基盤においてまで完成させた、経済上の生産上の変革。1770年代から1830年代のイギリスにおいて典型的に見られた。オートメーションによる技術革命を第二次産業革命、コンピュータによる情報革命を第三次産業革命と規定する場合もある。
<産業社会>社会構造が総体的に機械技術システムによって編成され、規定されている社会。大量生産、大量消費、マスコミ、発達した交通・通信・情報システムを特徴とする。ホワイトカラー労働者増加し、管理化・情報化の傾向が強まり、階級構成も多様化と同時に平準化する傾向が見られる。
<産業社会論>工業化の進展とそれに伴う経済成長による、社会構造の変化や生活や意識の変化を論じる。現代社会を批判的に捉えるのではなく、工業化の進展が階級構造や社会構造をどのように変化するかを問題にし、現代社会を肯定的に評価する。ダニエル・ベル『脱工業化社会の到来』は、社会が脱イデオロギー化した社会構造へと収斂する方向にあるとする。
<シヴィリアン・コントロール>軍事に関する最高決定権が文民の政治的統制のもとにあること。
<ジェンダー>社会的・文化的に形成される男らしさ、女らしさジェンダー概念を重視することにより、政治・経済・教育・文化・家族など、社会生活のあらゆる面で女性が男性とは異なる位置を占め、異なる役割を与えられていることの意味が問われることになった。ジェンダー概念は、歴史的に主に女性に割り当てられ、社会的には低い地位しか与えられてこなかった。
<ジェンダー・アイデンティティー>自分が男であるか女であるか、男らしいか女らしいかについての自己規定。社会化の過程を通じて形成される自己認識であり、社会的に規定されるジェンダー役割と関連した意識であることが重視される。
<自我>フロイト、ミードフロイトは、自我はパーソナリティを構成する3つの心的機能(エス・自我・超自我)のうちの一つで、本能や衝動を表すイドから発して外界の影響によって分化し、理性や分別の役割を演ずるものとした。ミードは、社会的相互作用のなかに自我を位置づけ、自我は他者の態度や期待を取得することで社会的に形成され、Iとmeの二面をもつとした。
<視覚的人間>バラージュ映画の発明と発達は、人の体験様式を変え、映画の基本原理を理解しカメラの眼で見ることのできる能力をもつ視覚的人間の誕生を促し、印刷以前の時代の視覚的人間の時代を生み出した。
<自己言及性>ルーマン文が自分自身を言及対象とすること。自己言及的な言明はパラドックスを含み、真と偽の反転の果てしない循環に巻き込まれるが、70年代半ば頃から創造的なものとして見直される。ルーマンのシステム論へのオートポイエーシス・モデルの導入や、自己組織化論、「社会学の社会学」に見られる。
<自己実現>ロジャース、マズロー自己の能力や可能性を十分に生かし実現化していくこと。
<自己成就的予言>マートン社会的行為の状況に対する虚像の規定あるいは信念、思い込み、決めつけが、それにもとづいて行われた行為を通じて現実のものと化してしまう。その場合の初期の信念、思い込み、決めつけ。
<自己本位的自殺>デュルケーム社会の統合が弱まって過度に個人化が進み、個人が孤立化するときに生じやすい自殺の類型。
<自然的態度>シェッツ『社会的世界の意味構成』時間・空間的現実が眼前に与えられているとおりに存在していると素朴に確信し、世界が存在していると暗黙のうちに確信している非反省的態度。
<持続可能な開発>開発行為と環境保全の両立可能性を追求する政策概念。再生可能な資源の消費はその資源が再生される範囲で行う。再生不可能な資源(化石燃料)の消費は更新可能な資源(太陽熱)への代替ができる範囲内で行う。廃熱・廃物の放出は水サイクルと再生利用が可能な範囲で行う。
<時代診断学>マンハイム社会学は現代社会の構造の全面的な総合分析を行い、一般法則と個別的事態とを結ぶ媒介の原理を探索し、そこから具体的な処方箋を提出すべきだとする。
<実質合理性>ヴェーバー形式合理性の対概念。貨幣などによって計算可能な行為は形式合理性をもつが、行為の成果が、ある価値尺度(倫理性・功利性・社会主義的・平等主義的要請など)に照らして、「価値がある」「目的にかなう」と判断される場合。
