『スマホ脳』アンデッシュ・ハンセン(新潮新書)
スウェーデンの気鋭の精神科医が人間の進化と適応、脳の性質、ドーパミンやセロトニンといった脳内物質、メンタルヘルスなどの観点からスマートフォン使用とその弊害を指摘しスマホ依存の本質に迫る。スマホとSNS、チャットアプリは新しいことを知ることによってドーパミンが発生するという人間の脳の適応を利用し依存を起こす巧妙な装置であり、その他の物事に対する集中(力)と我慢、学力と思考力、リアルな出来事による幸福や感動を失わせるものである。そして、常に手元からインターネットにつながるスマホの発展には決して人間の脳や身体は適応できず、それはIQを下げ、不安やうつ病を起こすものとなっている。しかし、スマホを完全に無くすことは不可能であり、使用時間と機能の制限、脳にも良い毎日の適度な運動によりスマホとうまく付き合っていくべきだ、と著者は述べる。
ドーパミンの役割はつまり、何が重要で何に集中を傾けるべきかを伝えることだが、ここで言う「重要」とはよい成績を取ることでも、元気でいることでもない。祖先を生き延びさせ、遺伝子を残させることだったのだ。スマホほど巧妙に作られたものが他にあるだろうか。ちょっとした「ドーパミン注射」を1日に300回も与えてくれるなんて。スマホは毎回あなたに「こっちに集中してよ」と頼んでいるのだ。(p.107 – 108)
『スマホが起こす「自分病」って何?』和田秀樹(新講社)
「受験の神様」として知られる精神科医の著者がスマホ依存症の原因と性質、それによる思考力の劣化と子どもの学力低下、SNSでの情報やその思考形式の問題、そして、それらがもたらすコミュニケーションと人間関係の変化とその問題を主に述べる。それはSNS的なみんなからどう見られるかということばかり考えることから生じる「「自分」対「みんな」の関係」であり、そのプレッシャーや強迫感、空気によって自分の実体や思考がなくなる「自分病」が起こるという。
日本のテレビの問題が所々で述べられるが、スマホの問題とは直接つなげて述べられてはいない。日本人はスマホ登場以前からスマホ依存症同様のテレビ依存症で「自分病」であり、日本のインターネット上の情報もほとんどテレビの話題であること、だから日本人はスマホ依存に陥りやすい、それらが大きな問題であると私は思う。
つまり、目の前の快楽よりも、それを我慢することで得られる将来の快楽を求めるという、人間の基本的なソフトプログラムが子どもの時期を通して作られていきます。(p. 67)
ところが依存症になってしまうと、そのプログラムが壊れてしまいます。目の前の快楽しか見えなくなり、それを我慢することで得られるもっと大きな快楽、安心感や充実感や幸福感がまったく見えなくってしまうのです。(同上)
『インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで』岡田尊司(文春新書)
精神科臨床医の経験と知見から、ネットとオンラインゲームを快楽を与え一方で脳機能を低下させるデジタル・ドラッグあるいは「負け組の麻薬」だとして、主にスマホとネットゲームにハマる人々の症状と要因やそれらの社会的・器質的構造を述べ、そしてその克服法を示す。
だがインターネット・ゲーム依存の影響の深刻さは、単に時間を奪われたということに留まらない。もっとベースにある能力自体がダメージを受けてしまうのだ。脳の機能自体が悪化してしまう。もっと端的に言えば、「頭が悪くなってしまう」のだ。(p.71 – 72)
『ネット依存症』樋口進(PHP新書)
ネット依存治療専門外来の臨床医としての知見からネトゲ・スマホ依存の患者の例と精神病や発達障害との関連、そして家族での対処を含めた治療法・治療例を述べる。タイトルは「ネット依存症」ですが、著者の久里浜医療センターでのインターネットゲーム依存(主にMMO RPG)の臨床と治療の経験に基づいて書かれているのでネトゲ依存の話題がほとんどです。
「コミュニケーションで失敗した実体験」→「ネットへの逃避」→「長時間の利用」→「またやってしまったという罪悪感」→「自己評価の低下」→「ネットへの逃避」という苦しい循環。ネット依存の患者さんの一部は、こうしたジレンマの中で、ますます自己否定感が強くなってしまっているのです。(p.149)
