あらすじとレビュー「アフターダーク」村上春樹(講談社、2004)

あらすじ

秋の深夜、渋谷のデニーズで、19歳のボーイッシュでウブな外国語大学の学生、浅井マリが分厚い本を読んでいた。姉の元同級生・高橋哲也が彼女を見つけ、テーブルを共にした。そして、ラブホテル「アルファヴィル」の支配人であるカオルから、何者かに暴行を受けて所持品を奪われた中国人売春婦の少女・ドンリを助けるために、中国語のできるマリは呼ばれ、ドンリの話を聞いた。

同じ頃、2ヶ月間眠っているマリの姉・浅井エリは、「顔のない男」によってテレビ画面の中の部屋に閉じ込められ、意味のない精神的な暴力を受けていた、、、

マリは、高橋、カオル、コオロギ、そしてバーテンダーという夜の人々と出会うことで成長していった。朝、マリは家に戻り、エリの部屋に向かい、、、

ブック・レビュー

『アフター・ダーク』は、村上春樹の12番目の長編小説で、真夜中の出来事を客観的な三人称視点で描いた実験的な18章の長編小説である。真夜中の出来事を客観的な三人称視点で描いており、各パートには時計の絵が添えられ、時間の経過を表現する。オリジナルの日本のハードカバー版は294ページ。しかし、この小説の実質的な内容やプロットは中編小説のようであり、壮大な物語ではない。この小説は、7時間の間に起こった非常に長い真夜中の出来事を描いているだけである。短い会話や客観的な描写がたくさんあり、この小説は、長編小説としては短く、6~7時間の出来事の物語としては非常に長いと私は感じます。

この物語は、3人の少女(マリ、エリ、ドンリ)と、マリと夜の人々、エリと顔のない男、ドンリと白川の間で、記号や隠喩的な意味を交換し、シンクする物語である。各章は基本的に浅井マリ、浅井エリ、ドンリ、白川のエピソードで分けられており、それぞれのプロットは同時に進行し、それぞれのエピソードは直接的または間接的に現実の意味または隠喩的な意味で接続されている。それは、インターネット空間における断片的なつながりや情報を意味しているのかもしれない。そして、三人称の視点はGoogle EarthやGoogle Street Viewのように状況を描写する。

マリはカーティス・フラーの『ファイブ・スポット・アフター・ダーク』を知っていて、一番好きな映画はジャン=リュック・ゴダールの『アルファヴィル』で、ボストン・レッドソックスのキャップをかぶっていた(キャップは友人からもらっただけで、マリは野球には興味がない)。これらのことは、グローバルな文化やインターネットの中での知識のランダム性を意味する。そして、マリが中国人の少女ドンリと出会うこと、白川の逃亡は、グローバル化とインターネットの時代のランダムな出会いや出来事を意味している。

高橋の「つまり、君のお姉さんはどこだかわからないんけど、べつの『アルファヴィル』みたいなところにいて、誰かから意味のない暴力を受けている。」という言葉と、真理の「それは比喩的な意味で?」という答え。(p.192)白川が考察した「論理と作用の相関関係」(p.153)。これらは、この小説の最も重要なテーマを示唆している。世の中には、良くも悪くも、ネットワークやインターネットのような、物理的な意味でも比喩的な意味でも、意図的なあるいは偶然的なつながりがある。そうして、現代の世界は動き、変化している。

この小説で村上さんは、ネットワークやグローバリゼーションの時代、00年代のインターネットや携帯電話の時代の状況、状態、雰囲気とコミュニケーションを見事に描いている。インターネットや携帯電話で人々がつながり、ネットワークのポイントとしてファミリーレストランやコンビニエンスストア、ファストフード店、スターバックスカフェなどのサープレイスで出会う時代。サードプレイスは、グローバルからローカルまで、モノと人をつなぐ。

また、この小説は、マリの7時間の体験の物語でもある。マリは、大人の夜の人々と出会い、語り合い、優しさを交わし、成長していきます。そして、その深く美しい体験は、登場人物や読者に良い影響を与え、読者に良い感情を与えます。

この物語は美しく印象的で、私にとっては大切なものだが、名作でも大きな物語でもない。この小説は、村上春樹の優れた佳作の一つだと私は思う。

商品詳細

アフターダーク
村上春樹
講談社文庫、東京、2006年9月16日
304ページ、640円
ISBN 978-4062755191

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