<私的領域と公的領域>正負や地方自治体が公権力にもとづいて行う活動が公共領域、私人として個人や民間企業が行う活動が私的領域。近代社会が誕生し、個人の尊厳が重視されルとともに、社会のなかの私的領域と公的領域の関係が社会科学の課題となった。フェミニズムは、家事労働が私的領域に閉じ込められたことを告発。
<シニシズム>既存の価値や規範の体系に懐疑的・嘲笑的な態度をとり、私的世界に閉じこもる傾向。
<支配的イデオロギー>ブルデュー正当性の表象を通して、ある意味体系を多数の社会成員に受け入れさせることを可能にするイデオロギー。ブルデューは、教育におけて、ある意味体系を「真理性」「普遍妥当性」の表象とともに正統として課する作用にその機能のあり方を見ている。
<資本主義>生産手段を所有する資本家は、自由な市場メカニズムのもとで商品としての労働力を購入し、これを生産手段と結合することによって、機械制大工業の形態をとった商品生産を行い、もっぱら余剰価値の創出をめざす社会的生産の仕組みまたは経済体制をいう。余剰価値の創出による資本の自己増殖過程は、生産の社会的性格と所有の私的性格、市場における無政府的競争と私的資本の専制下にある経営内分業の計画的編成などの矛盾を内包している。
<資本主義の精神>ヴェーバー近代的・合理的資本主義の経済倫理は、禁欲的にひたすら利潤を追求する行為が人の義務、倫理的な善であるとみなし、営利のための生活の合理化を人々に要請する。これは、欲求充足のためではなく、価値実現のために働く。
<シミュラークル>ボードリヤール本物−偽者、オリジナル−コピー、実在−表象、指示対象−記号の区別が消え、コピーやイメージや記号はオリジナルや実在から解放され、前者の項の交換・組み合わせのシミュレーションが展開した現代の記号世界。
<市民>中世の西欧における都市共同体の、これに自律的・自主的に参与できる身分特権をもった人々。ヴェーバーによれば、都市共同体は自身の法や裁判所、一定の自治的政府をもっていた。
<市民的公共性>ハーバマス市民社会の生成とともに台頭し、「公衆」として成立した市民がつくり出す理想的な社会関係。近代初期の都市のサロンやクラブで生み出された公共性が、資本主義の発展により変質したことを批判し、生活世界と融合した市民的公共性の復権をめざしている。
<社会学的想像力>ミルズ私的な問題と公的な問題、個人的な生活と社会的・歴史的構造的とを関連づける能力。誇大理論と経験主義を批判的に乗り越えていくため、古典的社会学からこの能力を受け継ぐことを主張。
<社会化の形式>ジンメル社会を成り立たせる<心的相互作用>は、宗教的関心や経済的目的といった動機づけと、これを現実化する相互作用の様式<社会化の形式>から成る。この形式と内容を区別し、これが社会学の研究対象だとした。
<社会技術>マンハイム『変革期における人間と社会』社会関係の形成を目標とする社会学的実践。社会技術による計画化社会は自由を擁護するとした。組織・宣伝・社会統制の技術を指していたが、今日では組織化の技術、広く社会設計の技術をいう。
<社会計画>広義には、経済・社会・文化の諸政策を統合し、各政策の志向すべき将来社会の全体像を示す包括的計画。狭義には、計画経済と並列する、生活の福祉向上にそった社会側面の計画。マンハイムが、ナチスでも共産主義でもない<第三の道>としての「自由のための計画」というかたちで問題にした。
<社会資本>ハーシュマン、宮本憲一
<社会診断>マンハイム『現代の診断』医学の診断の概念を社会問題・社会病理現象の分析のために借用。(時代診断学)
<社会的学習>人の学習が、一定の社会状況のなかで、他者との社会関係を通して生起することを強調する概念。他者の行動の模倣、パーソナリティ発達、社会化と密接な関連をもつ。
<社会的自我>欲求の主体としての自我は、社会化されることによって、社会規範を良心あるいは理想として内面化し、その監視のもとに個人的自我を社会的に方向づけて行動する。
<社会的促進>オールポート他人と一緒に仕事をしたり、他人の目の前で作業をしたりすることで、一人の場合よりも作業量が増加すること。外面的な反応(書いたり作ったりすること)では社会的促進が見られるが、内面的な反応(考えたり感じたりすること)では、社会的抑圧が見られ、能率が低下する。