『スマホ依存から脳を守る』中山秀紀(朝日新書)
「快楽をもたらす」「飽きない・飽きにくい・続けられる」という依存症と依存物質・依存行為の一般的性質から、「正の強化」と「負の強化」によって依存症が形成される過程、ドラッグとアルコール、ゲームといった依存症とその対策の歴史を説明する。そして、筆者の臨床経験からオンラインゲーム依存症とスマホ依存症の性質や実態、その治療方法について述べる。
既存のメディアから進化したインターネットは、大量の情報を瞬時に相互に送ることができるため、時間の様相を変えてしまいました。既存メディアの欠点のほとんどを補っているといわれるほど、「双方向」しかも「個別」に「同時に」機能します。それゆえ、やりだしたらきりがない「依存的性質」を備えるメディアになりました。(p.123)
『その「もの忘れ」はスマホ認知症だった』奥村歩(青春新書インテリジェンス)
スマートフォンの使用による情報過多や脳過労、インプットばかりで思考やアウトプットをしないことによって、人の記憶力、判断力、集中力、感情コントロール力などの脳の働きを低下させ、「ワーキングメモリー」と「前頭前野の塾考機能」と「デフォルトモード・ネットワーク」のつながりが機能しなくなることで、脳内の情報と認知のシステムが壊れ、認知症や認知症の様な状態が起こることを警告し、その対処法を提案する。
なぜなら、「スマホ認知症」や「脳過労」の人は、いわば脳の老化度や疲弊度が通常よりも進んでいる状態であり、そういう人は20年後、30年後になってからアルツハイマー病などの認知症を発症する可能性が高いのです。(p.47)
『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』中野信子(幻冬舎新書)
「ドーパミン」と「脳の報酬系」の性質と機能をキーにして様々な依存症の問題、社会的報酬と幸福のあり方について考察する。脳内物質のドーパミンと報酬系の働きは人間が高度な目標やシステムを達成するためのシステムとして存在する考えられるが、人為的・社会的に作られた依存物質・依存行為・依存関係はドーパミンを発生させることで依存症を起こし、ドーパミンの発生や受容体の機能を狂わせることで脳を壊す。オンラインゲーム依存やギャンブル依存といったプロセス依存にも同様の問題がある。その一方で、ドーパミンの放出は人間の幸福感と生きがいの正体であり、つつましい幸福を感じるマインドセットや利他的行為によって報酬系が働き人は誰でも幸福を得られる可能性がある。
その共通点とは、これらの依存対象に接している時、人の脳の中にはドーパミンが分泌されているということです。初めて依存対象に接したとき、「意識する脳」である前頭連合野がそれを好きかどうか判断します。
それが好きなものだと、第1章で述べたA10神経からドーパミンが放出され、脳は快感を覚えます。さらにこの結果は情報として海馬に記憶されます。
このようなことが起こる物質や行為は、すべて依存症になる可能性があります。(p.45)
『スマホゲーム依存症』樋口進(内外出版社)
『心と体を蝕む「ネット依存」から子どもたちをどう守るのか』樋口進(ミネルヴァ書房)
『インターネットポルノ中毒 やめられない脳と中毒の科学』ゲーリー・ウィルソン(DU BOOKS)
『スマホで馬鹿になる』和田秀樹(時事通信社)
『親子で読む ケータイ依存脱出法』磯村毅(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
『スマホが学力を破壊する』川島隆太(集英社新書)
『最新研究が明らかにした衝撃の事実 スマホが脳を「破壊」する』川島隆太(集英社新書)
『スマホ廃人』石川結貴(文春新書)
ジャーナリストとしての取材に基づいて主に青少年のスマホ依存とその対処法について述べる。
『ネトゲ廃人』芦崎治(リーダーズノート)
ネトゲ廃人たちに直接取材し、その実態を初めて書籍化し、当時、話題になった「名著」。
『僕の見たネトゲ廃神』西村本気(リーダーズノート)
『ネトゲ廃女』石川結貴(リーダーズノート)
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