『イギリス英語会話 クイックレファレンス』早坂信、木村慧子、アレック・マッコーレー(第三書房、2002年9月)
フランスで発売された英会話ガイドを日本人向けに作り直したものです。場面に応じて沢山の例文が取り上げられます。レファレンスの名前の通り、解説本ではなく、会話の”フレーズ集”の性格が強い本です。
全体的な構成は、基本フレーズ集である第1部「コミュニケーション行為」と、ダイアローグ集である第2部「会話」に分かれます。
第1部では、「交際」「情報を求める/情報を与える」「行為について」「態度を明らかにする/感情を表現する」「より高度なコミュニケーションのために」「ビジネスで」のチャプターに分けられ、そのチャプターの中に沢山の具体的な112のセクションがあって、そのセクションの中でいくつかのシチュエーションや表現する対象に分かれて、そこでいくつかのフレーズが紹介されます。フレーズは交換可能なものが縦線で区切られていて並列でいくつも書かれていて、多くの表現を覚えることができるのが本書の特徴です。
第2部は、「出会い」「住まい」「買い物」「サービス業」「お金」「食事」「交通手段」「余暇」「旅行」「郵便と電話」「健康」「仕事と職業」「警察」のチャプターで構成されていて、その中に3~6の具体的なシチュエーションを取り上げた50のダイアローグが収録されています。ダイアローグは、左ページに英語、右ページに日本語訳が対称に掲載されています。ひとつのダイアローグは短いもので半ページ、長いもので1.5ページほどあります。ダイアローグには「ていねいな話し方」「ふつうの話し方」「くだけた話し方」の別があって、セクションのタイトルの横に表記されています。ダイアローグに解説はありませんが、第一部のフレーズのナンバーがふられていて、解説を参照することができます。
CD一枚付属で、第2部のダイアローグのナレーションが収録されています。ブリティッシュ・イングリッシュのネイティヴ・スピーカーたちによってナレーションがされます。ナレーションはナチュラル・スピードで、tや母音の発音がキツいことろをはじめとしてブリティッシュ・イングリッシュらしいメリハリのある発音が聴けます。
もとはフランスで出版された本なので、ブリティッシュ・イングリッシュでフレーズが掲載されています。(ヨーロッパでは、ブリティッシュ・イングリッシュが教育されますし、ヨーロッパ人の話す英語はブリティッシュです。)元々、ブリティッシュ/アメリカンの差異を解説するために作られた本ではありません。ブリティッシュ/アメリカンの表現や発音の違いやイギリスの文化的な特徴は文中で注としてその都度指摘されます。どれがブリティッシュなのか明示されてないのものもあります。
「イギリスの文化の解説」のための本ではないので、ダイアローグは、フランス人のイギリス旅行やイギリスへの留学を描いた一部のもの以外は、特にイギリス文化を踏まえたものではありません。そういう意味では多く方に対応できる本です。
”ブリティッシュ・イングリッシュの解説書”ではなく、会話表現のリファレンスとして優れた本がヨーロッパで出版されたものなのでブリティッシュ・イングリッシュ対応になっている、といった感じの本です。
会話表現を沢山集めたリファレンスなので初心者向けの本ではなく、中級者以上に向けて作られた本です。”ブリティッシュ・イングリッシュの基礎”についても書かれていはいません。
ブリティッシュ・イングリッシュの基礎を理解している英語力のある方で、イギリス旅行や仕事での滞在の予定があるような方にオススメです。
大量のフレーズが収録されているのでコストパフォーマンスは高いです。
Goodbye!! Cheers!!