<社会的知覚>知覚対象の物理的性格だけでなく、知覚する側の人の社会的特性や、その場の社会的・集団的条件などの影響を受けて成立する知覚。同じものを見ても、見る人の社会的地位、経済的状態、対象に対する既存の態度、一緒にいる人の特性によって知覚は異なる。
<社会的ディレンマ>複数の行為主体が自己の利益を求めて行動すると、各行為主体に望ましくない集積結果が生じるメカニズム。環境問題をはじめ現代社会における重要な諸問題に底在していて、社会問題の解決のキー概念であるとともに、秩序問題をはじめとするミクロ=マクロ問題を考察する手段として注目されている。
<社会的動物>アリストテレス『政治学』社会的=ポリス的存在として人を規定。
<社会的費用>私的企業の経済活動の結果、水や大気の汚染など第三者あるいは一般大衆が受ける直接・間接の損失。外部不経済として、従来それは社会に転化されたが、PPP(汚染原因者負担の原則)により、私的生産者が責任をもつようになってきている。
<社会的分業>デュルケームは分業が能率や経済効率を増進させるという側面よりも、道徳的連帯を生み出す事実に注目し、体系的に明らかにした。この発達が社会に機械的連帯から有機的連帯への変化を伴わせるとした。マルクスやレーニンは、労働の社会的分業、社会的総労働の分配として社会的分業を論じる。
<社会発展段階説>原子共同体-奴隷制-封建制-資本主義-社会主義(マルクス)神学(軍事)-形而上学(法律)-実証主義(産業)(コント)軍事型-産業型(スペンサー)機械的連帯-有機的連帯(デュルケーム)ゲマンシャフト-ゲゼルシャフト(テンニース)伝統主義-合理主義(ヴェーバー)プレモダン-モダン-ポストモダン(ポストモダン論)
<シャドウ・ワーク>イリイチ市場経済が機能するために必要とされるが、その背後や外部にあって、フォーマルな経済市場に登場しない労働。対価を支払われず、市場経済を下支えする。家事、通勤、試験勉強など。
<習慣の束>デューイ、ジェームス人の行動は習慣によるものであって、本能や理性によるものでないとして、人格を統一体として把握。パーソナリティの文化的条件づけを強調。
<従業員社会>ドラッカー社会成員が、雇用従業者として、それぞれの属する企業組織における地位にもとづいて成立させている社会。
<集合意識>デュルケーム個人意識に対して外在的でかつ個人意識を拘束するところの、成員に共通な信念と感情の総体。
<自由主義>個人の自由を要求、またはそれを前提とする思想。近代社会の形成過程で信仰の自由、経済的自由、政治的自由が要求され、自由自明性の諸主張がそれに加わる。
<修正拡大家族>リトウォクひとつながりの核家族が対等に結びついて、互いに重要な継続的援助を行う。職業的・地位的移動が一般的な近代産業社会においては孤立的核家族が機能的だとするパーソンズへの批判として提起。
<修正資本主義>資本主義の体制的矛盾を部分的修正によって克服し、体制の存続を図ろうとする思想・理論あるいは制度。政治の経済への大幅な関与と、経済と社会の計画化が中心。具体的には、ピグーやケインズの経済学、バーナムの経営者革命、人民資本主義、混合経済論など。
<集団本位的自殺>デュルケーム集団規範への服従または集合的価値への強い一体感の結果として生じる自殺の型。
<自由のための計画>マンハイム自由放任から計画化の社会への移行のなかで、独裁性と画一化を避け、民主的に統制された政府によって進められる計画として提起。個人の選択と自由の余地をもちながら、同時に大衆社会のもつ危険を防止するために社会統制の整合化と民主化を図り、社会の漸進的な変革をめざす計画をいう。
<重要な他者>社会化の過程で、大きな影響をもつ人物。諸個人は重要な他者の体現する役割・態度と同一化するなかで制度的規範を学習する。具体的・特殊化された文脈のもとで個人と文化を媒介する。
<宿命的自殺>デュルケーム欲求に過度の抑圧が加えられ、充足が厳しく阻まれる結果、強い閉塞感から人々の図る自殺。アノミー的自殺の亜種。
<準拠集団>マートン、ターナー、シプタニ人が自分自身を関連づけることによって、自己の態度や判断の形成と変容に影響を受ける集団。過去に所属した集団、将来所属したい集団、非所属集団も準拠集団になることがある。マートンによって体系的に理論化。シプタニ、ターナーは、非所属集団の準拠集団化という事実にもとづいて、人々の主体的準拠集団選択、集団規範の主体的内面化のメカニズムを明らかにした。
<昇華>フロイト性的欲求や攻撃欲求などの充足が阻止された時、芸術・宗教など社会的・適応的な活動によって欲求を充たす健康的な防御機制。
<使用価値>商品は使用価値と交換価値の統一されたものであり、使用価値そのものとは、人の欲望を充足させる、モノのもっている属性・有用性。人の作り出す労働生産物は、まず使用価値からなる対照的活動の生産力表現である。資本主義下にあっては、労働生産物の歴史貫通的な性格としての使用価値は、特殊な歴史的・社会的な性格をもつ交換価値ともなっている。
<象徴交換>ボードリヤール両義的で不等価的な象徴による交換。モースの贈与論やバタイユの供犠論に示唆され、無目的的で集団的な消尽・犠牲・破壊を含む交換、とくに生と死の象徴交換を提示。
<象徴体系>あいさつ・しきたりから聖像・国歌・国旗まで、これらはすべて象徴としての個別的な意味作用をするが、それらの意味の連関が体系化されたもの。
<象徴的資本>ブルデュー文化資本と同義だが、物的資本と区別するために使われる。態度・物腰、話し方、ものの見方などのハビトゥスに関連して使われる。
<象徴的暴力>ブルデュー、パスロン教育の関係は教師=生徒、親=子などの上下関係に支えられながら、「真理」を教授するといった象徴的に正統化されたかたちをとり、この力関係を覆い隠すことで成り立っている。
<消費社会>ボードリヤール現代高度産業社会は、生産よりも消費、モノの機能性よりもコード化された差異が優位となっている。消費は、消費者個人の自律的で自発的な享受というモノの「効用」のレヴェルから、差異化されたモノ=記号のシステムへの個々の消費行動の強制的な組込みという「意味作用」のレヴェルへ転位している。
<消費者行動>財とサーヴィスを購入し、それを消費ないしは使用することに関連した人の行動。人はそれによって独自の生活を設計し、実行する。消費者の購買力が増大し、基礎的欲求充足を超えた個人的好みや創造性を反映できるようになると、個人的選好による消費行動=ライフスタイルが広がる。
<消費文化>消費を通じて顕在化するライフスタイルが人々の社会的な違いを識別する主要な基準となる社会的生活様式。マス・メディアの提供する情報が、たえず新しい生活イメージを形成し、人々がそれを適応すべき環境だと捉え続けることによって、消費文化は変化し続ける。
<商品の物神性>マルクス宗教世界において神が人を支配するように、商品は一度作り出されると、独立した存在のように見えてくる。商品という形態は、人の労働がもつ社会的性格、生産者たちの社会的関係をモノ・対象として人々の目に映し出す。人の生産関係に他ならない商品と商品の価値関係が、単なるモノ同士の関係という幻視的な姿で現れてくる。
<情報>事柄の可能性に関して選択的指定をもたらす「知らせ」のこと。この「知らせ」が情報になりうるかは、その「事柄」から決められる。そして、「記号=意味」化された情報、記号や意味として捉えられなければいけないが、情報科学では情報をもっと広く、自然界に遍在する「物質・エネルギーの時間的・空間的パターン」としている。
<職業的社会化>職業についての志向・行動様式・価値・規範を内面化する学習過程。社会にとっては職業の機能維持の面から、個人にとっては自己実現の面からそれぞれ重要である。
<心的相互作用>ジンメル社会は相互作用によって成立し、その相互作用の示す様式を<社会化の形式>とした。これを経済・宗教・文化などの<社会化の内容>と区別し研究することによって、特殊専門科学としての社会学が樹立される。
<信念倫理>ヴェーバー価値合理的行為の基底にある倫理。結果の成否よりも倫理的行為そのものに価値をおく、行為者の信念の純粋さを重んじる信念本位の倫理。
<シンボル行動>人は世界に直接に働きかけているのではなく、言語や記号などのシンボルを通して把握された世界の像に対して働きかけている。
<シンボル操作>シンボルを特定の意味文脈に位置づける営み。その営みによって人々の意見・態度・行動をコントロールしようとする意図的行為であり、情報の操作・コミュニケーションの操作と同義。旗、ユニフォームなどの物的象徴、行進・デモなどの動的象徴がある。
<神話思考>レヴィ=ストロース矛盾を解決するための論理的モデルの提供という本質的に認知的な機能を果たす。その論理は科学的思考と同じく厳密であり、ただそれが働きかける対象や素材において科学と異なる。
<ステレオタイプ>リップマン特定の社会集団や社会の構成員のあいだで広範に受容される固定的・画一的な観念やイメージ。一般に、観念内容が極度に単純化されている反面、強力な情緒的感情が充填されているため、その概念内容と対立する事実的根拠を冷静に受け入れることに抵抗を示しがちである。
<生活世界>フッサール、シェッツ人間生活の事実的・可能的経験世界。現象学的社会学では個人が日常において出会う人・モノ・出来事の意味のつながりの経験世界の総体。自我を座標軸・準拠点として多方向に広がる遠近さまざまの多元的な相互主義的世界(意味領域)をさす。
<生活世界の植民地化>ハーバマス私的領域におけるインフォーマルなコミュニケーションを通しての了解や合意に方向づけられていたコンフリクト調整の手続が、法や貨幣を介して調整を図る成果志向的な官僚制や裁判所のコントロールに委ねられる傾向が強まり、共同生活のコミュニティブな構造が危機にさらされている状況。
<生殖家族>夫婦家族が含む二つの世代のうち親世代から見た家族。子を生み、育てて社会化していく機能、生殖・教育機能を担っている。
<生成文法>チョムスキーある言語を適格な文(記号連鎖)の集合と考え、この集合を無限の生成元と有限な生成規則(文法)の集合から生成させようとするアイデア。
<生態系>一定の地域における動物が、気象・土壌・地形などの環境に相互に依存しながら適応している場合の、その相互依存の体系。
<成長の限界>ローマ・クラブ、メドウズ人口の爆発的増加と資源の大量消費による経済成長が続いた場合、地球の資源や環境の限界を超えて破壊的結果をもたらす。
<正当性信念>ヴェーバー政治権力の保持と支配を支え、服従の自発性を調整し、それを正当なものと認める信念。その理念型は、伝統的・カリスマ的・依法的正当性の3つがある。
<正当性の危機>オッフェ、ハーバマス後期資本主義の政治システムが直面させられている問題。国歌の介入政策の拡大はその正当性への欲求を高めるが、資本主義の発達は体制を維持していくのに不可欠な文化的要因(私生活志向、キャリア志向、業績志向など)を掘り崩し、意志決定への参加志向や市民運動大量消費社会の見直しなど、体制に即した報酬では充たすことのできない国民からの欲求に直面させられている。
<制度から友愛へ>バージェス、ロック家族結合の性格がモーレス・世論・法などによって決定される<制度家族>から、夫婦と親子間の相互の愛情と同意を基礎にして<友愛家族>へと歴史的に変化している。
<聖と俗>デュルケーム、パーソンズ聖なる事物は、畏敬の対象として、各種のタブーによって日常的な俗なる世界から注意深く隔離され保護されている。聖は、個人を超えた社会の象徴であり、社会的統合の原理である。パーソンズは、聖と俗の対比は<道徳的義務>と<功利性>の区別に帰着するとした。
<世界システム>ウォーラスティン、モデルスキウォーラスティンらのネオマルキシズムの潮流では、単一の分業で結ばれ、複数の国家を包含する世界帝国や世界経済。モデルスキらのネオリベラリズムの潮流では、国家間の関係からなる世界秩序。
<世界資本主義>ウォーラスティン地球上に広がりつくした資本主義の世界体制。第二次大戦後、従属理論が中心=周辺という世界資本主義の構造を問題にする。世界システム論は、19世紀末から20世紀はじめ以降に単一の資本主義世界経済が地球規模で成立したとしている。
<責任倫理>ヴェーバー特定の価値理念の規範性に自分の行為がかなっているという意識にのみ満足せず、つねに特定価値の実現のために、その現実的諸前提を冷徹に観察し、結果に対する責任をもって一種の倫理的命令とみなす。
<世間>身内、仲間、他人などの対人関係のカテゴリーのひとつだが、時間的にも空間的にも変動して、ウチとソトの境界に位置する。ベネディクトの<恥の文化>の基準の一つであり、行為の準拠枠である。
<世代状態>マンハイム世代として統一される可能性を含んだ人々が、ある社会に存在している状態。年代的同一性をこえた歴史的社会性をもつが、社会的統一性の点では潜在的なものである。
<説得コミュニケーション>送り手の意図する方向に受け手の意見・態度・行動を変容しようとする、言語的コミュニケーションなど。
<ゼロ=サムゲーム>n人の行為者のとる方略のすべての組み合わせにおいて、各人の利益の総和が0となるもの。
<潜在的機能>マートン特定の単位の参与者によって意図されず、認知されないが、その単位の調整ないし適応に寄与する客観的諸結果。
<先進資本主義>特徴は、組織化された官僚制度をもつ大企業複合体の発達、それに伴う管理的・専門的労働者の増大による新中間層の拡大、第三次産業の発達、国家の経済介入。
<選択的接触>受け手が既存の信念や態度に合致するコミュニケーションに接触し、合致ないしコミュニケーションを回避しようとする選択規制。
<宣伝>人々の態度や行動に影響を与え、一定の方向に操作しようとする意図的・組織的な企て。宣伝者はふつう真の宣伝意図を隠蔽し、自己に都合のよい情報や主張を一方的に提示することによって、または人々の情緒的共鳴を得やすい象徴やスローガンを巧みに操ることによって大衆を操作する。
<先有傾向>行動に先立っていだかれている人々の知識・関心・意見・態度などの総称。これに合ったコミュニケーション内容を選んで接触し、これに合わせて物事を理解するというかたちで、人々の情報処理のための準拠枠として働き、マスコミの効果に大きな影響を与える。文化、とくに身近な小集団の価値や規範に強く規定され、支持される。
<戦略的相互行為>ゴッフマンゲームのように自己と他者がそれぞれの意図とその相手の打つ「手」を予想しながら、何らかの「手」を打ちあう交換過程。
<相関主義>マンハイム知識社会学の主要概念の一つ。一定の立場からする、展望的なものとしての認識の部分性を、相互に関連づけ総合的に評価することにより、その時代に最も妥当な認識に到達可能だとする。
<相対的貧困>経済の繁栄にともない、表面的には生活水準が向上し平均化することから、貧困は消滅したように見える。しかし、インフレや増税により、実質賃金の伸びは抑えられ、社会保険料や公共料金などの負担が増し、消費意欲をかき立てられ共働きや副業を余儀なくされるなどの新しいかたちでの貧困。
<贈与>モース、レヴィ=ストロース、ポランニーモースは、贈与を贈る義務、受ける義務、返す義務をともなう交換関係のなかに位置づけ、全体的社会事実として行動の全体連関のなかで捉えた。レヴィ=ストロースは、女性の交換体系として親族構造を捉えた。ポランニーは交換関係を近代の市場的合理主義から解放し、社会の再生産という実体的で多義的な文脈において捉える経済人類学を展開。
<疎外>ヘーゲル、フォイエルバッハ、マルクス人の社会活動による産物、観念や生産物がそれ自身生命を与えられ、独自の力をもち、人を支配する疎遠な力となって現れることをいう。人の活動が、当の人には属さない、外的で強制的なものとして現れ、人間的本質は人の外に外在することになる。マルクスは、疎外を私的所有と結びつけ、疎外された労働を問題とした。労働力が商品になり、労働が主体的行為でなくなる。人の社会的・共同的能力が商品・貨幣に物象化され、人自身が貨幣や商品という経済的カテゴリーの人格化になる。
<組成社会>ギディングス生成社会の対概念。生成社会を基盤にし、類似の目的や活動のために人為的につくられる部分社会、社会集団。集団相互の差異とその成員の類似を特色とし、分化した社会的機能の一部を担当して、生成社会の内部の組成要素をなす。
<存在被拘束性>マンハイム人の意識や知識は、それ自体の内的諸法則のみでなく、外在的諸要因、人の置かれている社会的諸条件によって制約され拘束される。